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1-63. とりあえず全部の呪文を試した

 ――時は来た。


 俺は、


 今、この時のためにいる!

 


 深呼吸。

 


 そして叫ぶ。


「炎よ出ろ!」


 ……。


 出ない。

 


「水よ出ろ!」


 ……。


 出ない。

 


「風よ出ろ!」


 ……。


 出ない。

 


 沈黙。


「……」

 


 まだだ。


 まだいける。


 魔法少女には詠唱がある。


 なら、詠唱だ。


 綾芽は杖を構えた。


「ピピルム・ピピルム・プリリムパ!

 パパレマ・パパレマ・ドリミムパ!」


 堂々と叫ぶ。


「いでよ、風の刃!」


 ……。


 出ない。

 


「パンプム・ピンプム・パミポップン!

 ピンプム・パンプム・パミポップン!」


「いでよ、水の刃!」


 ……。


 出ない。

 


 まだだ。


 次だ。


「エロイム・エッサイム!

 エロイム・エッサイム!」


 杖を掲げる。


「我は求め、ここに願う!

 いでよ、炎!!」


 ……。


 出ない。

 


 静かだ。


 大丈夫。


 まだあわてるような時間じゃない。


 綾芽は気合いを入れ直す。


「黄昏よりも昏きもの

 血の流れよりも紅きもの」


 研究室の空気が妙に真面目になる。


「時の流れに埋もれし偉大なる名において

 我ここに誓わん!」


 ポーズも決める。


「我が前に立ち塞がるすべての愚かなるものに

 等しく滅びを与えんことを!」


「――ドラグ・フレア!」


 ……。


 出ない。

 


 沈黙。


 ――まだだ!まだ終わらんよ!!


「……最後の手段がある」


 綾芽は無言で奥の更衣室に向かった。


 しばらくして。


 戻ってきた。


 ――魔女帽子。


 ――魔女服。


 完全装備。


 形から入るだけでなく、

 完全に本気だった。


「本物の魔法使いは格好から違う」


 謎理論である。

 


 杖を天へ掲げる。

 


 深く息を吸う。

 


「黒より黒く闇より暗き漆黒に

 我が深紅の混淆を望みたもう。


 覚醒の時来たれり。

 無謬の境界に落ちし理。


 無行の歪みとなりて現出せよ!」


 一歩踏み込む。


「踊れ、踊れ、踊れ――


 我が力の奔流に望むは崩壊なり。

 並ぶ者なき崩壊なり。


 万象等しく灰塵に帰し、

 深淵より来たれ!」


 杖の先を突きつける。


 完全に主人公だった。


「これが人類最大威力の攻撃手段――」


 一拍。


「これこそが究極の攻撃魔法――」


 さらに一拍。


 綾芽、叫ぶ。


「エクスプロージョン!!」


 ――。


 …………。

 


 何も起きない。

 


 静寂。


 帽子だけ少し揺れた。


 綾芽はゆっくり杖を下ろす。


「……今のは、たぶん詠唱のノリが足りなかった」


 まだ諦めていない。


 がっくり項垂れる。

 


 綾芽は頑張った。


 めちゃくちゃ頑張った。


 呪文もポーズも衣装も完璧だった。

 


 でも。


 魔法は出なかった。

 


 つまり。


 綾芽は魔法少女ではない。

 


 魔法が出ないのは、

 当然と言えば当然だった。

 


 研究室は、今日も平和だった。

 

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