二章:事前準備は指差し確認してでも、万全に。5
収納袋が作れるか作れないかは、正直、文言次第なところはある。
〈鑑定〉なり〈解析〉なり情報系スキルを起動させつつ実物を見れれば、文言の問題はどうにでもなるのだが。無い物ねだりをしても仕方ない。
2級の魔石で試してみて、成功する気配がなければ。最下級の魔石をワンポイントであしらいつつ、元々いた世界のやり方で作ることも視野に入れてしまおう。
そんなに頻回に使う物ではないからね。〈収納〉があるし。ノルキスタの人以外にも魔法使いである事の宣言をしたら、旅人達全員、〈収納〉持ちである事を明かしても問題はないだろう。
そもそも〈収納〉持ちと明かす範囲が一部分だったのは、〈収納〉による大量輸送目当ての貴族や商会から来るであろう勧誘を回避するためであった。いきなり貴族から勧誘が来てもお断りしにくいため、それなりに伏せていたのだが。魔法使いとがっつり名乗る様になれば、勧誘をお断りしやすくなるのだ。
まぁ、それでも変に手出しされたら返り討ちにするだけである。ついでに冒険者ギルド支部に報告しておけば、対応としては完璧だろうか。
「収納袋がある、って知れただけでもありがたいわねー。」
ゆるっと、スノゥが呟くと。それだけで終わります…?とトゥエラがぽつり。うーん、鋭い。
うーん、とこれまでの話を聞いて、トラおじじが確認のための口を開いた。
「小屋を建てれる前提で準備の話が進んでおりますがの、仮に小屋建築は不可、対スタンピート戦での個人支援も不可、となった場合。
これまでの準備はどうされるおつもりですかな?」
「〈収納〉の中に蓄えておくか、素材なら冒険者ギルドに売ってもいいかなー、と。」
「まぁ、なんの問題もないのだ。…いや、問題はあるのだ。お金が減ったまんまなのだ。」
そもそも、旅人達の〈収納〉は、時間経過は選択式だし、収納できる量も無限大みたいな部分がある。
その為、少々素材を抱え込んでも旅人達的には問題は何もない。素材が流通してないのが問題だと言われると、それはそうとしか言いようがないのだが。
まぁ、購入資金に関してはそもそも回収するつもりもない部分がある。別に誰かに売るつもりで作るわけではないものがちらほらあるのだ。小屋とか椅子とか机とか。
「なるほど。となると、ドレグ。
しっかり交渉して、小屋を建てて対スタンピートに備える許可を頑張ってもらってきて欲しいのぅ。」
「ドレグにはもう一個確認とって欲しい事があって。
アタシ達がルビナリオに行った時に名乗る身分なんだけど。…男爵に仕えていた対魔獣戦略の研究家って名乗ってもいいか、ここの領主の男爵に聞いて貰えると嬉しいかなー、って。」
スノゥの提案に、ドレグの目が丸くなる。
スノゥが言っているのは、先ほどミルキィがおまかせした、旅人達が魔法使いとしてではなくルビナリオに行くための設定決めの内容である。
対スタンピートの戦いを今までのセオリー通りではなく、別の方策で実際に行動するのなら。ある程度の根拠となる立ち位置も必要となるだろう。まさかの男爵の元部下設定を出してくるとは思っていなかったのだが。
「全員、ですか?」
「あ。ごめん、研究者としての設定が欲しいのはうちのクランのリーダーと副リーダーの二人だけ。
ルディは二人の秘書官役で、他のクランメンバーは、対スタンピート戦における雇われ戦力みたいなもので。オートラナは二人の従者兼護衛みたいな立ち回りを想定してる。」
ドレグの確認に、うっかりしていたという表情を浮かべて。スノゥが旅人達が〈念話〉で決めた背景や設定をざっくりと説明する。
要は、一番立場の上の設定の人に爵位持ちの人が絡んだ設定を持ってくれば、他の面々は一番立場が上の人に雇われた事にすれば、難しい設定はいらないのだ。設定上、一番立場が上の人の立ち回りが難しいんだけどね!役割回ってきたのだが!?…設定決めを全部任せたからか。
爵位持ちの人が絡んでいるとなると、関係ない一般人に対しての抑止力になるだろうという目論みもある。変にちょっかいかけられたら、対応に悩むからねぇ。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




