表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/75

1-70.職人は、その日ひとつ約束した

 ――午後。ラボ前。

 

 次の予約まで、少し時間があった。

 

 工具を拭いて、魔力回路のログを確認して、扉の横に立つ。

 

 その時。

 

 エレベーターが開いた。

 

 降りてきた人を見て――

 

 思考が、止まった。

 

(え)

 

 白。

 

 最初に浮かんだのは、それだった。

 

 雪みたいに柔らかい雰囲気。

 なのに、芯がある。

 

 髪が揺れる。

 歩き方が静か。

 魔力が、澄んでる。

 

(ちょっと待って)

(なにあれ)

(なにあれ!?)

 

 ――生みことお姉ちゃんだ。

 

 やばい。

 

 超ど真ん中。

 

 心臓が跳ねた。

 

(みことお姉ちゃん、超可愛い!!)

(いや待って、可愛い過ぎる!!)

(パネェ!!!)

 

 脳内がうるさい。

 

 工具を持っていなくてよかった。

 絶対落としてた。

 

 近づいてくる。

 

 やめて。

 

 まだ心の準備が。

 

「あの……」

 

 声。

 やわらかい。

 

 終わった。

 

(みことお姉ちゃん、マジ天使!!)

 

「綾芽君、ですか?」

 

 上目遣い。

 距離、近い。

 

 無理。

 

(みことお姉ちゃんは神!!!)

 

 でも表情筋は仕事した。

 

 ぱっと顔を上げる。

 

 満面の笑顔、発動。

 

「そうです! なにかご用ですか!」

 

 よし、平常運転。

 

 完璧。

 

 内心?

 

 大惨事。

 

「武器を見てくれるって聞いて……」

 

 もちろんです!!

 世界のすべてを調整します!!!

 

 とは言えないので、

 

「はい! 僕です!」

 

 ニコニコ。

 とにかくニコニコしておく。

 

 子供っぽく見える?

 

 上等。

 

 今はそれでいい。

 

「とりあえず、中へ。お話しききます!」

 

 ドアを開ける。

 

 丁寧に。

 

 いつもより三割増しで丁寧に。

 

(落ち着け)

(落ち着け俺)

(職人モードに入れ)

 

 ラボに入る。

 

 振り向く。

 

 ……いる。

 

 当たり前だけど、いる。

 

(破壊力、高すぎない?)

 

「みことお姉さんは、どんな感じにしたいですか?」

 

 名前は、さっき受付ログで見た。

 

 完璧な導線。

 

 偶然を装うの、大事。

 

「調整がすごいって聞いたから……それで、来てみたんだけど」

 

 来てくれた!

 

 来てくれた!!

 

(ありがとうございます世界!!)

 

 テンションが天井を突き破りそうなので、

 別方向に逃がす。

 

「今なら、好きな武器にできますよ!」

 

「え?」

 

「二本つけます!」

 

 言ってから思った。

 

 ちょっと浮かれてる。

 

 でも止まらない。

 

「さらに、好きな形で!」

 

 笑顔。

 

 悪気?

 

 ゼロ。

 

 ただしテンションは限界突破。

 

「……と、とりあえず。調整でお願いします」

 

 ですよね。

 

 危ない危ない。

 

 職人に戻れ。

 

 

 作業開始。

 

 触れた瞬間、分かる。

 

(強い)

 

 魔力の質がいい。

 

 流れが綺麗。

 

 無駄がない。

 

 それに――

 

(この人、絶対死なせちゃダメなタイプだ)

 

 理由は説明できない。

 

 でも、確信した。

 

 気合いを入れ、

 材料に魔力を入念に馴染ませる。

 

 芯になる部分に材料を足しながら回路を整える。

 

 最適化しながら歪みを消す。

 

 出力を底上げする。

 

 魔力を通す。

 

 馴染む。

 

 ……いい。

 

 かなり、いい。

 

 今までで、最高の出来だ。

 

 杖を渡す。

 

「……なにこれ」

 

 驚いてる。

 

 よし。

 

 内心、ガッツポーズ。

 

「あ、一個だけ注意です」

 

 指を立てる。

 

「名前つけるときは、慎重に。笑」

 

 本当は笑い事じゃないけど。

 

 まあ、それは後でいい。

 

 顔を上げた彼女と、目が合う。

 

 その瞬間。

 

 自然と、笑顔が消えた。

 

 言わなきゃいけない。

 

 これは、職人として。

 

「大丈夫です」

 

 静かに。

 

「その杖。僕が調整したから」

 

 一拍。

 

「絶対、みことお姉さんを守ります」

 

 約束だ。

 

 武器を作るって、そういうことだ。

 

 守れない武器は、失敗作だから。

 

 彼女が固まる。

 

 しまった。

 

 ちょっと重かったか?

 

 ――次の瞬間。

 

 笑顔、再起動。

 

「じゃ、完成です!」

 

 空気を軽くする。

 

 大事。

 

 

 ラボを出ていく背中を見送る。

 

 扉が閉まる。

 

 沈黙。

 

 そして。

 

 小さく、息を吐いた。

 

(……やばい)

 

 額を押さえる。

 

(みことお姉ちゃん、破壊力えぐい)

 

 でも。

 

 工具を手に取る。

 

 次の調整に備えながら、思う。

 

(絶対守る)

 

 あの人は。

 

 俺の武器で。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます!


「面白かった」

「続きが読みたい」

と思っていただけたら、

ぜひ下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると嬉しいです!


ブックマーク・感想も更新の励みになります。


応援いただけるととても嬉しいです。

次話も頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