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ランキング最高順位51位!『異世界に転移したので、もう我慢するのはやめました ~固有能力《自由》で好き勝手に生きる~』  作者: くんくん
第1部 自由への一歩

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第34話 王都の冒険者ギルド


翌朝。


「でか……」


王都の冒険者ギルドを前にして、俺は思わず立ち止まった。


ラーデンのギルドもそれなりに大きかった。


だが、目の前の建物はその比じゃない。


三階建ての石造りで、正面には大きな看板。開け放たれた扉からは、朝だというのに何十人もの冒険者が出入りしている。


「人も多いわね」


隣でセラが建物を見上げる。


「今日、授業なくて良かったな」


「私も一回見ておきたかったし」


そして。


俺たちの間に立っているレグは――。


「ハヤト」


「ん?」


「ここ、ごはんある?」


「お前はまずそれなの?」


「ラーデンのギルド、あった」


確かに食事を出す場所はあった。


「中に入れば分かるよ」


「ん」


三人で扉をくぐる。


途端に。


ざわめきが一気に大きくなった。


「……うわ」


中も広い。


受付だけでいくつあるんだ。


正面には横一列に何人もの職員がいて、その前にそれぞれ列ができている。


右側には大量の依頼書が貼られた大きな掲示板。


左側には飲食用らしい広い区画があり、すでに朝から食べている冒険者もいた。


レグの顔がそちらへ向く。


「レグ」


「みてるだけ」


「何も言ってないぞ」


「みてるだけ」


怪しい。


セラが笑う。


「先に受付でしょ」


「そうだな」


王都でもそのまま活動できるのか。


何か手続きが必要なのか。


まずはそれを確認する。


比較的短い列へ並び、しばらく待つ。


やがて俺たちの順番になった。


「おはようございます。本日はどうされましたか?」


受付の女性が笑顔で声をかけてくる。


「ラーデンから来たんですけど、こっちでも依頼を受けたいんです」


「あ、それでしたら冒険者証を確認させてください」


俺とセラがそれぞれ冒険者証を出す。


女性は内容を確認して、すぐに返してきた。


「問題ありません。王都支部でもそのまま依頼を受けられます」


「特に登録し直したりは?」


「必要ありません。ただ、長期間こちらで活動される場合は、宿泊先などを登録していただくと緊急時の連絡がしやすくなります」


「なるほど」


それなら簡単だ。


宿の名前だけ伝えておく。


受付の女性が書き留めたあと。


「そちらの方は?」


視線がレグへ向いた。


「レグ?」


「ん」


レグが首を傾げる。


「冒険者ではないんですか?」


「ああ、レグは――」


言いかけて止まる。


竜です。


とは言わない方がいいな。


「仲間です」


「ハヤト」


「何?」


「レグもぼうけんしゃ?」


「なりたいの?」


聞くと。


「わかんない」


「じゃあ今はいいだろ」


「そっか」


納得した。


受付の女性は少し不思議そうだったが、深くは聞いてこなかった。


助かる。


「依頼はあちらの掲示板から選べます。受注されるものが決まりましたら、依頼書を持って受付までお願いします」


「分かりました」


礼を言い。


俺たちは掲示板へ向かった。


    ◇


「多すぎない?」


セラが呟く。


同感だった。


壁一面。


依頼書。


しかも一枚や二枚どころではない。


討伐。


採取。


護衛。


運搬。


街の中での仕事まである。


「王都ってこんなに依頼あるんだな」


「人も多いからじゃない?」


「その分、冒険者も多いけどな」


実際。


掲示板の前には俺たち以外にもかなりの人数がいる。


新しい依頼書が貼られるたび、何人かが確認しに来ていた。


「ハヤト」


レグが一枚を指差す。


「これ」


「読めるの?」


「おにくってかいてある」


「そこだけ読めるようになったの!?」


思わず声が出た。


確認する。


確かに依頼書の中に肉という文字がある。


「……食肉店の荷運びだな」


「おにく?」


「運ぶだけ」


「もらえる?」


「報酬は金だよ」


「じゃあいらない」


興味を失うのが早い。


セラが笑っていた。


「どんどん覚える言葉が偏っていくわね」


「絶対俺のせいじゃないからな」


「半分くらいはハヤトじゃない?」


「なんで」


「いつも食べ物の話してるから」


「レグが振ってくるんだよ」


