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1-66.いつもの挨拶と、普通すぎる異常

 魔法少女協会・受付

 

「おはようございます!」

 

 来た瞬間、空気が一段明るくなる。

 

 黒髪。

 背筋まっすぐ。

 まっすぐな視線。

 まっすぐな声。

 

 受付のお姉さんたち、反射で姿勢が良くなる。

 

 梓は一瞬だけ目を細めた。

 

(今日も精度が高い)

 

 雫は、無意識に立ち上がりかけて――やめる。

 

(落ち着いて、私)

 

 凛は一瞬だけ視線を上げる。

 

(……敵意なし。危険性なし。だが存在圧あり)

 

 すず。

 

「わ〜!おはよ〜!」

 

 一番最初にHPを削られるタイプ。

 

(来た……)

(朝から致死量……)

(なんで元気なのこの子……)

 

「ラボ主任さんは、どこにいますか!」

 

 満面の笑顔。

 疑いゼロ。

 打算ゼロ(当社比)。

 

 雫が端末を見るより早く、梓が答える。

 

「第三ラボよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 ぺこり。

 

 そのまま、くるっと振り返って――

 

 軽く手を振る。

 

「それでは、失礼します!」

 

 去っていく背中。

 

 静寂。

 

 

 すずが最初に崩れた。

 

「……ねえ」

 

「うん」

 

「今の挨拶、優しさ盛ってなかった?」

 

 梓、即答。

 

「盛ってた」

 

 凛も短く言う。

 

「出力が昨日より高い」

 

 雫、小声。

 

「……語尾、少し柔らかくなってましたね」

 

 すず、机に突っ伏す。

 

「最近、挨拶の完成度上がってない?」

 

「上がってる」

 

「明らかに上がってる」

 

「レベルアップしてる」

 

 梓がぽつり。

 

「たぶん調整してるわね」

 

「……可愛さを?」

 

「可愛さを」

 

 凛が静かに結論を出す。

 

「業務に支障が出るレベルだな」

 

 

 なお本人。

 

(よし)

(今日もいい感じに、あざとく出来たはず)

(当社比だけど)

 

 満足顔でラボへ向かう。

 

普通すぎて困るラボ主任

 

 第三ラボ。

 

「材料、分けてください!」

 

「はいはい……何を作るの?」

 

「普通の短杖です!」

 

 主任、眉を上げる。

 

「……普通?」

 

「はい!」

 

(この子の“普通”は信用ならん)

 

 不安を感じつつも、材料を選んで渡す。

 

「……まあ、いいけど」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 数時間後。

 

 コンコン。

 

「失礼します!」

 

 綾芽、両手で短杖を差し出す。

 

「できました!」

 

 主任、受け取る。

 

 見た目。普通。

 重さ。普通。

 

 魔力の流れ――

 

「……」

 

 沈黙。

 

 もう一度見る。

 

「……普通ね」

 

 綾芽、内心ガッツポーズ。

 

(よし!)

(我ながら完璧!)

 

 主任、首を傾げる。

 

「……普通すぎて困る」

 

「え?」

 

「加工痕がない」

 

「クセもない」

 

「流れが素直すぎる」

 

 綾芽、きょとん。

 

「普通じゃダメですか?」

 

「ダメじゃないけど……」

 

 一拍。

 

「八歳児が作る“普通”じゃない」

 

 短杖を返す。

 

「これ、量産型の見本に混ぜたら誰も気づかないわよ」

 

「やった!」

 

「褒めてないからね?」

 

 主任、こめかみを押さえる。

 

「……粘土遊びみたいに作ってるって言ってたわよね」

 

「はい!」

 

「……聞かなかったことにする」

 

 にこにこ。

 

「また作っていいですか!」

 

「……ほどほどにね」

 

 主任、ため息。

 

(普通の顔して)

(いちばんおかしいことするタイプだ、これ)

 

その頃、受付

 

 綾芽がラボから戻る。

 

「失礼しました!」

 

 ぺこり。

 

 すず、小さく手を振る。

 

「また来てね〜!」

 

 去る。

 

 静寂。

 

 

 すず、即座に言う。

 

「……ねえ」

 

 梓「なに」

 

「ちょっと得意げじゃなかった?」

 

 雫、頷く。

 

「……誇らしそうでした」

 

 凛、短く。

 

「成功した顔だな」

 

「……何作ったんだろ」

 

「さあ」

 

 梓が言う。

 

「聞きたい?」

 

 すず。

 

「聞きたいけど怖い」

 

 凛。

 

「聞かない方が平和だ」

 

 雫、小さく微笑む。

 

「でもきっと……誰かの役に立つものですよ」

 

 三人、少しだけ黙る。

 

 そして梓が締める。

 

「問題はそこじゃないのよ」

 

「え?」

 

「あの子にとっての“普通”が、どんどん更新されてること」

 

 沈黙。

 

 全員、同時に思う。

 

(将来が怖い)

 

 

 今日も協会は平和。

 

 ただし――

 

 “普通”の基準だけが、静かに壊れ続けていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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