1-56.はじめての武器試作
本日、ラボ。
「よし」
今日は決めている。
――武器、作る。
先日。
母さんの武器を握ったときのことを、ふと思い出す。
(……あれ、なんだったんだろうな)
魔力は流れた。
それは覚えている。
でも――
思い返すと、少し妙だった。
最初に触れたとき。
確かに、普通の武器のはずだった。
母さん専用の杖だ。
俺の魔力に合わせて作られたものじゃない。
なのに。
魔力を流した瞬間、
まるで内側の抵抗が消えたみたいに、
急に通りが素直になった。
(……あの感じ)
思い出す。
最初は、少し引っかかった。
でも次の瞬間には、すっと流れた。
まるで。
杖のほうが、こちらに合わせて整ったみたいに。
(……最適化?)
偶然かもしれない。
でも。
もし、あれが偶然じゃないとしたら。
(最初から合わせて作れば、もっと良くなるんじゃないか?)
理由は簡単。
波長が合っていないなら。
「合わせればいいじゃん」
答え、即出た。
空手と同じだ。
無駄な力を抜いて、相手に合わせる。
今度は――武器に。
いきなり完成品に流すのは無理。
なら。
「素材の時点から慣らす」
加工前の素材に、少しずつ魔力を流す。
乗せる。
止める。
観察。
また、乗せる。
止める。
観察。
「……あ、今なじんだ」
素材が「おっ」って反応する瞬間が、分かる。
そこを逃さない。
削る。
叩く。
整える。
部品完成。
次は組み立て。
ネジを締めながら、流す。
角度を見ながら、流す。
(このへん、母さんの武器より素直だな)
カチ。
カチ。
――完成。
机の上に置く。
「……」
深呼吸。
「ジャジャン!」
はい、どーん。
試作第1号!!
バールのようなもの!!!
一見すると完全にバール。
どう見ても現場作業員。
工事現場が似合う。
しかし。
「いちおう、魔法少女用の杖です」
言い切る。
性能?
もちろん測った。
・魔力伝導率:母さんの杖の約3倍(標準杖の約6.6倍)
・応答速度:速い
・暴走:しない
・見た目:バール
完璧。
「よし、主任に見せよ」
---
技術棟・主任室
「失礼しまーす」
主任が顔を上げる。
「……また来たのか。今日は何を――」
机の上に置く。
ゴトン。
「……」
沈黙。
「えっと」
「武器、作りました」
主任、眉をひそめる。
「……バール?」
「バールのようなものです」
「……」
「魔法少女用の杖です」
「……は?」
説明開始。
「素材段階から魔力の波長を合わせて」
「流れを阻害しない構造にして」
「結果、標準杖の6.6倍くらい効率上がりました」
主任、無言で端末操作。
測定。
数秒後。
「……6.6倍?」
「はい」
「安定して?」
「はい」
「暴走なし?」
「今のところ」
主任、ゆっくり椅子に沈む。
「……ちょっと待て」
立ち上がる。
バールを持つ。
魔力を流す。
――光る。
「……通り、良すぎないか?」
「素材から慣らしてますから」
もう一度。
「……」
三度目。
「……」
静かに言った。
「君さ」
「普通の杖、作る気ない?」
「ありますよ」
「じゃあ、なんで最初がバール?」
即答。
「強そうだからです」
主任、天井を見る。
「……報告書、どう書こう」
「“試作杖一号”で」
「見た目は?」
「バール」
「……」
深いため息。
「協会、また変なの生んだな……」
俺は満足げに頷いた。
「はい」
――こうして。
性能6.6倍・見た目バール。
魔法少女用杖・試作第一号は、
正式にラボの測定台を占拠することになった。
なお主任はその日、
「今日はもう新規案件受けない」
と張り紙を出した。
(続く)
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