二章:根回し中の、想定外と。4
にっこりにこにこと。キュウヤは言い切った。
受け取れません、勘弁してください、と表情を曇らせながら、ドレグがキュウヤに伝えるも、キュウヤは…旅人達の総意は変わらない。
キュウヤの言葉を聞いていたトラおじじが、髭を撫でながら口を開いた。
「その理屈、微妙に破綻しとらんかの?」
「否定はしないかな。どのみち動いているのが〈笑顔の行進〉だからねぇ。
架空の存在の皮を被ってるとか、そんなの関係ないからとりあえず報酬は受け取れ!って言われたら否定できないくらいの理論ではある。
けどね。この一件に関しては多少便宜を図って貰ったら、それ以上の報酬を〈笑顔の行進〉は受け取れないかなぁ。」
キュウヤが告げたのは、どのみち〈笑顔の行進〉じゃん、って一点突破されたら弱い理論ではあった。
架空の存在に払うのは大丈夫なのかどうかは心配な部分でもあるのだが、結果的に受注してるのは〈笑顔の行進〉という。対外的な情報と、実務的な情報の乖離故の問題ではある。
「別の方が動くのではなくて、皆様方が実際に動くのですし。どうして金銭的な報酬をこちらの実家に受け取らせようとするんですか?」
「ルビナリオで他のEランクの冒険者を雇い上げたいんだけど。基本的な行動は貴族籍のある冒険者パーティーと同じようにする予定なんだよね。
…一方はこちらがお金をもらっているのに、もう一方にはこちらがお金を払う可能性があるのは、よろしくないんじゃないかな。
まぁ、働いて貰ったら貴族籍のあるパーティーにもお金を支払うけどね。」
キュウヤが説明すると、あー、とドレグが唸る。
貴族籍のある冒険者にとって旅人達は追加の護衛みたいなものではあるし、旅人達とオートラナが休息地の建築を行い、小屋ができたらそこで過ごしてもらう想定ではある。そのあたりの報酬として、ルビナリオの領主への交渉をしてもらうだけで十分なのだが。
それ以上の扱いは貴族籍の有無に関わらず、初心者冒険者という事でおんなじ対応をする予定である。
街の外で活動する際に必要な道具、テントの建て方や焚き火の仕方、野宿する際の休息法や寝ずの番、獲物の捌き方、簡単な武器の手入れ方法、薬草の見分け方や様々なものの採取法、周囲の環境を見て生物の痕跡を見つける方法、単体の魔獣ごとの倒し方、魔獣を複数体を同時に相手しないといけない時にどう立ち回るのか、手に負えなさそうな強大な魔獣を見つけた際の比較的安全な退却法、複数パーティーで動く際役割分担…。
教える事はたくさんあるし、日常生活を送るために家事もしないといけない。家事はオートラナが役割を持っていきそうだが。
野外での調理法に関しては、Eランクの冒険者にも積極的に関わってもらおう。そのうち使える技術である。
「それでも何故、うちの実家に…?」
「ダンジョンが発見された以上、ノルキスタも今まで通りにはいかないだろ?
ダンジョンがあれば攻略のために他から冒険者が流入するだろうし、素材の取引のために商人も増えてくるだろうね。ダンジョンから産出されるものが有益であればあるほど、今までに来た人数よりも多く。」
何故ここでダンジョンの話が?と、いう表情をドレグは一瞬浮かべるが。思い至ったのか、すぐに真剣な表情になる。
ルビナがどゆこと…?となっている横で、エデュライナが成程、と呟いた。
「そうなると、増える冒険者や商人をある程度受け止めれる程度には宿屋が欲しいし、馬車が増えるだろうからその手入れできる職人も工房も必要。馬車を止めれる空間も欲しい。となると、ノルキスタの町自体の整備が必要になる。
それに、エルグラン大森林群の中にダンジョンに行く途中の中継地点かダンジョン前の休息所が欲しいとこかな。ノルキスタからそれなりに遠いからね、ダンジョン。」
「あー、わかった!色々作る為に、お金が必要なんだねー!」
ぽん、と、ルビナが手を叩いて、満面の笑みで結論を告げる。すっきりわかって嬉しいのだろう。
「そう。その為の資金として、依頼報酬を受け取ったら良いと思うよ。
ちなみにこれは、俺だけじゃなく魔法使いの総意だからね?」
にこり、と、ドレグに微笑みかけてキュウヤは告げた。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




