第21話 戦闘の準備
眼が覚めると、夕方だった。どうやら12時間近く寝ていたらしい。軽く身支度をして、一応昨日、と言っても今日だが、約束しておいた店の前に行くことにした。何でも、武器や防具をしっかりと揃えるらしい。
俺も武器の方はこれでいいが、防具はもう少し強そうなのにしておきたい。
約束の武器屋に着くと、既に3人とも揃っていた。
「遅いわね」
テュケーは着いて早々、そんなことを言ってくる。まあ、実際長く寝てしまったのは俺の責任だから何とも言えないが。
「いや。本当にすまん。ってあれ? もう装備買ったのか?」
二人の来ている服がいつもとは違っていた。イリスは首にマフラーのようなものを巻いている。
「はい。テュケーさんが奢ってくれました。これは魔力を増幅させるマフラーです」
そう言ってイリスは首に巻いているマフラーを解くと、こちらに差し出してきた。触った感覚だと、羊毛というよりはシルクの感じに近かった。
「へぇ。テュケーが買ったのか。なんで?」
「流石に幹部に挑むとなると、かなり今までの装備だと心細いからね。君のも買ってあげるわよ」
そう言うと、テュケーは俺の腕を引っ張って中へ連れて行こうとする。俺は少しためらったが、残りの二人は、消費アイテムなんかを買いに行くとかで、別の店へ行くそうなので、テュケーに奢ってもらうことにした。
「何がいる? 武器はそれで良さそうよね。だったら防具かしら」
店内は鎧からローブ、果てには着ぐるみまで様々な防具が用意されていた。値段を見ると、どれも30000チューンほどの高額商品だった。
「お、おい。本当にいいのか。こんなに高いものを」
「いいから連れてきているんでしょう」
そう言うと、テュケーは1枚の、ジャケットのようなものを見せてきた。
「これなんかどう? 魔力と防御力がかなり増加するわよ」
へぇ。そんなものもあるのか、と思いながらそのジャケットを手に取る。そして何気なく値札を見ると、100000チューンと書かれていた。……100万円!?
いやいやいや。さすがにそんな高額のものを受け取るわけにはいかない。俺はそれを元あった場所に返すと、そのついでに近くにあったバンダナを見つけた。
「これは?」
「それは素早さを上げるバンダナみたいね。それが気になるの?」
俺はそれを手に取ると、値札を見る。そこには100000チューンと、書かれていた。
「じゃあこれで」
「そんなんでいいの? まあ、カヅキがそれでいいのならいいけど」
というわけで、俺はテュケーに比較的安い、と言っても30万円ほどだが、バンダナを買ってもらい店を後にした。
イリスとプシケはまだ帰ってきていない。俺が何をしようか悩んでいると、
「ちょっとガイアのところに行かない?」
ガイア……。ガイアっていうと確かあのローブの女の子か。そういえば、この世界に来てすぐの時以来まだ会ってないな。俺は二つ返事で、テュケーの提案に了承した。帰ってきたイリスやプシケの為に、防具屋のおじちゃんに、伝言を頼んだ。既にいくらか高額な商品を買っていたからなのか、嫌な顔一つせずに引き受けてくれた。
向かう途中、少し気になったことを尋ねる。
「そういえば、プシケには何を買ってあげたんだ?見た感じ服装が変わっていなかったけど」
「彼女にはブレスレットをあげたわ。防御力が上がるやつ。腕に注目すると気づくと思うわよ」
「なるほど。あ、あと言いづらいんだけど……。それだけお金を持っていたんだったら借金をどうにか出来たんじゃ……」
テュケーは、それを聞いて少し考え込むと、静かに話した。
「95%」
「え? なにそれ」
「人にお金を譲渡するときに取られるお金よ」
ん? つまり手数料みたいなものか。それがどうしたんだ? いや、確かに95%は高いけども。
「でも、100とかだったら195チューン払えばいいってことだろ。高いけど、何とかなる気はするが」
「違うわ。……95%譲渡したお金から取られるってこと。つまり100チューン渡そうと思うと、その20倍、つまり2000チューンかかるってわけ」
「は!? つまり2,000%ってことか!?」
「そういうことね。だから譲渡はできない。奢るとかならできるんだけどね」
この世界のお金についての知識を得たところで、以前ガイアがいた建物についた。俺とテュケーはゆっくりと階段を下りていく。ドアを開けると一人の少女が椅子に座っていた。
「おかえり……テュケー……」
ガイアはそう呟いた。
「頼んでいたものはできた?」
テュケーはガイアに尋ねる。するとガイアはポケットから4つの飴玉を取り出した。
「取り敢えず……人数分」
テュケーはそれを受け取ると、ポケットにしまった。
「なんだそれ?」
「これはガイア特製の飴玉。甘くて美味しいよ」
……それだけのためにここまでやってきたのか? 本当に時々こいつの考えていることがわからなくなってくる。とふと思いたってガイアに話しかける。
「なあ、一緒に行かないか? ここにいても暇だろ?」
するとガイアはしばらくの沈黙のあと、
「…………ごめん………なさい。私にはやることがあるから…………」
そう言ってフードを深く被ってしまった。その時、エメラルドの瞳の近くに何かが付いているように見えたが、結局何かはっきりとしなかった。
その後俺たちは武器屋に戻ると、待機していたイリスとプシケを連れて、あの忌々しき森へと向かっていった
すみません。1週間ほど、忙しくて更新できませんでした。なるべく溜めておきます。




