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幻想終末の欠落者  作者: あした
【第三章】隊結成
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第二十八話 致命的弱点

 イッキが小隊の編成メンバーを発表していき、いよいよ最後の小隊を発表しようと五人の名前を呼んだ。


「最後、空宮エルザ隊。リーダーは、空宮エルザ。そしてメンバーは、星無ほしなしミライ、氷咲ひさきサクラ、朽葉くちはアオイ―――佐伯レン。以上だ」


 そうしてここに、22の小隊が結成された……のだが。


「呪われてんのかな……オレ」


 レンにとっての疫病神―――ミライとエルザが、小隊の仲間として入っていた。


 そのことに嘆き、レンは地面に四つん這いになって項垂れた。


「やったぁ。またみんなといっしょだぁ」


「はい! ミライくんと一緒で、ワタシも嬉しいです!」


「スゴい偶然だよねっ★」


 一方で、ミライ、アオイ、エルザは、小隊としても一緒になれて喜んでいた。


「………」


 もう一人のメンバーであるサクラは、小さな背中に黒弓を背負っていて、関心がなさそうに地面をボーッと眺めているだけだった。


 その時、ハッと何かに気づいたレンは、勢いよく顔を上げる。


「ちょ、ちょっと待てよ、草壁教官っ! 空宮をリーダーって正気かよ!? あんな人をからかって、バカにしてばっかで、そんな戦闘狂のヤツに務まるわけがねぇって!? 考え直せよ!」


「ニャハッ★」


 レンに鋭く指を差されて言いたい放題言われても、エルザは痛くも痒くもない。


 ただ八重歯を見せて、いつもの明るい笑顔を浮かべるだけだ。


 それにムカついたレンは、牙のように尖った歯で歯軋りしてエルザを睨みつけた。


 目も当てられないと、イッキはそっと瞼を閉じる。


「お前の言い分もわかるが、空宮にはリーダーを張れるだけの実力は備わっている。……悔しいがな。だが、時期にお前も目の当たりにするはずだ―――空宮の力を」


「―――!?」


(そこまで言わしめんのか、空宮の才能は……! でも、空宮の指示に従うのは癪だし、何より……)


 隊のメンバーに違和感を持ち、レンは立ち上がってそれをイッキに問う。


「だったら、なんでこのメンバーなんだよ!? オレたちが友達だからって、こんな風にしたのか? 小隊としてのバランス、ちょっとは考慮しろよ!」


「いや、考えているが? 俺がそんな浅はかな理由で編成するわけがないだろう。このメンバーにしたのは、トップ2(ツー)である空宮と星無ほしなしの足枷として―――ワースト2(ツー)である佐伯と朽葉くちはを入れることで、他の小隊と実力差が出ないようにするためだ」


 ドカーン、とレンとアオイに爆弾が落ちてきたような衝撃が全身に走る。


 明かされた真実は、それほどまでの威力があった。


「ワースト2(ツー)!? オレと……!」


「ワタシが!?」


 レンとアオイが自分自身を指差すと、イッキは「ああ」と頷いた。


「どうして、ワタシたちがワースト2(ツー)に……」


 あっ、とアオイは何か思い当たる節があった。


 それをイッキに伝える。


「もしかして、ワタシたちをワースト2(ツー)にしたのは……体力不足が理由ですか?」


「訓練初日の時のか……! オレと朽葉くちはだけ、メチャクチャ遅かったからな……」


 アオイの憶測が正しいと思い、レンはイッキへ反論する。


「オレたちが遅れたのは、ミライと空宮がペース上げたせいだ! 草壁教官も知ってんだろ? アイツらに煽られたんだから」


「確かに煽られたな、しつこく」


 その時のことを思い出したのか、いつも険しいイッキの顔は、その色をより濃くする。


「ですが、あれ以降ワタシたちは、遅れずにちゃんとついて来れています! 体力不足ではありません! もう一度、再評価をお願いします! ……って、それだとワタシ、ミライくんと違う小隊にされるじゃないですか~~~っ!?」


