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ランキング最高順位51位!『異世界に転移したので、もう我慢するのはやめました ~固有能力《自由》で好き勝手に生きる~』  作者: くんくん
第1部 自由への一歩

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第33話 王都でのお祝い


「おにく!」


王都の大通りに、レグの声が響いた。


「分かったから声でかいって」


「でも、おいわい」


「祝いでも声量は変わらないだろ」


治癒術院を出てから、ずっとこの調子だ。


セラが正式に入学を決めた。


それが嬉しいのは分かる。


俺だって嬉しい。


ただ。


「レグ」


「ん?」


「祝いの主役、誰か分かってる?」


レグは少し考える。


そしてセラを見る。


「セラ」


「正解」


「じゃあ、セラがおにくたべる」


「なんでそうなるの?」


セラが笑った。


さっきまで審査結果を待って緊張していた人間とは思えない。


手には、治癒術院から受け取った書類。


まだ何度か見ている。


「セラ」


「なに?」


「また見てる」


「いいでしょ」


「なくなってないか確認?」


「違うって言ってるでしょ」


書類を胸元に抱える。


「……本当に入れたんだなって思って」


その顔を見て。


俺はそれ以上からかうのをやめた。


「そっか」


「うん」


「じゃあ今日は好きなもの食べよう」


「それ、レグに言ったら大変なことになるわよ」


「おにく!」


「ほら」


「もう遅かったな」


    ◇


結局。


俺たちが入ったのは、大通りから少し外れたところにある肉料理の店だった。


店先から漂ってくる香ばしい匂いに、レグが完全に捕まったからだ。


「ここ」


「まだ中見てないぞ」


「ここがいい」


「匂いだけで決めるの?」


セラが聞く。


「いいにおいは、おいしい」


「理屈になってるようでなってないな」


とはいえ。


俺も腹が減っている。


セラも特に反対しなかったので、そのまま店へ入った。


中はかなり賑わっていた。


冒険者らしい格好の人間もいれば、普通の家族連れもいる。


ちょうど空いていた四人掛けの席に案内され、三人で座った。


「さて」


俺はメニューを開く。


「今日はセラの祝いだから、セラが選べ」


「え、私?」


「主役だろ」


「でも……」


セラがメニューを見る。


向かいではレグも覗き込んでいる。


「これ」


「早いな」


「おにくいっぱい」


レグが指差したのは、大きな肉の盛り合わせだった。


焼いた肉が何種類か載っているらしい。


「これ、三人で食べるやつじゃない?」


セラが言う。


「ちょうどいいじゃん」


「ハヤトまで」


「俺も食いたい」


「じゃあ……それにする?」


セラが少し笑う。


「祝いだし」


「決まり」


「やった」


注文を済ませる。


飲み物も頼み。


しばらくして。


大きな皿が運ばれてきた。


「おお……」


思わず声が出る。


牛っぽい肉。


鶏っぽい肉。


骨付きの肉まである。


正確に何の魔物なのか、何の動物なのかまでは分からない。


ただ。


「絶対うまいやつだな」


「見れば分かる」


「ハヤト」


レグがこちらを見る。


「なに?」


「たべていい?」


「どうぞ」


その瞬間。


レグの手が伸びた。


「熱いから気をつけ――」


「あつい」


「言う前に食うから」


「でも、おいしい」


「なら良かった」


セラも肉を一切れ取る。


一口。


「……おいしい」


目が少し大きくなる。


「だろ?」


「なんでハヤトが得意そうなのよ」


「俺が店選んだみたいになってるから」


「選んだのレグでしょ」


「レグ、すごい?」


「匂いで店を選ぶ能力だけはすごいな」


「だけ?」


「そこ気にするのかよ」


三人で食べる。


旅の途中で食べた料理も悪くなかった。


でも。


やっぱり街で食べる温かい料理は違う。


それに今日は。


ただの夕食じゃない。


「改めて」


俺は飲み物の入った杯を持ち上げる。


「セラ。入学おめでとう」


セラが一瞬、目を丸くする。


「……急にちゃんとやるのね」


「たまにはな」


レグも慌てて自分の杯を持ち上げた。


「おめでとう」


「ありがとう」


三人の杯が軽く触れる。


小さな音。


それだけなのに。


セラは本当に嬉しそうだった。


「……なんか」


「ん?」


「やっと、ここまで来たんだなって」


セラがぽつりと言う。


「ずっと行きたかったんだろ」


「うん」


「じゃあ良かったじゃん」


「簡単に言うわね」


「でも本当だろ?」


セラは少しだけ黙る。


それから頷いた。


「うん」


静かな返事だった。


    ◇


しばらくは普通に食事を楽しんだ。


途中でレグが追加の肉を頼もうとして止められたり。


セラが「今日はいいんじゃない?」と言って、結局追加したり。


俺が「甘やかしてるのセラじゃん」と言ったら怒られたり。


いつもの感じだ。


