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幻想終末の欠落者  作者: あした
【第五章】 深夜訓練
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第五十二話 投擲得意

「―――ガアアアア!!」


 シャドウたちは咆哮を上げ、瓦礫、ボロボロの廃車、朽ちた信号機を次々と投げつけてくる。


 直撃すれば、必死の投擲攻撃だ。


 が、なんとか、レン、アオイ、サクラは走りながらも避けることができた。


 ヒィ、と情けない悲鳴を漏らして、涙目になりながら……。


「アイツら、なんつーもん投げてきやがんだよ!? 殺す気かよ!?」


「殺す気、決まってる……!」


「そんなこと言ってる場合じゃありません! シャドウのあの攻撃は避けられますが、いずれ追いつかれてしまいます! あのことについて、考えなければ……」


「あのことって、空宮の言ってたことか……?」


 怪訝そうな顔でレンが尋ねると、アオイは「はい……」と頷いた。


「でもよ、未だにさっぱりだぜ? 真っ正面からやり合わなくていいって、どういう意味だよ……」


「チンプンカンプン」


「―――ワタシは今のシャドウの攻撃を見て、気づいたような気がします」


 瞬間、驚愕に目を見開いて、レンとサクラはアオイを見た。


 エルザの言葉の真意が読み解けないレンとサクラだったが、アオイのみ解に辿り着いたようだ。


 慌てて、レンはアオイに聞く。


「ほ、本当か、朽葉くちは……!」


「はい、おそらく合ってるはずです。エルザさんはたぶん、こう伝えたかったのかと……今からそれをお伝えします」


 そうして、アオイは自身が解釈したことについて、レンとサクラに伝えた。


「なるほどな……真っ正面からやり合わなくていいって、そういうことだったのか……。だったら、『あそこ』なんか使えそうだな。……でも、どうやってシャドウをどうにかするかが問題だな」


「それだったら、『あれ』を使えば大丈夫です」


「あー、『あれ』か! 確かに『あれ』を集めて丈夫にすりゃイケそうだな!」


「むっ。サクだけ、置いてけぼり……」


 ムスっと頬を膨らませたサクラがボソッと呟く。


 レンとアオイの考えは一致しているようだが、サクラだけは全く何を言っているのかわからなかった。


『あれ』や『あそこ』が何を指しているのかも、まるで見当がつかない。


 だから置いてけぼりにされて、とても不満だったのだ。


 そんな不機嫌なサクラに気づき、レンとアオイは苦笑いして謝罪した。


わりわりぃ、てっきり氷咲ひさきも気づいてると思ってた……」


「ワタシもです……すみません。サクラさんにも、今ワタシたちが話し合っていたことをお話ししますね」


 アオイは思いついた即席作戦と、その役割分担をサクラに伝えた。


「なるほど……」


 と、サクラは手をポンと叩いて理解したが、不安そうに瞳を伏せる。


「でも、不安。成功、不確実。サク、ミスするから……」


「―――んなもん、やってみなきゃわかんねぇよ」


 レンの発した一言に、サクラの伏せた瞳が見開いた。


 そしてレンを見つめると、サクラの驚きなど気にせずにレンは言葉を続けた。


「それに、ミスすんのが氷咲ひさきってワケじゃねぇ。オレだって、朽葉くちはの可能性だってある。最悪、オレたち全員がミスするかもしんねぇ。……けど、オレたちにはコレしかねぇんだ。氷咲ひさき、失敗を怖がらないで、腹括ってこの作戦に賭けてくれねぇか? ―――お前の力が、この作戦に必要なんだ」


 真っ直ぐな眼差しで、サクラを見つめるレン。


 それをサクラも見つめ返し、数秒の沈黙を置いて答えを出す。


「……わかった、頑張る」


「―――! サンキュー、氷咲ひさき!」


「ふふっ……では、お伝えした通り。ワタシとレンさんで『あれ』の回収を! サクラさんは、限界まで時間を稼いでから、シャドウを『あそこ』まで誘導してください!」


「そんじゃ、作戦開始―――!」


 三叉路を目前に、レンは気合を発した声で合図を出す。


 左の道にアオイが、右の道にレン、真ん中の道にサクラが走り出した。


 瞬間、背後から破壊音が轟く。


 一体のシャドウが壁を走り、それから三人を攻撃しようと上からパンチを繰り出したからだ。


 その拳は道路を砕き、煙が立った。


 しゃがんだまま攻撃に失敗したシャドウの横を通り過ぎて、他のシャドウたちが三人の人間を追いかける。


 ―――それによって、計画外のアクシデントが発生した。


(クソ、シクった……!)


(シャドウをサクラさんに集中させることを失念してました……!)


 全てのシャドウをサクラ一人が受け持つ想定だったのだが、シャドウが分散して

―――サクラだけじゃなく、レンとアオイを追いかけていた。


 首だけ振り向かせた二人は、早々に作戦が失敗したことに焦燥感に駆られる。


 ―――が、突然シャドウは方向転換してサクラを追いかけ始めた。


 なぜなら、


「―――サク、弓得意。投げるのも、得意」


 小石を拾って、レンとアオイを追おうとするシャドウたちに、サクラがその小石を大きな頭部に向かって投げつけたからだ。


 高い空間認識能力を持つサクラは、弓で狙ったところへ狙撃するのが得意。


 それと同じように、手で物を投げて狙った場所へ正確に当てることもできる。


 遠距離攻撃する手段が使い慣れている弓から投擲に変わっても、その空間認識能力は忌憚なく発揮されるのだ。


 ふんす、と自慢げに鼻を鳴らして、サクラは二人に向かってグッドポーズまでしていた。


(ナイス、氷咲ひさき……!)

(ナイスです、サクラさん……!)


 心の中で称賛し、レンとアオイはグッドポーズを返した。


 そうして、戦犯となることを恐れていたサクラが窮地を救い、作戦は続行されたのだった。


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