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2-19. 太陽は考える前に走る(オレンジ・フレア)

 放課後。


 公園の隅。


 ぬいぐるみみたいな妖精が、草むらから顔を出した。


「よし……この子だ。今度こそ普通に――」


 その瞬間。


「セイッ!!」


 風が裂けた。


「ヤァー!!」


 回し蹴り。


「タァー!!」


 連続打撃。


「トゥッ!!」


 肘。


 膝。


 踏み込み。


 妖精、全力回避。


 転がる。


 跳ねる。


 奇跡的に全部避ける。


(し、死ぬ!!)


 逃げようとした瞬間。


「ドリャーーーー!!」


 衝撃。


 妖精、ぶっ飛んだ。


 地面を転がる。


 ヨロヨロ立ち上がる。


 視界が回る。


 次の瞬間。


 正拳突きが迫る。


 妖精、全力で叫ぶ。


「ちょっと待てーーーー!!!!

とりあえず話を聞いて!!!!」


 ピタッ。


 拳、止まる。


「……なに?」


 首をこてん。


 さっきまで殺意MAXだった人物とは思えない顔。


 日向向葵。


 通称、ひまり。


 妖精は息も絶え絶え。


「ご、ぼ……ま、ほ……うしょ……じょ……なら……いか」


 まともに喋れない。


 ひまり。


「なにそれ、おいしいの?」


 通常運転。


 妖精、必死。


「強くなれる!!」


 そこだけは言えた。


 ひまり、反応。


「強くなれるの?」


「なれるなれる!!」


「じゃあ、それでいい!」


 即決。


 妖精、慌ててコアと武器を渡す。


「これ持って!魔法少女協会で話聞いてね!!」


 そして。


「あと綾芽が――」


「ヒェッ!!」


 言い終わる前に逃走。


 全力。


 消えた。


 ひまりは、手の中を見る。


 小さなコア。


 そして。


 重い戦鎚。


「……でっか」


 ちょっと嬉しそうだった。


 ――魔法少女協会。


 受付。


 梓、雫、凛、すずが、書類を見ていた。


「……また直契約」


「説明受けてないタイプですね」


「最近多いねー」


「登録しましょう」


 ひまりは、普通に頷く。


「どうすればいいの?」


「まず、コアに名前を」


「名前?」


 少しだけ考えて。


 すぐ決めた。


「《オレンジ・フレア》!」


 コアが、強く光る。


「次、武器の名前」


 ひまりは戦鎚を見る。


 持つ。


 振る。


 重い。


 でも振れる。


 にやっと笑う。


「《フレアハンマー》!」


 炎の魔力が鎚に走る。


 受付が頷く。


「では、変身を」


 ひまり。


 深呼吸。


「オレンジ・フレア、セットアップ!!」


 光。


 炎色の粒子。


 体を包む。


 数秒後。


 そこには、


 オレンジを基調にした魔法少女。


 軽装。


 機動型。


 炎の線が走る装束。


 戦鎚を持つ。


 振る。


「……軽い」


 嬉しそう。


 受付が最後に聞く。


「戦う理由は?」


 ひまりは少しだけ考えた。


 ほんの一瞬だけ。


 それから。


 笑う。


「強くなりたいから!」


 一拍。


「あと――」


 少しだけ真面目な顔。


「守りたい人いるし」


 それだけだった。


 十分だった。


 太陽は。


 考える前に、


 もう走っている。


 それが――


 オレンジ・フレア。

 

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