2-4. 核との対話
次の日――ラボにて。
最近、自分の一人称を「僕」から「俺」に変えつつある。
理由?
……まあ、そういうお年頃だ。察してほしい。
一応、対外的には使い分けている。
学校や協会では「僕」。
ラボや独り言では「俺」。
誰かに突っ込まれるほど露骨にはしていない、たぶん。
昨日拾った謎のコア――
今はもう、紫色に落ち着いている。
ラボの照明の下で見ると、
表面は滑らかで、内部に淡い光が脈打っている。
生きている、というより
反応し続けている、という感じだ。
「……ラビィ、聞こえる?」
念のために声をかける。
少しの間。
端末を通さず、直接思考に触れる感覚で返答があった。
「応答可能です」
相変わらず、丁寧で落ち着いた声。
でも、硬すぎない。
「今の状態、分かる範囲で教えて」
「分からないなら、それでいい」
「自身の構造を完全には把握していません」
「ただし、安定していると推測されます」
「そっか」
「じゃあ問題ないな」
否定しない。
決めつけない。
急がせない。
気づいたら、
小さい子に話しかけるみたいな調子になっていた。
ラビィは、こちらの言葉を一つ一つ受け取っている。
俺がラボで使っている用語、
過去に作った魔法少女端末の構造、
試作段階で失敗した設計の話。
説明しているうちに、
ラビィの返答が少しずつ増えていく。
「その構成は、成立する可能性があります」
「こちらの手順の方が、安定するかもしれません」
理由は言わない。
言えない、というより――
自分でも分かっていない。
「なんで分かるかは?」
と聞くと、
「不明です」
「ただし、“成功しやすい”という感覚があります」
……やっぱりだ。
これ、少し前に作った
対話型AIと魔法少女端末の関係に、よく似ている。
ラビィは答えを出すわけじゃない。
「できそうな道」を示すだけ。
実際に魔力を流し、
形にするのは俺だ。
「俺のことは、マスターでいい」
「無理に変えなくていいから」
「了解しました、マスター」
その呼び方にも、
もう違和感はなかった。
「危険が予測される場合は、警告します」
「特に、マスターの安全に関しては」
少しだけ、声の温度が変わる。
過保護、という表現が一番近い。
「ありがとう」
「助かるよ」
それだけで、ラビィは満足したようだった。
今日は、ここまで。
情報を詰め込みすぎると、
どっちも混乱する。
「また明日な」
「一緒に、もう少しちゃんと検証しよう」
「了解しました」
「……おやすみなさい、マスター」
ラボの照明を落としながら、思う。
――これは、妖精じゃない。
――装置でもない。
俺と一緒に、
**育っていく“可能性の核”**だ。
そう考えると、
少しだけ肩の力が抜けた。
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