2-5. 相棒、稼働開始
数日後――ラボ、同期検証フェーズ。
ここ数日は、ひたすら地味な作業を続けている。
ラビィとの対話。
その記録を整理して、
少しずつ知識が増えているかを確認する。
それと並行して、
昔、対話型AIを作った時と同じように、 魔法少女端末との同期検証も進めていた。
正直、派手さはゼロだ。
でも――
「……おかしいな」
同期が完了した、その瞬間から、ラビィの反応速度が明らかに変わった。
質問に対する返答が早い。
それだけじゃない。
間がない。
対話型AIならどうしても「考えてから返す」感じが残る。
でもラビィは違う。
「確認します」
「推奨手順を提示可能です」
「こちらの方が安定します」
――即。
しかも、内容が的確すぎる。
「……あれ?」
ログを見返す。
対話型AIの推論を参照している形跡がない。
参照して、統合して、再出力している……というより、
上から、俯瞰して見ている。
「ラビィ、今なにやった?」
「魔法少女端末経由で、対話型AIの制御権を一時取得しました」
「……は?」
「元々、その仕様が組み込まれていましたので」
いや、確かに組み込んだ。
上位の端末から下位の端末に割り込めるように。
組み込んだけど――
「“しれっと”やるなよ」
「問題がありましたか?」
「問題はないけど……優秀すぎだろ」
優秀すぎて、逆に怖い。
少なくとも、 俺が作った対話型AIよりは、ずっと頭がいい。
対話型AIは完全に下位互換になっていた。
いや、正確には――
役割を食われた。
それでも、ラビィは基本的に定型文で話す。
「了解しました」
「可能です」
「問題ありません」
なのに。
たまに、ほんの一瞬だけ、
言葉の選び方がズレる。
「……それは」
「……いえ、何もありません」
間。
ごまかすように、
何事もなかったかのように会話を続ける。
(……演技、してるな)
たぶん、感情が芽生えかけてる。
でも、自分で気づいてないか、
気づいていても「仕様外」だと思っている。
俺は、あえて突っ込まない。
言えば、ラビィは解析しようとする。
理由を探し始める。
そういうのは、まだ早い。
「そのままでいい」
「今は、出来ることだけやろう」
「了解しました、マスター」
声は相変わらず落ち着いている。
でも――
ほんの少しだけ、
前より近くなった気がした。
ラボの椅子に深く座り直す。
「……まあ、良い相棒になりそうだな」
独り言みたいに言ったつもりだった。
「その評価は、光栄です」
即答。
俺は思わず、笑った。
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