二章:根回し中の、想定外と。3
使える手札も、伏せて切れる手札もあればあるほどいい。管理できてないのは問題だが。
使えない手札は、横に置いておこう。使えないものをどうにかこうにか使おうにも、別の問題が起きそうであるし。
「三つ目。冒険者ギルドノルキスタ支部のある町の領主と、冒険者ギルドエルヴァリオ支部のある町の領主に、冒険者ギルドルビナリオ支部のある街の領主に、スタンピート対策のための小屋を建てる許可、周辺調査の許可、休憩所・治療室・食堂を一時的に開き最低限の利用料を得る許可の交渉をしてほしい。できる事なら許可を得てほしい。
爵位の差があるが故に交渉を行う際に心理的に重圧がかかると判断される為、この許可の希望を出しているのが魔法使いであると開示し、尚且つ魔法使いがルビナリオに向かうという情報を開示しても構わない。
ただし、ルビナリオの一件が終わるまでは、第三者への情報開示は不可なのは、先程までの条件と同一で。」
「…どなたが、魔法使いであるかの開示の許可は…?」
「先程と同条件で。俺、ミルキィ、ルディの三名に絞り、ルビナリオの一件が終わるまでは第三者への情報開示は不可とさせてもらおうかな。
スタンピートはルビナリオの街にも周囲にも被害が出ないように算段しているし。今回スタンピートの予兆の出方がおかしいみたいだから、その調査も魔法使いがする予定。という情報も追加してもらっても良い。」
キュウヤさん、あなた許可をもぎ取りに行ってません…?領主貴族家二家で交渉して、背後にいるのが希望者魔法使いて。
いやまぁ、小屋は建てれる方が良いので文句は何一つないんだけど。
「四つ目。貴族籍のある冒険者のパーティーは我々と合流したのち、安全性の確保や情報収集の観点、指導の関係で、こちらの指示をなるべく聞いてほしい。少なくとも、理由もなくこちらの指示に対して無視や反抗された場合、この依頼の続行の破棄も視野に入っている。
どうしてもここは譲れないというものがあるのであれば、早急に教えて欲しい。その上で色々判断させてもらう。」
冒険者のランク的には同じEランクだが、あちらは貴族籍を保有している。貴族籍のある冒険者は、自らルビナリオの調査に参加希望を出すくらいなので、身分差による対応の変化はあまりなさそうだが。だがしかし、その護衛が同じ対応を取るかどうかが不明である。
で。旅人達が貴族相手に忖度するかといえば、そんなにしない方である。以前に無茶振りすぎる指名依頼を振られた貴族に対して、とあるモンスターを狩って目の前に持っていって、それはそれはビビらせた事もある。あの時は、あちらの貴族の落ち度があったのもあって全く咎められなかったのだが。狩ったモンスターもモンスターだったので、むしろ旅人達の方が忖度されていた可能性もある。
まぁ、トラブルの芽はちゃっちゃかつんでおいた方が良い。後で他のEランクの初心者冒険者も受け入れる方向なのだし。…貴族籍のない人がどんどん増える想定である。
「五つ目。今回の依頼で発生するだろう報酬は、先程までの条件に含めた身分の肯定、対スタンピートに向けた準備のための交渉とし。金銭は我々クラン〈笑顔の行進〉は受け取らない。…というか、受け取れない。」
真面目なキュウヤの宣言に、トラおじじが目を丸くして。ドレグが慌てる。
「ちょっと待ってください!希望されている報酬はある意味この依頼の必要経費の側面もあるでしょう。ですので、報酬に相応しいかといえば微妙です。
更に言うならば、この依頼は貴族家からのものです。その為、金銭報酬一切なしだとよろしくないんです…。」
「一応、理由はあって。
今回の一件は表向き、〈笑顔の行進〉としてではなく、元々ノルキスタの領主に仕えていた存在が対スタンピート案の実証も含めてルビナリオに行く際に、貴族籍のある冒険者のパーティーも同行する形になる。
そうなると、報酬は元々ノルキスタの領主に仕えていた存在が受け取るべきなんだけど…架空の身分の存在が報酬を受け取るのは不正にならないかな、と。
かといって、〈笑顔の行進〉が受け取るとなると…何でそうなった、と疑問を持った人に対して、ルビナリオの一件の全容を含めた情報開示が必要になってくると思う。
なので、報酬はこちらが受け取るんじゃなくて、元々ノルキスタの領主に仕えていた存在を紹介したノルキスタの領主家が受け取ると良いと思うよ。」
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




