3話目〜池に落ちたら、変な声が聞こえてきたんだけど!
いつもは柵の外からしか池を見ないのに、今、僕とナナオは柵の中に立っている。
一歩踏み出せば、池に落ちてしまうだろう。
「落ちると危ないから、ナナオ、帰ろう」
びくびくしながら僕が言うのを、ナナオは「平気! 行こう」って言って僕をぐいっと引っ張った。
「ギャー落ちるーっ!!」
と思った次の瞬間――。
ぶくぶくと泡を吐き出しながら、僕の体は行けの中へ……。
苦しい! 死ぬ! 死にたくない!
ナナオは?
目を開けて見る余裕なんかなかった。
だんだん息ができなくなり、気が遠くなってきた。
遠くのほうで、変な声が聞こえる。
「……は……ラ……ドラ……」
何言ってんだ。はっきりしゃべりやがれ!
「わが名はライバードラゴン」
誰だ、それ。知らない。
その瞬間、体が地面に叩きつけられた。
「いってー!」
頭から落ちなくてよかった。
「ミナト、平気?」
ナナオが僕の顔をのぞきこむ。
「うん、平気」
とりあえず答えてから、あたりを見回した。
「なに……ここ」
あたり一面、枯れ木や雑草だらけの『もと』草原って感じ。
上を見ると、空もどんより曇っていて暗い。
そしてぐるりと一周見回すが……。
「僕たち、池に落ちたよね?」
確かに池に落ちて、そして、ここに落ちた?
だとすれば、上に池があってもよさそうなのに、あるのは空だけ。
「池はどこにいったんだろう?」
体は確かにずぶ濡れだ。
髪もナナオも濡れているのに、池どころか水さえ見当たらなかった。
「あ、そうだ。さっき僕、変な声を聞いたよ!」
僕の言葉にナナオはうなずくと、目を上に向けて言った。
「ライバードラゴン……」
「ああ、そう。そんな名前! 知ってるのか? ナナオ」
「うん。あの池に住むモンスターだ」
「モンスター?」
驚いた。
いや、けど……。
驚くなよ、これは夢だ……たぶん。
「あの池って、すごく濁ってるだろ? あれはライバードラゴンのせいなんだ。ほんとはものすごく浅い池なのに、深いって錯覚させられているんだ」
そしてナナオは、僕の肩に両手を置いた。
「いいか、ミナト。ボクたちでライバードラゴンを倒すんだ!」
「え?」
「ボクたちは、選ばれた者なんだ!」
まるでゲームの世界のようなことをナナオが言うから、僕はドン引きしちゃった。
だけどナナオは真剣だ。
やけにリアルな夢だなー。
けど、夢ならいいや。
と、僕も楽しむことにした。
「ライバードラゴンをやっつけるぞ!」
「おー!」
ふたりで気合いの入れあいっこをしていると、「クスクス」と笑う声がした。




