1-68.○○○○○
10歳になった。
ルクシエルと合体してから、
俺は協会内で、だいぶ自重をやめた。
理由は単純。
強くなったから。
身体強化も魔纏も安定した。
もう、
手加減しなくても、
だいたい誰も壊れない。
たぶん。
だから最近は――
研究だけじゃない。
戦闘訓練もする。
武器も直す。
困ってる魔法少女を見ると、
つい調整してしまう。
最初は一人。
次は二人。
気づけば口コミ。
「武器、見てもらえますか?」
「新しく作れるって本当ですか?」
新規依頼は剣。
次に弓。
たまに槍。
正確には知らないけど――
現役魔法少女の武器、
半分くらい俺が触ってる気がする。
たぶん。
わりと怖い。
その日も訓練後。
「ねえ、綾芽くん」
知り合いの魔法少女が寄ってくる。
「勧誘してくる妖精、いるでしょ?」
「ああ、シルヴィエルね」
「あれ、衣装は作れても武器は作れないんだって」
「そうなんですか」
少し間。
「昔の魔法少女って、素手で戦ってたらしいよ」
「……うわ」
「武器持ってても市販品。
魔力が乗らないから、ほぼ意味なし」
「死亡率、かなり高かったって」
「無茶だ……」
沈黙。
彼女は少し笑う。
「だから今の武器、
綾芽くんが調整してくれてるの、本当に助かってる」
「ありがとうございます」
そこで。
俺は、ふっと息を吐いた。
独り言みたいに漏れる。
「……武器も渡せないのに、
偉そうにしてるのって、正直気に入らないですね」
いつもの調子じゃない。
一瞬だけ。
素の顔に戻る。
声が、ほんの少し低くなる。
空気が変わる。
魔法少女が固まる。
「……え?」
そして。
綾芽は遠くを見るように、ぽつりと続けた。
「次……シルヴィエル見かけたら、
ぶち転がすって言ってしまいそう……」
沈黙。
凍結。
「……えっ」
あ、やばい。
綾芽、我に返る。
「あ、いや冗談です!冗談です!!」
急にいつもの笑顔。
誤魔化す。
その瞬間。
――壁の陰。
シルヴィエル。
いた。
全部聞いてた。
硬直。
完全硬直。
(死ぬ)
翌日から、
妙なことが起きる。
シルヴィエルを見ない。
誰も見ない。
本当に見ない。
そして――
勧誘時、
最初から武器が配られるようになった。
武器庫持ち出しログ、急増。
協会、ざわつく。
理由。
簡単。
シルヴィエルが怯えた。
(あの子に見つかったら殺られる)
完全に誤解である。
それ以来。
勧誘には必ず武器同梱。
協会では隠密行動。
綾芽を見かけると物陰ダッシュ。
たまに天井裏。
たまに換気口。
妖精とは。
結果――
死亡率低下。
適合率上昇。
制度改善。
主任、後日。
「……皮肉ですが成果が出ています」
「そうなんですか?」
本人だけ無自覚。
その頃、協会では噂。
「最近シルヴィエル見ないよね」
「魔王子の気配で逃げるらしい」
「目が合うと消えるって」
完全に都市伝説。
なお本人は。
今日も普通に武器調整している。
そして思っている。
「俺、何もしてないんだけどな」
……本当に?
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