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2-25. 主任、三秒止まる(※協会の胃が死ぬ)

 魔法少女協会・技術棟。


 第三ラボ。


「……で?」


 ラボ主任は、机の前に立つ菖と綾芽を交互に見た。


「これは?」


 机の上。


 布を被せられた、やや物騒なシルエット。


 菖が、いつも通りの軽い調子で言う。


「ちょっと確認してほしくて」


「確認……?」


 主任、布を見る。


 嫌な予感しかしない。


(最近の“確認”は、だいたい碌なことにならない)


「……では」


 布をめくる。


 ――現れたのは。


 鉄のバット。


 しかも。


 鬼の金棒みたいに、


 全面イボ付き。


 完全武装。


 どう見ても殺意の塊。


 主任の脳内ログ:


 ・鉄のバット(トゲ付き)


 ・重量過多


 ・魔法少女用ではない


 ・というか凶器


 ・というか犯罪


「……」


 ここで――


 三秒フリーズ。


 1秒。


 瞬きが止まる。


 2秒。


 呼吸が止まる。


 3秒。


 魂が一回抜ける。


「………………」


 綾芽、素直に言う。


「第二形態です」


 菖、補足。


「勝手に進化しました」


 主任。


「………………」


 もう一度、魂が抜ける。


「……待ってください」


 ようやく声が出た。


「確認します」


「“進化”という言葉を使いましたね?」


「はい」


「武器が?」


「はい」


「勝手に?」


「はい」


 主任、ゆっくり椅子に座る。


 ギギ……。


「……第一形態は?」


 綾芽が答える。


「バールのようなもの」


「……でしょうね」


 主任、机を見つめたまま続ける。


「で、その第一形態は」


「通りが良くて」


「ええ」


「効率6.6倍でした」


「……ええ」


「で、今は」


 綾芽、指を立てる。


「出力、さらに三倍です」


「……」


 主任の胃が、キュッと鳴った。


「……合計で?」


 菖が即答。


「だいたい二十倍前後」


「……ですよね」


 主任、天井を見る。


「……協会、今日も平和だな……」


 完全に現実逃避。


 だが、仕事なので戻る。


「……触ります」


 恐る恐る、鉄のバットを持つ。


 重い。


 だが、持てる。


 魔力を――流す。


 ――ズン。


 空気が沈む。


 ラボの防音結界が、きしむ。


「……」


 主任、手を離す。


「……あの」


 静かな声。


「これ」


「はい」


「完全に“武器が使用者を選んでます”」


「ですよね」


「しかも」


 一拍。


「成長型」


 菖、にっこり。


「ですよね」


 主任、頭を抱える。


「成長型魔導武器は……」


「伝説級です……」


「量産不可……」


「制御不能……」


 綾芽、首を傾げる。


「でも、言うこと聞きますよ?」


「それが一番怖いんです」


 即答。


「“今は”聞いてる、が正解です」


 沈黙。


 主任、深く息を吸う。


「……結論を言います」


 二人を見る。


「この武器」


「協会では」


「管理できません」


「でしょうね」


「なので」


 机を指で叩く。


「これ以上、成長しないようにしてください」


 綾芽、即答。


「たぶん無理です」


「でしょうね!!」


 初めて声を荒げた。


 菖、肩をすくめる。


「だって」


「あの子、触るだけで最適化するのよ?」


 主任、胃を押さえる。


「……協会の胃が……」


 最後に、力なく言った。


「……ちなみに」


「第三形態、いつ来そうですか?」


 綾芽、少し考える。


「……エサをあげたら?」


「やめてください!!」


 主任、即座に叫んだ。


「エサ禁止!!」


「絶対禁止!!」


 その日。


 ラボ内の注意書きが一枚増えた。


 ・試作第一号に給餌禁止


 ・観察時は主任立ち会い必須


 ・胃薬常備


 なお――


 この注意書きは、


 一週間後に意味を失う。

 

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