1-75. 鎧の魔装
魔力はある。
疑似的な身体強化もできる。
魔力をまとって戦う“魔纏”も安定してきた。
正直、純粋な近接戦闘だけなら、
物理寄りの魔法少女にはそう簡単に負けないと思う。
――ただ。
魔法がない。
何度も練習した。
魔力を集めて、放つ。
そのイメージは分かる。
でも。
撃てない。
形にならない。
「……向いてないのかな」
小さく呟く。
魔法少女になれないなら。
せめて、魔法少女のように戦えないか。
ずっと考えていた。
そして思い出したのが、
前世の知識にあったアニメや漫画。
武器が鎧に変わる装備。
防御と強化を同時に成立させる、合理的な形。
「理屈は通ってる」
問題は――
作れるかどうか。
勢いで設計して、
勢いで組んで、
勢いで魔力回路を通してみたら。
「……できた」
思ったより、あっさり。
完成したのは三種類。
大剣型
バトルメイス型
曲刀型
どれも魔力伝導は良好。
強度も十分。
自信作だ。
「……試すか」
誰もいないラボの奥。
一番無難そうな大剣を手に取る。
深呼吸。
「――セットアップ」
魔力を流す。
次の瞬間。
光。
視界が白く染まる。
「うわっ……!」
包まれる感覚。
装備が展開していく。
そして――
変身。
光が晴れる。
「……」
鏡を見る。
沈黙。
「……え?」
そこに立っていたのは。
戦乙女のような装備。
白銀の装甲。
長い飾り布。
整ったシルエット。
――ただし。
装甲面積が、少ない。
「……これ……」
ビキニアーマーだった。
しばらく固まる。
「……えぇ……」
かっこよさと困惑が同時に来る。
防御力は高い。
魔力循環も理想的。
でも。
「……これ、ただの変態じゃねーか!!」
静かに結論。
解除。
深呼吸。
「……たまたまだよな」
次。
バトルメイス。
セットアップ。
光。
――白。
鏡を見る。
「…………」
バニーガールだった。
純白。
なぜか完成度が高い。
「……方向性、どうなってるんだ」
さらに次。
曲刀。
光。
布。
装飾。
露出。
「……踊り子……?」
アラビアンナイト風。
機動力は高そう。
でも。
「……落ち着こう」
解除。
三つ並べる。
性能はいい。
本当にいい。
魔力効率も高いし、
身体補助も優秀。
ただ。
「見た目がなぁ……」
男の自分が使う以前の問題として。
「女の子でも、好み分かれそう……」
しばらく考える。
腕を組む。
そして。
「……封印しよう」
鎧の魔装シリーズは、
ラボの奥へ静かに運ばれた。
布をかける。
存在ごと隠すみたいに。
(……これ、もし受付の人たちに見つかったら終わるな)
いつか。
誰かに必要とされる日が来るのか。
それは、まだ分からない。
でも。
「発想自体は、悪くない」
次はもっと実用的に。
もっと自然に。
そう小さく決意して、
綾芽は設計ノートを開いた。
まだ道の途中。
魔法がなくても。
届く方法は、きっとある。
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