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幻想終末の欠落者  作者: あした
【第一章】契約
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第十四話 嘘

魔晶器ましょうき』を手にした契約者によって、悪魔に取り憑かれた憑依者による大聖堂内の暴走は鎮圧された。


 ヌルの指示でイリス教徒たちが大勢入り、次々と憑依者を運んでいった。


 ついでに、ヌルがふるいにかけようと気絶させた彼らも。


 それを終えて今、壇上に続く階段の前に契約者たちがズラリと並んでいた。


 自分たちを見下ろす、ヌルを上目に睨みつけて。


「いやー、皆さん。無事『魔晶器ましょうき』の悪魔と契約し、契約者となって試験に合格でき、おめでとうございます。さすが、お見事です」


「―――お見事です、じゃねぇだろ!」


 何事もなかったように称賛の言葉を贈るヌルに、突如としてレンの怒声が響き渡る。


 その頭には包帯が巻かれていた。


 ケガをしているレンを見兼ねて、イリス教徒が手当てしてくれたのだ。


 レンの言い放ったその言葉は、皆の思いを代弁する総意そのものだった。


「ん? ああ、君は悪魔に取り憑かれながら自我を取り戻すという、20年にも及ぶ入隊試験で史上初の生還を果たした佐伯レンさんですね? 君は面白い、中々の逸材です……」


「「「―――!?」」」


 ヌルに認められたレンが、そして悪魔から自我を取り戻したと聞いた契約者らが驚愕する。


「どうして、オレの名前を……!?」


「信仰者の顔と名前を覚えるのは、大司教の右腕として当然のことですから。……佐伯レンさん、いいえ、皆さんが怒っていることはあのことですね? ―――僕が、憑依者を殺すように指示し、挙句には虚偽したことについてですよね?」


「あぁ、そうだ。―――憑依者を殺す必要なんか、どこにもなかったんだ」


 レンはヌルを睨みつけて、あのことを思い出す。


 先刻、憑依者の信じられない光景を見た時のことを。


『……うっ。あれ……俺はさっきまで一体、何を……』


 死んだはずの憑依者の巨漢―――いや、巨漢が上体を起こした。


 頭に手を当て、何があったのかわからず困惑している様子だ。


『レンさん、あの方、生きて……!』


『あぁ……! 取り憑かれてる間の記憶はねぇみたいだけど―――間違いなく生きてる!』


『ニャハハッ★ 言ったでしょ、二人ともっ★ エルちゃん、ぶっ殺してないってっ★』


 続けて、エルザはこう言った。


『それと、憑依者を元に戻す方法がわかったねっ★』


 巨漢を見ていたレンとアオイは、エルザに視線を向ける。


 二人の表情は、驚き一色に染まっていた。


『なんだよ、その方法って……』


『簡単な話だよっ★ つまりね―――』


 あの時エルザが言ったことを、現在のレンがそっくりそのまま口にした。


「憑依者を元に戻す方法は、殺すことじゃなくて―――『魔晶器ましょうき』から手を離させること。それをテメェは隠して、オレたちを騙しやがった!」


 エルザの言っていたことは真実で、契約者たちは憑依者から『魔晶器ましょうき』から手を離させることで元に戻すことに成功した。


魔晶器ましょうき』のみを重点的に狙った攻撃をしたり、腕を取って直接関節技を決めたり、様々な方法を駆使して。


 だが、悪魔から解放した直後、その者たちは気絶した。


 ―――限界を超える力を、行使し続けた反動によって。


 はぁ、とヌルは溜息をついた。


 その溜息は真実を認めたものだが、反省の色はなく……呆れしかなかった。


「僕がああ言ったのは、何も意地悪をするためじゃありません。ああ言わなければ、皆さんは覚悟ができず、極限状態に追い込むことができないと思ったからです。『魔晶器ましょうき』を取り上げろ、だなんて指示だと、あの状況を作り出すことができませんから」


「オレたちを極限状態に追い込む? どうして、そんなことする必要があんだよ!?」


「―――ありますよ。そうしなければ……君たちは、力に目醒めませんから」


 レンの怒号に動じず、スーッと笑みの消えた表情でヌルが告げる。


 契約者は、己の『魔晶器ましょうき』に視線を移した。


 そして魔力を送って、もう一度、漆黒の得物に紅光を浮かび上がらせる。


 ……力が、漲る感覚があった。


 この力のおかげで、悪魔に魔力を吸い尽くされて殺される前に、憑依者を救うことができた。


 けれど、ヌルの思惑でその力に目醒めたと思うと悔しく、顔をしかめて俯いた。


 それをヌルは、睥睨しながら続ける。


「残酷といえど……僕の指示がなければ、皆さんは今、力を手にしていません」


 契約者は反論できない。


「その力がなければ、悪魔に取り憑かれた憑依者を救うことができず……死んでいました」


 契約者は反論できない。


「そもそも、皆さんは幻滅師エクソシストになるためにここへ来たはずです。そうですよね? 死ぬような恐怖も、大切な仲間の死も、切っても切れない呪縛そのものです。おまけに皆さんは、悪魔と契約している状態です。そんな心持ちでは、この先やっていけま―――」


 端から端までじっくりと契約者を見回しながら諭すヌルだったが、あるところで視線が釘付けになる。


「は?」


 と、間抜けな声まで口から出てしまった。


 ポカンと口を開けるヌルの視線の先には、刀身に紅光の線が浮かんだ白刀を掲げて観察する少年がいた。


「―――ん? なぁに?」


 そんなヌルの視線に気づいた、ミライが小首を傾げた。


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