二章:事前準備のすり合わせを。7
スタンピートの対処をしたことのある日本人、ミルキィ。※なお、ミルキィのいた日本にダンジョンはない。
さて。スタンピートが発生した際の動き方としては、おおまかには2パターン考えられる。
守りの硬い場所に引きこもってそこから敵対存在を削る方法。生活圏に辿り着かれる前に、スタンピートを起こしたダンジョン周囲、野や草原地帯、時には森の中で敵対存在を随時撃破して行く方法である。
旅人達がスタンピートに遭遇した際には、基本的に後者で対応していた。故に、ミルキィは小屋を建てて対スタンピートの休息拠点となる領域を作りたかったのだ。
生活圏付近で敵対存在と戦闘した際、周囲環境を破壊すると後々の生活に影響は出るし。門が破壊されて壁の中に敵対存在が入り込むと、甚大な被害をもたらす事になるだろう。市街地で戦闘すると、武器を取り回す空間が確保できなかったり、周囲を破壊しかねないから火力のあるアビリティを使うことを躊躇したりで、結果戦闘時間が大幅に伸び、それだけ敵対存在の蹂躙を許してしまう事になる。
なので、守る為の先手での対応が重要視されてきたのが、旅人達の中での常識なのだ。
「…ええと、基本的なスタンピートへの対処法を教えてもらっても…?」
「予兆が確認されたら、まずスタンピートの対応として冒険者ギルド支部が主導して、スタンピート時に配布できるよう、薬の増産や、武器や防具の確保などを始めますね。また、人海戦術な部分もありますので、近隣の冒険者ギルド支部に支援を求めたりもします。神殿にも一報入れまして、スタンピートの際になるべく速やかに怪我の治療をして貰えるように根回しもしていきますね。
スタンピートが実際に確認されたら、防壁のあるところまで下がって、防壁の上から攻撃する班と、防壁の前で攻撃する班に分かれて対処しますね。」
「…なる、ほど。」
スタンピートからの都市防衛戦みたいな形か、要は、と。ドレグの説明を聞いて、ミルキィはざっと自分の中で話をまとめる。
そこで気になった事が一つ。
「…スタンピート予兆が見られた、って情報がルビナリオのクランからもたらされたけど。冒険者ギルドルビナリオ支部って、周辺の冒険者ギルド支部に情報提供だとか、救援要請って出してない、よねぇ…?」
「きとらんのぅ。故にこちらから本部に報告済みじゃな。
情報共有を意図的にさぼっておるのか、はたまたスタンピートの予兆があった事自体を把握できておらんのかは知らんが。冒険者が他の街町にうつっており少なくとも人手が足らない上に、周囲の冒険者ギルド支部でも対策を取る必要がある以上、そもそも周囲の冒険者ギルド支部に連絡を入れる必要があったわけじゃ。それをできていない時点で冒険者ギルドの支部としては機能不全ではないか、という話にもなるの。
一応、こちらから周囲の冒険者ギルド支部にも声をかけており、各々の支部から各地の領主様方にも話がいっておるな。少なくとも、スタンピートに対する周囲の対策はこれでどうにかなるじゃろて。」
仕事の早いトラおじじである。
各地の領主にも周囲の冒険者ギルド支部にもスタンピートについての話が伝達されているのは。スタンピートの本流から逸れた魔獣が、他の領地に流れる可能性だったり、スタンピートで街道が一時的に使えなくなったりする可能性があるので、各々ある程度対策をする必要があるからだろうか。
仮に、行商人や街道に被害が出たら、流通にも遅延が生じ、市民の生活にもがっつりと何らかの影響がでてくるだろう。その影響を解消する為には、ある程度の時間やお金、人手が必要になってくるのは想像に容易い。
故に、スタンピートが起こるであろう地点の周囲でも、対策が必須になるわけである。
その情報を踏まえて、現在の冒険者ギルドルビナリオ支部の今回の対応である。…ヤバない?
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