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幻想終末の欠落者  作者: あした
【第三章】隊結成
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第二十七話 小隊

 大聖堂での礼拝から数時間が経ち、現在時刻は正午。


 天気のいい、初回の訓練をした場所とは違う場所にて、教官であるイッキの前に110名の候補生が整列していた。


 その時、レンは前列に並ぶ―――ボーッと俯く紫紺の少女の後ろ姿を眺めていた。


(せめて名前も聞きたかったし、礼も言いたかったけど……)


 レンの視線が、少女の顔から隊服を盛り上げる、豊かな胸へと吸い寄せられる。


(ダメだ……! やっぱ、あん時のアレが頭から消えてくんねぇ……!)


 少女の胸が目の前に現れた時の光景を思い出し、レンは少女から顔を逸らして密かに赤面した。


 あれから数時間経ったのだが、そんな程度では……少女のド迫力な胸のことなど忘れられるわけがない。


 何せレンは、思春期真っただ中なのだから。


 少女の胸は一生、レンの脳に刻まれ、これから悶々としたまま生きていくのだろう。


「―――どうしたんですか?」


 凛とした声。


 思わず、反射的にそちらへ振り向いてしまうレン。


 見れば、隣にいたアオイが不思議そうにレンを見つめていた。


朽葉くちは……ど、どうしたってどういうことだよ? オレは、いつも通りだぜ?」


 作り笑顔で、レンは咄嗟に誤魔化した。


 断じてアオイに言えるわけがない。


『少女の胸が気になってしょうがない』、だなんて。


 そんなことをもし言ったりしたら、即行でアオイに嫌われることは確定だ。


 それだけは、なんとしてでもレンは避けたかった。


 ———絶対に。


「そうですか……なら、よかったです。でも、もし何か悩み事があるなら、いつでもおっしゃってください。ミライくんとは違って、ワタシでは頼りないかもしれませんが―――レンさんの力になりたいです」


 ふふっ、と最後にアオイは笑みを浮かべる。


 まるで女神のように美しい笑みで、光り輝いていた。


 その光を浴びたレンは、無我の境地へ至り―――ある答えに辿り着く。


「―――朽葉くちはの笑顔がありゃ、『心頭滅却』なんて必要ないんだな……」


 悟りを開いたような顔で、レンはポツリと言葉を零す。


 少女の胸は一生、レンの脳に刻まれ、これから悶々としたまま生きていく……はずだったが、それは否。


 アオイの光によって、レンの脳を蝕んでいた『少女の胸』は消え、解放された。


「『心頭滅却』……?」


 しかし、少年が煩悩から解放されたことなど、少女が気づくわけもなく―――。


 レンの穏やかな顔を見て、アオイは一人キョトンと小首を傾げた。



「―――そろそろ頃合いか」


 呟き、イッキは候補生に語りかける。


「お前たち一人ひとりに、ある程度、実力が身についてきた。これからの訓練は、最終試験に向けて実践形式で行う。つまり、お前たちは幻滅師エクソシストと同じ―――五人で一小隊を結成し、その者たちと最終試験合格を目指してもらう。その編成を俺が考え、またリーダーを決めた。今からそれを発表する」


 候補生はゴクリと固唾を呑んで、緊張しながらもワクワクと興奮を抑えられないといった様子。


 けれど、レンはそんな浮かれた気配など一切なく、ただただ真剣な顔つきをしていた。


(仲間……一緒にシャドウと戦って、互いに助け合って、命を預け合う大切なヤツら。それが、今からオレにできる……。絶対、守ってみせる。命懸けで、何があっても。誰一人、オレの目の前で死なせやしねぇ―――!)


 決意する、もう二度と大切な人を目の前で失いたくないレンは。


 一度、大切な人(両親)を失ったレンは、目の前で誰かが死に、殺されることが許せない。


 だから、己の命を全て懸けて仲間を守ると決意した。


 けれど、やはりレンも年頃の少年なワケで―――


(でも、オレの仲間になるヤツってどんなヤツなんだろう? 気になるぜ……。でも、できるなら朽葉くちはと一緒がいいなぁ。ミライと空宮とだけは絶対に嫌だ。つえぇけど、アイツらに振り回されると、ロクでもねぇことになるからな。心臓が持つ気がしねぇ。ってか、守る意味も義理もねぇんだけど……)


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