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ランキング最高順位51位!『異世界に転移したので、もう我慢するのはやめました ~固有能力《自由》で好き勝手に生きる~』  作者: くんくん
第1部 自由への一歩

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第18話 ガルネ山麓とレグの異変


依頼の詳細を聞いた結果。


ハヤトたちは、翌朝にはラーデンを出ることになった。


被害が出ているのは、ガルネ山の麓にある小さな村――ローデ村。


村の周囲には牧草地と森が広がり、普段は大型の魔物が出るような場所ではない。


それが十日ほど前から、家畜が立て続けに襲われ始めた。


最初は羊。


次に牛。


そして三日前、魔物を探しに森へ入った狩人二人が戻らなくなった。


現場には巨大な爪痕と、地面を抉るほどの足跡が残されていたらしい。


「対象不明のままなの?」


セラが受付で確認する。


ミレイは頷いた。


「村から送られてきた情報だけでは特定できませんでした。ただ、少なくともオーガより大型と見られています」


「飛行型の可能性は?」


「あります」


ハヤトは依頼書を見ながら尋ねた。


「報酬が高い理由って、それ?」


「対象が分からないこと。それと、すでに人的被害が出ていることですね」


危険度は今までより明らかに高い。


それでもハヤトは、依頼書を返さなかった。


怖くないわけではない。


むしろ、何が出るか分からない分だけ怖い。


だが。


同時に、自分がどこまでやれるのか試してみたい気持ちもあった。


「受けます」


ミレイがハヤトを見る。


次にセラ。


セラも頷いた。


「私も行く」


「分かりました。ただし、危険だと判断した場合は調査だけで戻ってください。討伐は必須ではありません」


「了解」


ハヤトは素直に答えた。


その瞬間。


肩の上でレグが小さく鳴いた。


「……お前も行く気?」


レグは当然のようにハヤトの頭へ前脚を乗せた。


「怪我治ったばっかだぞ」


もう一声。


「いや、返事されても」


セラが笑う。


「置いていけると思う?」


ハヤトはレグを見る。


今にも肩から降りて、勝手に受付へ依頼を出しそうな顔をしている。


「絶対ついてくるよな」


レグの尾が揺れた。


結局。


治療師に確認し、傷がほぼ完治していることを条件に同行を認めてもらった。


ただし、無理はさせない。


危険なら戦わせない。


ハヤトは何度もそう言い聞かせた。


レグがどこまで理解しているかは分からなかった。


◇


ローデ村までは、徒歩で一日半ほど。


今回は三人――正確には二人と一頭だけの旅だ。


出発してからしばらく、レグはハヤトの肩に乗っていた。


「重くなってない?」


ハヤトが聞く。


レグは知らん顔をする。


「絶対ちょっと重くなってるだろ」


「成長してるんじゃない?」


セラが横を歩きながら答える。


「まだ幼竜なんだろ?」


「そうだけど、竜の成長速度なんて私も知らないわよ」


最近。


レグの身体にはいくつか変化があった。


鱗の色が、以前より少し艶を帯びている。


翼も大きくなった。


以前は地面から数十センチ浮くのがやっとだったのに、今では数メートルなら普通に飛べる。


そして何より。


人間の言葉を理解しているような反応が増えた。


「レグ。降りて歩け」


首を振る。


「分かってるじゃん」


セラが笑った。


「じゃあ『ご飯』は?」


レグの頭が勢いよくセラへ向く。


「完全に分かってるな」


「食べ物限定だったりして」


「ありそうなのが嫌だ」


結局、昼休憩までレグはほとんどハヤトの肩から降りなかった。


◇


夕方。


三人は森の手前で野営することにした。


ハヤトが火を起こし、セラが水を用意する。


料理はもちろんハヤトだ。


最近は《料理・初級》もかなり板についてきた。


肉と野菜を炒め、簡単なスープを作る。


レグ用には味付け前の肉を別にして焼いた。


「はい」


皿を置く。


レグが近づく。


「待て」


止まる。


「……本当に覚えたな」


少し前なら肉を見た瞬間に飛びついていた。


今はハヤトが「よし」と言うまで待つ。


尻尾はものすごい勢いで動いているが。


「よし」


一瞬で食べ始めた。


「そこは変わらないか」


ハヤトたちも食事を取る。


焚き火を囲みながら、セラが地図を広げた。


「明日の午前中には村に着くと思う」


「着いたらまず被害場所?」


「村長から詳しく話を聞いた方がいいわね」


「足跡も見たい」


《追跡》を覚えてから、痕跡を見ることが以前より面白くなった。


今回こそ役に立つかもしれない。


「対象が分かったらどうする?」


セラが尋ねる。


「強さ次第」


ハヤトは即答した。


「勝てそうなら戦う。無理そうなら戻る」


「ちゃんと学習したのね」


「戦いたいからって死んだら意味ないし」


強敵へ挑むのは嫌いではない。


むしろ楽しい。


だが、自殺したいわけではない。


勝てそうな相手に全力で挑む。


そのくらいがちょうどいい。


食事が終わる。


レグは腹が満たされたのか、ハヤトの隣で丸くなっていた。


焚き火の光が鱗へ反射する。


ハヤトはその背中を撫でた。


「明日は勝手に突っ込むなよ」


レグが片目を開ける。


