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2-7. 受付は切り札

 魔法少女協会の受付は、普段は事務仕事をしている。


 だが――


 いざという時は、先頭に立って戦う。


 所謂、協会の切り札だ。


 元は最前線で戦っていた猛者である。


 現在は出動自体は少ない。


 だがチーム戦となれば全員が上澄み。


 つまり、強い。


 そんな受付カウンターの前で。


 綾芽は少し姿勢を正して立っていた。


 そして、


「雫お姉さんたちって」


「はい?」


「普段受付してるけど……相当強いんですよね」


 梓が目を細め、


 雫が微笑み、


 凛が腕を組む。


 すずは楽しそうに身を乗り出した。


「まあね」


 綾芽は真面目な顔で言う。


「ちょっと手合わせお願いできますか?」


「今の僕がどれくらい戦えるのか、見てほしいです」


 凛、即答。


「いいよ」


 少し口元が上がる。


「手加減しないよ?」


「はい!」


 すずも笑う。


「面白そうじゃん」


 梓が端末を閉じる。


 雫も頷いた。


 地下訓練場。


 開始。


 最初に動いたのは凛。


 正面から踏み込む。


 同時にすずが側面へ回る。


 梓は射線を取り、


 雫は拘束術式。


 四方向。


 完全連携。


 普通なら終わる布陣。


 だが。


 綾芽は半歩だけ横へずれた。


 凛の拳が空を切る。


 そのまま肩に触れ、


 軽く押す。


 凛、崩れる。


 梓の魔力弾。


 しゃがんで回避。


 すずの追撃。


 懐へ一歩。


 姿勢を崩される。


 雫の拘束。


 展開前の内側へ踏み込む。


 一秒後。


 四人とも床。


 沈黙。


「……え?」


 凛が真顔になる。


「今のは油断」


 空気が変わる。


 二戦目。


 最初から全力連携。


 だが。


 綾芽は走らない。


 歩く。


 攻撃を避ける。


 流す。


 触れる。


 崩す。


 派手な技は何もない。


 なのに。


 十二秒。


 全滅。


 今度は誰も喋らない。


 凛が静かに言う。


「……もう一回」


「最初から本気でいく」


 三戦目。


 魔力圧が地下に満ちる。


 梓が最大射線。


 雫が多重拘束。


 すずが遊撃位置。


 完全戦闘隊形。


 開始。


 三方向同時。


 攻撃と追撃。


 に合わせて拘束。


 完璧。


 綾芽は攻撃を躱したあとに拘束される。


 その瞬間。


 少し魔力を身体に纏う。


 綾芽が一歩だけ前へ出た。


 すると、


 拘束が崩れる。


 歩みは止まらない。


 一歩踏み込む。

 

 近すぎて攻撃できない距離。


 そのまま手を伸ばして押し込む。


 一人崩れる。


 そこから連鎖する。


 姿勢が乱れ、


 重心がずれ、


 視線に誘導され、


 全部が一瞬で崩された。


 その瞬間、綾芽の姿がぶれる。


 そして、


 気が付くと全員が天井を見ていた。


 十秒。


 全滅。


 沈黙。


 綾芽だけが、


 ぴょんと手を上げた。


「綾芽ウィン!!」


 受付組。


「……」


 数秒後。


 綾芽が急に胸を張る。


「フハハハハ!!」


 仮武器を掲げる。


「愚かな人間どもよ!!」

 

「世界の半分が欲しいなら!!」

 

「まずは、この私を倒してみせろ!!」


 沈黙。


 すず、吹く。


「ちょっと待って無理!」


 雫、壁にもたれて笑ってる。


 梓、顔を覆う。


 凛だけぽつり。


「魔王子じゃなくて」


「もう魔王じゃん」


 地下、爆笑。


 ただ一人。


 凛だけ拳を握っていた。


「……次は勝つ」


 綾芽は普通に戻って、


 にこっと笑う。


「また付き合ってくださいね!」


 その後。


 地下控室。


 四人は無言だった。


 最初に口を開いたのは雫。


「……ねえ」


「魔力、ほぼ使ってなかったよね」


 梓が頷く。


「魔力は一瞬だけ、あとは体術」


 凛が静かに言う。


「避けてるんじゃない」


「最初からそこにいない」


 すずが小さく呟く。


「全部、生き残る側の動きだった」


 沈黙。


 そして。


「ねえ」


「……あの子」


「本当に何歳?」


 誰も答えない。


 凛が最後に言った。


「次は」


 拳を握る。


「本気で勝ちにいく」


 でもその声は、


 少し楽しそうだった。


 その日。


 協会の評価欄に一行追加された。


『真咲綾芽:接近戦は危険』

 

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