食事が半分ほど終わったところで。


セラが俺を見る。


「ねえ、ハヤト」


「ん?」


「私が治癒術院に通い始めたら、ハヤトたちはどうするの?」


「ああ」


それは俺も考えていた。


「とりあえず王都の冒険者ギルドには行くつもり」


「依頼受ける?」


「面白そうなのがあれば」


「レグも?」


セラが向かいを見る。


レグは骨付き肉と格闘していた。


「レグ」


「ん?」


「俺とギルド行く?」


「いく」


即答。


「何するか分かってる?」


「ハヤトといく」


「そういう理由か」


まあ。


別にいい。


「でも」


セラが少し心配そうな顔をする。


「二人で変なことしないでよ」


「何だよ、変なことって」


「分かんないけど」


「なら言うなよ」


「ハヤトとレグの組み合わせ、なんか心配なの」


「セラ」


レグが骨付き肉を置く。


「だいじょうぶ」


「ほんと?」


「レグがいる」


「それがちょっと心配なのよ」


「なんで?」


レグが本気で分からなそうな顔をする。


俺は笑った。


「まあ、危ないことはしないよ」


「……本当に?」


「たぶん」


「ハヤト!」


「冗談」


最近このやり取りが増えた気がする。


でも。


セラが治癒術院へ通い始めれば。


今までみたいに、一日中ずっと三人で動くわけではなくなる。


それぞれが自分の時間を持つ。


それは当然のことだ。


「授業がない日は一緒に依頼行けばいいし」


俺が言う。


「……うん」


「治癒術覚えたら、実際に使う機会も必要だろ?」


「そうね」


セラの表情が少し明るくなる。


「早く覚えたいな」


「焦るなよ」


「ハヤトに言われたくない」


「なんで?」


「何でもすぐやろうとするから」


「そう?」


「そう」


レグまで頷いた。


「ハヤト、すぐいく」


「お前もだろ」


「レグはちがう」


「何が?」


「おにくは、まつ」


「料理中だけだろ」


セラが吹き出した。


    ◇


食事を終え、店を出る。


夜の王都は、昼とはまた違った。


通りのあちこちに明かりが灯り。


店からはまだ人の声が聞こえる。


ラーデンより、ずっと夜が遅い街らしい。


「すごいね」


セラが辺りを見る。


「まだ人いっぱい」


「王都だからな」


「ハヤト」


レグが袖を引く。


「ん?」


「あれなに?」


見る。


少し先の店先に、色とりどりの小さな菓子が並んでいる。


「お菓子じゃない?」


「たべたい」


「今、肉あれだけ食っただろ」


「べつ」


「何が別なんだよ」


「おかしのおなか」


「そんなものはない」


「ある」


「ない」


「ある」


「レグ」


セラが呼ぶ。


「今日はもう駄目」


「……」


レグが黙る。


「明日ならいいわよ」


「ほんと?」


「うん」


「セラ、すき」


「分かりやすいなあ」


俺が言うと。


レグは少し考えてから俺を見る。


「ハヤトもすき」


「はいはい」


「ほんと」


「分かったって」


セラが横で笑っている。


三人で宿へ戻る。


王都での二日目。


セラの治癒術院入学が決まり。


少しずつ。


この街での生活が形になり始めていた。


    ◇


宿へ戻り。


部屋に入る。


セラは受け取った書類を机の上に広げた。


「また見るの?」


俺が聞く。


「今度はちゃんと読むの」


「今まで読んでなかったの?」


「必要なところは読んだわよ」


「どっちだよ」


書類には、これからの手続きや授業についての説明が書かれているらしい。


俺はベッドへ腰を下ろす。


レグはもう隣のベッドに転がっていた。


「明日はどうするの?」


セラが書類を見ながら聞く。


「ギルド行ってみる」


「私も行こうかな」


「治癒術院は?」


「明日はまだ授業ないから」


「じゃあ一緒に行く?」


「うん」


レグがベッドの上で手を上げる。


「レグも」


「知ってる」


「三人だな」


久しぶりに。


というほど離れてはいないけど。


明日はまた三人で動く。


「王都のギルドか」


俺は少し楽しみだった。


ラーデンとは規模も違うだろう。


依頼の種類も。


冒険者の数も。


きっと全然違う。


「ハヤト」


セラが警戒するような目で俺を見る。


「なに?」


「その顔」


「どの顔?」


「面白そうなこと探してる顔」


「そんな顔ある?」


「ある」


レグも頷く。


「ある」


「お前まで?」


「ある」


二対一。


勝てない。


「変な依頼選ばないでよ」


「選ばないって」


「ほんと?」


「たぶん」


「また!」


俺は笑った。


明日は。


王都の冒険者ギルド。


この街に来てから、セラのことが中心だった。


それでいいと思っていた。


でも。


そろそろ俺自身も。


王都で何をするのか。


探してみてもいい頃だ。


そんなことを考えながら。


王都での二日目の夜は、ゆっくりと更けていった。

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