1-61.協会会議
魔法少女協会・非公開会議。
――議題:回収された試作品について。
会議室は静かだった。
緊張ではない。
説明を省略できる種類の静けさだ。
机の中央には、布で包まれた細長い物体。
誰も覗かない。
誰も触らない。
「では、報告します」
ラボ主任が口を開く。
「評価基準は、パープル・アイリスの標準装備。
出力、循環、応答性――すべて三倍」
「通常規格では?」
「約六・六倍です」
沈黙。
だが驚きはない。
主任が言うなら、それが事実だ。
「運用は?」
「不可能です」
「保管は?」
「不可能です」
議長が頷く。
「結論。当協会では管理できない。
よって――保護者返却とする」
異論なし。
即決だった。
誰かが小さく言う。
「……子供の工作にしては、過激だな」
主任は肩をすくめた。
「“普通の杖”ではありませんから」
命名も一瞬で終わる。
「試作段階だろう?」
「ええ」
「なら――試作第一号」
会議は、十分とかからずに閉じた。
数日後・自宅。
玄関の包みを見て、あやは吹き出した。
「……結局、うちに来るのね」
「おかえり、母さん」
現れた綾芽は、包みを見るなり頷いた。
「あー。やっぱり母さんとこに来たんだ」
「……知ってたの?」
「初めて作ったし。
扱える人、母さんくらいしか思いつかなかった」
満面の笑顔。
あやは頭を抱える。
「なんでこんなの作るのよ……」
「杖だけど?」
包みを開く。
中から、嫌な形の鉄が出てきた。
どう見ても――
バールのようなもの。
沈黙。
次の瞬間。
「なにこれ!」
「でしょ?」
二人同時に吹き出した。
「協会が持てないって言うわけね……」
「でしょ?」
――この時点では、まだ誰も気づいていない。
この武器が、
“試作”ではなく
完成品として判断されていたことに。
その意味を知るのは、
もう少し先の話になる。




