2話目~トナリ町にある池まで飛んでいったものの、落ちたらヤバイんじゃないの?
「な、なに?」
慌てておでこに手を当てた。
「これでボクのコトバわかる?」
そいつが言った。
「これでって……これで?」
おでこにはシールのようなものが、張り付いている。
しかも、取れない!
「ほかのヒトにそのホンヤクキ見えナイから、つけててね」
ホンヤクキ?
ドラえもんの道具みたいだな、なんて考えた。
僕は夢を見ているんだろう。
きっとそうだ。
じゃなきゃ、こんなわけのわからないことが起こるわけがない。
そうだ! 夢だよ!
「トナリ町のコンビニのウラに池があるの知ってる?」
そいつが言った。
「知ってるよ。あそこはとても深いから、落ちたら死んじゃう。行っちゃダメだってお母さんが言ってた。学校でも近づくの禁止って言われてるよ」
「行ってみない?」
「……行っちゃダメなんだよ!」
「コワイの?」
ムカっ! 僕を弱虫だって言いたいの?
「怖いんじゃないよ、決まりは決まり! 守らなきゃダメだ」
「ダイジョウブ、ボクが一緒だから平気だよ!」
だから行こうと、手をつながれた。
そ、そんな……!
つながれた手をふりほどく間もなく、体がふわっと浮かんだ。
「わ、わ、わ……な、なにーーーー!!!」
――飛んでいた。
僕たちは、空を飛んでいたんだ。
「ボク、ナナオっていうんだ。キミは?」
こんな状況でのんきに自己紹介してる場合かよーっと思いながらも、「ミナト」と僕は名前を言った。
「ヨロシク、ミナト。ボクたち、いい友達になれるよね」
笑うとナナオはめちゃくちゃかわいかった。
「ナナオは、その……男の子?」
変なことを聞いたのかもしれない。
ナナオは首を傾げた。
ずっとボクって言ってたし、男の子だよな。
「ごめん」
つい謝ってしまった。
「ボクは男の子だよ」
ああよかった、間違ってなかった。
「僕も男の子だよ、同じだね!」
なんて言って笑う。
ナナオも笑ってくれた。
そうしてしばらく飛んでいると、それにもすっかり慣れてきて、気持ちいいと感じられるようになってきた。
「着いたよ」
ナナオが言うと、急降下した。
トナリ町までは、いつもバスかお父さんの車で行く。
こんなに早く着かないのに、空を飛ぶと一瞬なんだな。
池は、夜になると昼間見るより、ずっと暗くて深そうに見えた。
「コワイ?」
僕がビビってんのに気づかれたのか、ナナオがからかうような口ぶりで聞いてくる。
「ちょっと怖い……」
ほんとに怖かったんだ。
ちょっとどころじゃない、超こわい!
僕はナナオにぎゅっとしがみついた。
ほんとに落ちたらどうするんだよ――。