 ワースト2(ツー)という評価が不当だということが先行して、再評価された先でミライと同じ小隊になれないことに気づく。


 アオイは頭を抱えて嘆いた。


 そんな中、イッキは冷静に告げる。


「いや、再評価しても結果は変わらない。そもそも、お前たちをワースト2(ツー)にしたのは、体力不足よりも致命的なことが理由だ」


「「致命的?」」


 同時にオウム返しをして、首を傾げるレンとアオイ。


 二人は体力不足ではないし、客観的に見ても、身体能力だって110名いる候補生の中でも上位に食い込んでいるはず。


 そして『魔晶器ましょうき』に魔力を送ることができているため、魔力をコントロールする技術―――≪魔装≫に関しても特に大きな問題はない。


 何が致命的なのか、まるで見当がつかない。


 しかし、それでもイッキは二人の疑問に「そうだ」と頷く。


 そしてついに、レンとアオイの致命的な弱点を告げたのだ。


「―――お前たちが未だに、≪魔晶術ましょうじゅつ≫を使えないからだ」


「ワタシたちだけ、ですか……? そんなはずは……あと10人くらいいたと……」


「そ、そうだぜ! オレたち以外にもいるぞ、使えねぇヤツ!」


 悪魔と契約し、『魔晶器ましょうき』を手に入れて早一ヶ月。


 そして、候補生となって訓練を始めて二週間。


 その間に、候補生たちは≪魔晶術ましょうじゅつ≫を発動するための訓練を各々行い、その力に目醒めた。


 しかし、レンとアオイを含めた十数人だけ、未だに≪魔晶術ましょうじゅつ≫が使えなかった。


 その者たちと比較して、レンとアオイは実力的には勝っていると自負しており、さらに自分たちがワースト2(ツー)であることの疑念が深まった。


「―――いや、お前たちだけだ。お前たちが言っているソイツらは、昨日≪魔晶術ましょうじゅつ≫を発動するところを俺はこの目で見た」


「嘘だろっ!?」


「本当ですか!?」


 驚愕して、レンとアオイは思わず声を上げた。


 すると突然、レンとアオイの前に二人の候補生の少年が現れる。


「嘘じゃないし、ホントだ。お先に≪魔晶術ましょうじゅつ≫使えない組を脱却させてもらった、佐伯! あ、朽葉くちはさん。あとで俺が≪魔晶術ましょうじゅつ≫のやり方教えてあげるね? じっくり丁寧に……」


「佐伯に至っては、悪魔から自我を取り戻した期待のルーキーだってのに、意外と大したことないんだな! あ、朽葉くちはさん。頼るなら、俺の方がいいよ? スッゴい上手いから……色々と」


 その二人の少年は、元≪魔晶術ましょうじゅつ≫使えなかった組だ。


 しかし今は、≪魔晶術ましょうじゅつ≫が発動できるようになったことで、すっかり天狗になっていた。


 憎きイケメン(レン)はとことんバカにして、美人アオイにはとことん優しくして。


「それは、その……」


「―――テメェら、好き勝手言いやがって……! どっか行きやがれ!」


 困っているアオイの助け舟を出すために、レンは特技の怒号を飛ばす。


 その少年二人は笑いながら、レンの前からシュンッと立ち去った。


 その場面に周囲から、クスクスと笑いが起こった。


 それを耳にして、


(クソッ、アイツらも笑ってるコイツらもバカにしやがって……! ゼッテェ≪魔晶術ましょうじゅつ≫できるようになって見返してやる!)


 奥歯を噛みながら拳を強く握って、レンは密かにそう決意するのだった。


「でも、最終試験っていっても、この小隊でシャドウを倒すってだけだろ? 楽勝だな!」


「それな! だって私たち≪魔晶術ましょうじゅつ≫使えるようになって、スパイダー・シャドウもやっと倒せるようになったし! 最終試験っていう割に、レベル低すぎ!」


「最終試験、余裕で突破して! 俺たち全員、幻滅師エクソシストになるぞ!」


 候補生から緊張感がなくなり、ワイワイとハシャぎだす。


 訓練当初は、シャドウですらあれほど恐怖していたというのに、二週間という短い訓練期間で飛躍的な成長を遂げ、スパイダー・シャドウを≪魔晶術ましょうじゅつ≫によって単独で倒せるくらいの実力を身につけた候補生。


 彼らの自信は、きっとそこから来ているのだろう。


「―――お前たちは勘違いしているようだが、最終試験でお前たちに倒してもらうのはシャドウではないぞ」


 イッキが告げた一言は、浮かれる候補生をあっさりと沈黙させた。


「え? じゃあ、何倒すっていうんだよ……」


「我々幻滅師(エクソシスト)には、シャドウともう一つ、殲滅すべき人類の敵がいる。その名は―――天使だ」


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