「ハヤトもこたえる」


本人から追撃された。


何も言えない。


俺は気を取り直して依頼書を見る。


「今日は三人いるし、何か受けてみる?」


セラに聞く。


「私は大丈夫。授業が始まるのは明日からだし」


「じゃあ日帰りで終わるやつだな」


「そうね」


王都へ来て早々、何日も戻れない依頼を受ける必要はない。


できれば近場。


軽く動けて。


夕方までには帰ってこられるもの。


いくつか確認していると。


一枚の依頼書が目に留まった。


「これなんかどう?」


セラが覗き込む。


「薬草畑の魔物駆除?」


「ああ」


王都の東側。


街から少し離れた場所に、薬草を育てている農園があるらしい。


そこへ最近、小型の魔物が入り込むようになった。


作物を荒らされるため、数を減らしてほしい。


「近いわね」


「歩いて行ける距離っぽい」


「危険度も高くなさそう」


「久しぶりにちょうどいいんじゃない?」


王都へ来てから。


旅。


治癒術院。


祝い。


街歩き。


考えてみれば、まともに依頼を受けるのは少し久しぶりだ。


身体を動かしたくなっていた。


「レグ」


「ん?」


「これ行く?」


「まものいる?」


「いる」


「たおす?」


「その予定」


「いく」


即決。


「でも加減しろよ」


「……」


返事がない。


「レグ?」


「がんばる」


「その返事が一番怖い」


セラが横で笑う。


「薬草畑ごと消さないでよ?」


「けさない」


「本当に?」


「たぶん」


俺とセラが同時にレグを見る。


「今の誰に教わった?」


聞くと。


レグは俺を指差した。


「ハヤト」


「……」


「ほら!」


セラが笑う。


「完全にハヤトの影響じゃない!」


否定できなかった。


    ◇


依頼書を持って受付へ戻る。


さっきとは別の職員だった。


「こちらの依頼ですね」


「はい」


受付の男性が内容を確認する。


「東区外れの薬草農園で、畑を荒らしている魔物の駆除。依頼主は農園主のバートンさんです」


「魔物の種類は分かってます?」


「確認されているのはホーンラビットです」


名前の通りなら、角のある兎みたいな魔物だろう。


「数は?」


「正確には不明ですが、十体前後はいる可能性があるとのことです」


セラが小声で言う。


「それくらいなら問題なさそうね」


「ああ」


受付の男性が続ける。


「ただし、一つ注意があります」


「注意?」


「依頼はあくまで魔物の駆除です。薬草畑には高価なものもありますので、できるだけ畑を傷つけないようにしてください」


俺とセラの視線が。


ゆっくりとレグへ向いた。


「……なに?」


「レグ」


「ん?」


「火は禁止」


「なんで?」


「今説明聞いてただろ!」


「きいてた」


「じゃあ分かるだろ」


「ちょっとなら?」


「駄目」


「すこし」


「駄目」


「ちいさい火」


「駄目」


レグの顔が少し不満そうになる。


「普通に倒そう」


「……わかった」


受付の男性が笑いを堪えている。


まただ。


王都に来てから受付の人に笑われる率が高い気がする。


「それでは、こちらで受注処理を行います」


依頼書に印が押される。


「日没までに一度、状況を報告してください」


「分かりました」


依頼を受け取る。


久しぶりの仕事だ。


「じゃあ行くか」


「うん」


「ん」


三人でギルドを出ようとしたところで。


「ハヤト」


レグが止まった。


「どうした?」


レグは飲食区画を見ている。


嫌な予感しかしない。


「ごはん」


「朝食べたよな?」


「おひる」


「まだ早い」


「さきにたべる?」


「食べない」


「……」


「その顔やめろ」


セラが隣で笑う。


「依頼が終わったら何か食べればいいじゃない」


「ほんと?」


「うん」


「セラ、すき」


「またそれか!」


「ハヤトもすき」


「後付けやめろ」


三人でギルドを出る。


王都で初めて受ける依頼。


薬草畑を荒らす魔物の駆除。


難しい仕事ではなさそうだ。


――ただ。


問題があるとすれば。


敵よりも。


「レグ」


「ん?」


「本当に火使うなよ」


「わかってる」


「絶対だぞ」


「わかってる」


「……不安だ」


「ハヤト、しつこい」


「お前が言うな」


セラの笑い声を聞きながら。


俺たちは王都の東門へ向かって歩き出した。

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