2-24. 第二形態、勝手に解禁される
なんだかんだと言いながら。
菖は、綾芽が作った“バールのようなもの”を大事にしていた。
口では言うのだ。
「危ないから触らないで」
「保管よ。あくまで保管」
――だが実際は。
ちょいちょい触っている。
その日も、変身後の姿で思い出したように手に取った。
「……通り、もう一回だけ確かめとくか」
ほんの確認。
軽く魔力を流すだけ。
――スゥゥゥゥ……。
「……ほんと、通るわね」
抵抗がない。
引っかかりもない。
むしろ――馴染みすぎている。
「変な武器……」
そう呟いて、元の場所に戻した。
この時点では、何も起きていない。
……起きていないと、思っていた。
夕方。
綾芽が帰宅する。
靴を脱いだ瞬間、ぴたりと動きが止まった。
「……あれ?」
視線が、空間をなぞるように動く。
リビング。
棚。
空気。
そして、菖を見る。
「母さん」
「なに?」
一拍。
「今日さ」
「うん?」
「エサあげた?」
「……は?」
綾芽は真顔だった。
「いや。なんか――いてつく波動見たいなの出てる」
「なにその表現!?」
嫌な予感がして、菖は棚を見る。
布をめくる。
――ない。
代わりにあったのは。
鉄のバット。
しかも。
鬼の金棒みたいに、
全面イボ付き。
「……鬼の金棒?」
数秒の沈黙。
次の瞬間。
「っ、ふ……ちょっと待って無理」
菖が吹き出した。
「第二形態!?」
「家で!?」
「勝手に!?」
綾芽はうんうんと頷く。
「やっぱり」
「やっぱりじゃない!」
「通り、良くなったでしょ?」
「良くなりすぎ!!」
菖は笑いながら問いかける。
「……で。第三は?」
綾芽、少しだけ考える。
「さあ?」
「さあ!?」
そのまま武器へ手を伸ばす。
そっと触れ、魔力を流す。
――ドン。
空気が、低く震えた。
「……あ」
綾芽の目が細くなる。
観察する目だ。
研究者の目。
「これ……さらに」
一拍。
「出力、三倍」
「…………」
菖は天井を仰いだ。
「……あー」
深いため息。
そして。
「これもう――魔王杖になるかもね」
二人同時に笑う。
止まらない。
危機感?
ある。
でもそれ以上に――面白すぎた。
その日の夜。
棚の札が更新された。
危険物/成長中/エサ厳禁
なお――
この時点で、
まだ誰も気づいていない。
これは、
“完成前”の話である。
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