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2-18. 若葉りおな (グリーン・リーフ)

 放課後。


 若葉弓道場。


 畳の匂い。


 木の床。


 静かな風。


 りおなは一人、的の前に立っていた。


 息を吸う。


 吐く。


 弓を引く。


 静かに放つ。


 ――パシッ。


 的の中央少し横。


「……うん」


 悪くない。


 弓を下ろした、その時だった。


 背後。


「ねえ」


 軽い声。


 振り返る。


 そこにいたのは――


 浮いている、小さな生き物。


 丸い。


 ぬいぐるみみたい。


 でも、ちょっとだけ現実じゃない感じ。


 沈黙。


 数秒。


 りおなは首を傾げる。


「……迷子?」


 生き物は胸を張る。


「違うよ!」


 そして急にポーズ。


「力が欲しいか!」


 間。


 りおな、瞬き。


「……急だね」


 でも逃げない。


 怖がらない。


 ただ、静かに聞く。


 生き物は続けた。


「守りたいものがあるなら、


 魔法少女になれる力をあげるよ!」


 指をびしっと向ける。


「さあ、どうする?」


 静かだった。


 道場の風だけが通る。


 りおなは少しだけ考える。


 守りたいもの。


 すぐ浮かぶ。


 弓道場。


 家族。


 友達。


 そして――


 同じ道場に通っていた、男の子。


 8歳からずっと一緒の幼馴染。


 危ないことを平気でやる子。


 無茶する子。


 でも、誰かのために動く子。


(……うん)


 小さく息を吸う。


 りおなは、静かに言った。


「守りたいもの、あるよ」


 生き物の目が少しだけ真面目になる。


「じゃあ?」


 りおなは頷く。


「なる」


 迷いは無かった。


「私、魔法少女になる」


 生き物が、小さな宝石付きのブレスレットを差し出す。


「名前を決めて」


「名前が鍵だよ」


 りおなは少し考える。


 風。


 葉。


 静かな森。


 そして。


「――グリーン・リーフ」


 息を吸う。


「グリーン・リーフ、セットアップ」


 光。


 柔らかな緑。


 風が巻く。


 制服が光に溶け、


 粒子が集まり、


 衣装になる。


 淡い緑の装束。


 軽いマント。


 風を受ける布。


 静かに変身完了。


 生き物が満足そうに頷く。


「武器もね」


 光が収束する。


 手の中。


 弓。


 細くて軽い。


 木の葉の模様。


「名前は?」


 りおなは迷わない。


「リーフウィスパー」


 弓が、すっと馴染む。


(……これ、好き)


 引いてみる。


 魔力の矢が自然に形になる。


 静か。


 軽い。


 呼吸と同じ。


 生き物はもう帰る準備をしていた。


「詳しい説明は魔法少女協会でね!」


「登録して研修受けて!」


「じゃ!」


 本当にそれだけ言って。


 消えた。


 沈黙。


 風。


 道場。


 りおなは弓を見つめる。


 それから、小さく頷く。


「……大丈夫」


 怖くないわけじゃない。


 強いわけでもない。


 でも。


 芯は決まっている。


「綾芽君は――」


 小さく。


 でも確かに。


「私が守る」


 弓を握る。


 風が静かに通った。

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