2-23. レッド・ローズ登録
紅羽は、綾芽に武器を渡されたあと、受付へ向かった。
カウンターに近づくと、お姉さんが顔を上げた。
「こんにちは。今日はどのようなご用件ですか?」
くれはは、少しだけ背筋を伸ばす。
「……魔法少女の、登録です」
それで通じた。
受付は頷き、引き出しから台帳を出す。
「では、お名前とコードネームをお願いします」
「分かる範囲で大丈夫ですよ」
――火宮 紅羽
――レッド・ローズ
書き終えると、受付はペンを置いた。
「登録が済みましたら、後日あらためて初期講習をご案内します」
くれはが顔を上げる。
「講習……ですか?」
「はい。基本的な注意事項と、活動時の連絡方法、それから――」
一拍。
「“無理をしないで戻る判断”について」
静かな声だった。
「武器や戦い方は個人差が大きいので一律には扱いません」
「協会は、管理と連絡の窓口が主な役割になります」
カタン、と台帳が閉じられる。
「これで登録は完了です」
「講習の日時は後ほど連絡しますね」
くれはは一瞬きょとんとしてから、小さく頷いた。
「……はい」
受付は最後に、にこっと笑う。
「困ったことがあったら、まずここに来てください」
「それが、協会の仕事なので」
その夜。
布団に入っても、くれはは眠れなかった。
目を閉じると、昼間の出来事が浮かぶ。
光。
言葉。
同意した瞬間。
(……私、魔法少女なんだ)
実感はまだ薄い。
体が軽くなったわけでも、
強くなった感じがするわけでもない。
なのに――戻れない気はしていた。
少しだけ、怖い。
何が出来るのか分からない。
何が出来ないのかも分からない。
失敗したらどうなるのかも、想像がつかない。
(向いてない、なんて言われたら……)
胸の奥が、きゅっと縮む。
――でも。
自然と、別の考えが割り込んでくる。
(男の子は、危ない)
この世界では、それが当たり前だから。
浮かぶのは一人だけ。
剣道場で隣に立っていた、幼なじみ。
真面目で、優しくて、
時々、無茶をする男の子。
(……綾芽)
強そうに見えるけど、放っておけない。
頭はいいのに、前に出るときは迷わない。
(あの子は、私が守る)
誰に言うでもなく、心の中で繰り返す。
それだけは、迷わなかった。
出来るかどうかは分からない。
怖くないわけでもない。
それでも。
(逃げない)
布団の中で、そっと拳を握る。
不安は消えないままだけど――
決意だけは、ちゃんとそこにあった。
(……大丈夫)
そう思って、
くれはは静かに目を閉じた。
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