↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキング最高順位51位!『異世界に転移したので、もう我慢するのはやめました ~固有能力《自由》で好き勝手に生きる~』  作者: くんくん
第1部 自由への一歩

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/175

エピローグ まだ知らない場所へ


王都へ戻ってから、しばらくの時間が過ぎた。


セラは変わらず治癒術院へ通い、俺とレグは冒険者として依頼を受けている。


大きく変わったことはない。


でも、少しずつ変わったことはある。


セラは以前より治癒術を安定して使えるようになり、冒険者として依頼に出たときも、浅い傷程度なら迷わず対処できるようになった。


まだ治せない傷も多い。


それでも本人は、少しずつできることが増えていくのが楽しいらしい。


そしてレグは――。


「ハヤト」


「ん?」


「これ、どう?」


俺は振り返った。


王都の商業区。


服屋の前で、銀髪の小柄な女性が一枚の上着を身体に当てている。


レグだ。


「似合うんじゃない?」


「ほんと?」


「俺に聞くよりセラに聞いた方がいいと思うけど」


「ハヤトにもきいてる」


「じゃあ似合う」


「ん」


満足そうだ。


少し前まで、服なんて着られれば何でもいいという感じだったのに。


最近は自分から店を覗くようになった。


相変わらず一番長く止まるのは肉屋だが。


「レグ」


少し離れた場所からセラが呼ぶ。


今日は治癒術院が休みなので、三人で王都を歩いている。


「それ買うの?」


「んー……」


値札を見る。


俺を見る。


もう一度値札を見る。


「やめる」


「珍しい」


俺が言うと、レグは真面目な顔で答えた。


「これかったら、おにくへる」


「結局そこかよ」


セラが吹き出した。


変わったようで。


変わっていない。


たぶん。


それくらいがちょうどいい。


    ◇


昼を食べたあと。


俺たちは宿へ戻った。


明日は近くの森で魔物の駆除依頼。


今日は特にやることもない。


剣の手入れでもしておこうかと思っていると、宿の主人に呼び止められた。


「ハヤトさん、手紙ですよ」


「俺に?」


「ええ」


受け取る。


見覚えのある名前。


グレイ・ノルマン。


「グレイ?」


横からレグが覗き込む。


「ああ」


「またしんでん?」


「さあな」


三人で部屋へ戻り、封を開ける。


セラも椅子を近づけてきた。


「何て?」


「今読む」


手紙はそれほど長くなかった。


神殿から書き写した資料の整理が、少しずつ進んでいること。


ルディアにいた竜についても、以前より多くのことが分かってきたこと。


そして。


最後の数行。


俺の手が止まった。


「どうしたの?」


セラが聞く。


「これ」


俺はその部分を読み上げる。


「『一つ、気になる記述を見つけた』」


レグも俺を見る。


「『人の姿を取る竜について、ルディアとは異なる土地の記録が残されている』」


セラの表情が変わった。


「別の竜?」


「みたいだな」


続ける。


「『場所は、王都から遥か東。山を越え、さらに大きな川を越えた先にある地方らしい』」


その下には。


俺たちが聞いたこともない土地の名前が書かれていた。


「人化できる竜って、レグの一族だけじゃなかったってこと?」


セラが聞く。


「まだ分からない。グレイも確定とは書いてない」


記録が間違っている可能性もある。


別の方法で人の姿になった竜かもしれない。


それでも。


少し気になる。


俺はもう一度手紙を見る。


遠い土地。


別の人化竜。


そこに何があるのか。


今の俺たちには分からない。


「ハヤト」


「ん?」


レグが聞く。


「そこ」


「うん」


「おにくある?」


「知らねえよ」


セラが笑い出した。


「最初に聞くことがそれ?」


「だいじ」


「遠いんだぞ?」


「いっぱいあるく?」


「たぶん」


「じゃあ、おなかすく」


「理屈は分かるけどさ」


俺は手紙を畳んだ。


「行くの?」


セラが聞く。


「今すぐは行かない」


「珍しく即決しないのね」


「俺を何だと思ってるんだ」


「ハヤト」


「だから説明になってないって」


レグも笑う。


でも。


俺はもう一度、手紙を見る。


今すぐじゃなくていい。


セラには治癒術院がある。


俺たちも王都で受けたい依頼がある。


グレイだって、まだ記録を調べている途中だ。


それでも。


いつか。


「まあ」


俺は手紙を机に置いた。


「気が向いたら行ってみるか」


レグの目が輝く。


「いく?」


「気が向いたらって言っただろ」


「レグ、むいた」


「早いわ」


セラが笑う。


「私の予定も聞いてよ」


「セラもいく?」


レグが聞く。


「まだ行くって決まってないの!」


「いかない?」


「……行くことになったら行く」


結局行くんじゃないか。


三人で笑った。


窓の外には。


王都の街並みが広がっている。


ここへ来たときは。


この街だけでも、知らないものばかりだった。


今では。


少しだけ慣れた。


でも。


世界はまだ広い。


俺たちが知らない場所も。


知らない人も。


知らない竜も。


きっと。


いくらでもいる。


「ハヤト」


レグが俺の袖を引く。


「ん?」


「きょうは?」


「何が?」


「おにく」


「さっき食っただろ」


「よる」


「まだ昼過ぎだぞ」


「よるになる」


「そりゃなるけど」


セラがまた笑う。


俺も。


つられて笑った。


この先。


どこへ行くのか。


まだ決めていない。


次に何が待っているのかも。


分からない。


でも。


それでいい。


行きたくなったら。


行けばいい。


俺たちは。


まだ知らない場所へ。


いつだって。


歩き出せるのだから。


第一部 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。