「俺が行くって言うまで待て」


もう一度目を閉じた。


「……聞いてる?」


尾が一度だけ地面を叩いた。


セラが笑う。


「たぶん聞いてるわよ」


「返事くらいしてくれれば楽なんだけどな」


何気なくそう言った時。


レグが顔を上げた。


ハヤトを見る。


口を開く。


「……?」


小さな声。


鳴き声ではない。


何かを喋ろうとしたように聞こえた。


「今……」


セラも気づいたらしい。


レグはもう一度口を開く。


だが今度は、いつもの短い鳴き声だった。


「気のせい?」


ハヤトが聞く。


「分からない」


セラは少し考え込んだ。


「でも竜って、成長すると人間の言葉を話す個体もいるらしいわよ」


「マジで?」


「高位の竜ならね。私は見たことないけど」


ハヤトはレグを見る。


本人はもう興味を失ったのか、再び丸くなっていた。


「そのうち普通に喋ったりしてな」


冗談半分で言う。


その時は。


本当にそうなるとは、まだ思っていなかった。


◇


翌朝。


ローデ村へ到着した。


小さな村だった。


木造の家が二十軒ほど。


周囲には畑と牧草地。


遠くにはガルネ山がそびえている。


山の中腹は森に覆われ、そのさらに上には灰色の岩肌が見えていた。


村へ入った瞬間、視線が集まった。


原因は分かっている。


「やっぱレグ目立つな」


肩の上の幼竜。


村人たちが遠巻きに見ている。


子供たちだけは興味津々だ。


一人の男が近づいてきた。


五十代くらい。


日に焼けた顔。


「冒険者の方ですか?」


「ラーデンから来ました。神崎ハヤトです」


「セラ・アーヴェルです」


男はほっとしたように頭を下げた。


「村長のロイドです。よく来てくださいました」


村長宅へ案内される。


レグだけは家の中へ入れるか少し迷われたが、大人しくしているのを見て許可された。


ハヤトの足元へ座る。


「被害の状況を教えてもらえますか?」


ロイドの表情が暗くなる。


「最初は十日前でした」


村の西側。


森に近い牧草地で羊が三頭殺された。


食べられたというより、身体を引き裂かれていたらしい。


その二日後。


別の場所で牛が一頭。


さらに数日後。


「狩人二人が森へ入り、そのまま戻っていません」


「探しに行った人は?」


セラが尋ねる。


「入口付近までは。しかし……」


ロイドは首を振った。


「森の奥から大きな唸り声が聞こえて、誰も近づけませんでした」


「足跡を見せてもらえます?」


ハヤトが聞く。


「残っていれば」


村長の案内で、西側の牧草地へ向かった。


現場は村から歩いて十分ほど。


柵の一部が大きく壊れている。


そして。


「……でかいな」


地面に残る足跡。


ハヤトの手より遥かに大きい。


四本足。


爪は三本。


かなり深く沈んでいる。


《追跡》を意識する。


重い。


相当な体重。


足跡の間隔も長い。


一歩が大きい。


セラが横から覗く。


「分かる?」


「大型なのは確実」


「それは見れば分かるわよ」


「まだ初級なんだから仕方ないだろ」


ハヤトはさらに周囲を見る。


壊れた柵。


血の跡はほとんど残っていない。


しかし。


木の幹に妙な傷がある。


四本。


縦に長い。


「爪?」


セラが近づく。


「違うかも」


傷はかなり高い位置にある。


ハヤトが手を伸ばしても届かない。


二メートル以上。


「立ち上がった?」


「それか、元々背が高い」


村長の顔色が悪くなる。


「やはり危険な魔物でしょうか」


「まだ何とも」


ハヤトは無責任に安心させることはしなかった。


分からないものは分からない。


その時。


レグが突然、低く唸った。


「レグ?」


牧草地の端。


森の方向を見ている。


翼がわずかに開いている。


背中の鱗が逆立ったように見えた。


今までとは反応が違う。


怯えている。


いや。


警戒している。


セラも気づいた。


「何か感じてる?」


レグが森へ向かって一歩出る。


ハヤトが肩へ手を置いた。


「待て」


すぐに止まった。


目だけは森から離さない。


そして。


遠く。


木々の奥から。


低い声が響いた。


獣の咆哮。


腹の底へ響くような、重い音だった。


鳥たちが一斉に飛び立つ。


村長が青ざめる。


ハヤトは森を見る。


距離はある。


姿は見えない。


だが。


「あれか」


おそらく。


今回の討伐対象。


レグが再び唸る。


その喉元。


一瞬だけ。


淡い金色の光が浮かんだ。


「……今の何?」


ハヤトが尋ねる。


セラも見ていた。


「分からない」


光はすぐに消えた。


レグ自身も不思議そうに胸元を見ている。


ハヤトは少し気になった。


しかし。


今は森の魔物が先だ。


「村長」


ハヤトが振り返る。


「俺たち、森を調べてきます」


ロイドが不安そうに頷いた。


「どうか……お気をつけて」


ハヤトは剣の位置を確認する。


セラも杖を握る。


レグは二人の間。


森の奥には。


まだ正体の分からない何かがいる。


そして同時に。


ハヤトたちのすぐそばでも。


一頭の幼竜に、今までとは違う変化が始まろうとしていた。

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