19話目~見えないけどなんかヤバそうな雰囲気とそして――
「僕は聞こえてるよ、ナナオ続けて!」
「ミナト、下りてきたほう、向いた? そしたらそっちに向かって思い切り走るんだ!」
「え……壁だけど」
「ミナト、いい? もう一回言う。思い切り走るんだ。壁に見えるけど、本当は階段なんだ。いい? 迷っちゃダメだよ。信じて走るんだ!」
――ほんとは、壁なんか……ない?
僕は目の前の壁を、手でぺたりと触った。
「ウソだぁー!」
確かに冷たいコンクリートの壁の感触がそこにある。
これに、思い切りぶつかれってこと?
走れるスペースなんかない。
ぶつかって痛いだけじゃん?
僕は試しに、壁に体を軽くぶつけてみた。
「やっぱ壁じゃん」
どう考えても、壁。
どう見ても、壁だろ。
「ミナトー! ぐだぐだ余計なことを考えてるんじゃないだろうね?」
ばれてる。
「いいか、ミナト。信じるんだ。ちゃんと戻って来れるって信じるんだ!」
見えるものを見えないって思いこむってこと?
逆なら簡単なのに。
見えないものでも、存在してるものってあるじゃん。
空気とか電気とか。
「ミナト!」
またナナオの声が聞こえた。
「ミナ……あ、ああーっ! ナナオ後ろーっ!!」
ふいにアリカの叫び声と、ナナオの「うわぁー!」って声。
そしてきっと、モンスターの声と思われる「ギャーッ!」って雄たけびが続く。
外ではすざましい音。そして叫び声、武器を扱う音。
見えないだけに、すごいシーンを想像してしまった。
「ナナオっ! 大丈夫?」
ユリアの声がした。
「ボ、ボクはイイから、早くっ――」
その様子から、ナナオに何かあったってことはわかる。
「イヤーッ、ナナオ!!」
「ミナト! 助けてっ!」
アリカとユリアの声に、僕はいてもたってもいられなくなった。
「ナナオ! 今行く!」
ほんとは壁なんかないんだ!
僕は思い切って、目をつぶり走った。
「いっ……てぇーーー!!!」
体にすごい衝撃を感じた。
抜けられないじゃんか!
信じたつもりだったのに。
――ハッとした。
信じ方が足りなかったのかも。
どうしたらいいんだ。




