2-15. はじめての光(ファースト・シャイン)
綾芽君の奇行を目撃してから、何日が経ったある日。
先日現れたあの不思議生物とよく似た存在が、また私の目の前に現れたのは、ちょうど放課後のことだった。
残念ながら今回は、綾芽君の乱入はない。
見た目は、前世で見たアニメの魔法少女ものに必ず一体は出てくる、語尾が変なぬいぐるみ枠。
ただ、前に遭遇した生き物のような、得体の知れない胡散臭さは感じない。
……少なくとも、ちゃんと会話は成立しそうだった。
(とりあえず、ぬいぐるみ妖精って呼べばいいかな)
心の中でそう分類する。
ぬいぐるみ妖精は、自分たちの世界が今、脅威に晒されているのだと語った。
元々は一つだった存在が分裂し、その一部が暴走して、男性を攫っているという。
このままでは男性がいなくなり、人類が滅びる。
それを防ぐために、私の力を貸してほしい。
素質があるから、契約して魔法少女になってほしい。
……要約すると、そんな感じだ。
正直、話のスケールが大きすぎて実感は湧かなかった。
でも。
「綾芽君を守れるなら……」
それだけで、答えは決まっていた。
私が同意すると、ぬいぐるみ妖精は嬉しそうに頷き、黄系の宝石がついたネックレスを差し出してきた。
「これを使って変身して!」
どうやら、このネックレスが変身用の起動装置らしい。
名前を付けて、それをキーに起動するという。
「名前、か……」
少し考えて、私は口を開いた。
「《ファースト・シャイン》」
特別な理由があったわけじゃない。
ただ、なんとなく綾芽君のことを思い浮かべたら、そうなった。
起動方法は単純だった。
「名前の後に、“セットアップ”って付けるんだったよね?」
「そうだよ!」
ぬいぐるみ妖精が、無駄に元気よく答える。
……その見た目で語尾に何も付けないのは、ちょっとイラっとする。
とりあえず、言われた通りに。
「《ファースト・シャイン》! セットアップ!!」
綾芽君を、ほんの一瞬だけ思い浮かべながら。
宝石が光り、私の視界が白に染まった。
次の瞬間、なぜか服が消え、どこかで見たことのあるアニメ的変身シーンに突入する。
――あ、これ、そういうやつだ。
光が収まり、変身が終わった。
私は、自分の姿を確かめる。
「派手すぎたらどうしようって思ったけど……別に、普通だね」
淡い黄色のワンピースに、白の縁取り。
軽いフリルがあしらわれているけれど、動きにくさは感じない。
ちゃんと“魔法少女の服”だった。
それを見ていたぬいぐるみ妖精が、満足そうに頷く。
「次は武器の名前を決めて! 武器は名前を呼ぶと出てくるよ!」
武器はスティレット型の短細剣。
刺突専用の、細くて軽そうな剣だった。
「呼べば出る、ね……」
私は少し考えてから、名前を付ける。
「《シャイン・ニードル》!」
呼びかけると、手の中に、針のように細い短剣が収束する。
見た目通り、とても軽い。
軽く振って感触を確かめていると、ぬいぐるみ妖精が説明を始めた。
「妖魔には、魔力を込めた攻撃しか通じないんだ。だから基本はその剣を使ってね!」
なるほど。
「あとね、魔法を使う時は、その剣が制御を手伝ってくれるよ。触媒みたいなものだから、使う時は出しておくと楽だから!」
変身していれば、魔法自体は素手でも使える。
でも武器を持っている方が、安定して扱える――そんな感じらしい。
説明を終えると、ぬいぐるみ妖精は最後に一言だけ残した。
「魔法少女協会って組織があるから、登録してね! 詳しい説明はそこで!」
それだけ言って、妖精はつむじ風のように消えていった。
……説明、そこ雑すぎない?
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