二章:事前準備のすり合わせを。4
実物見たらわかるだろうか、とミルキィが考えていると。これがそうじゃな、とかちゃりと金属の動く音をさせた後に、トラおじじがさっくりと一つの魔道具を取り出した。
これが1対1で話せる通信の魔道具じゃよ、と、トラおじじが告げる。
見た目は黒い大きなトランシーバーである。側面にスイッチオンオフのつまみがあったり、燃料となる魔石の投入口が大きかったりするので、若干ゴツい印象のあるトランシーバーである。
応接テーブルの上に、通信の魔道具をゆっくりと置いた後。何気なくトラおじじが話し始める。
「そうじゃの。これ見た全員、後でちょっと守秘義務の誓約書に署名して欲しいのぅ。
一応それ、冒険者ギルドの内緒の話の実物じゃからなぁ。」
「…なんとなくそうなる予感はしてた。」
そうだよね!流通量の少ない通信系の魔道具で、しかも持ち運べるサイズのものとか、盗まれて悪用されたらどんな被害が出るかわからないやつ!情報漏らしたらアウト系のネタだしね!
トラおじじから黒くてゴツい魔道具の正体を聞かされたトゥエラが、明後日の方向を見て黄昏ていた。それはそうなる。
Cランクに昇格して?冒険者ギルドノルキスタ支部の発行する指名依頼受けて?未知の存在であるオートラナ見て?トドメのように秘匿事項である持ち運べる通信系の魔道具お披露目だもの。
それはね、最近まで普通の冒険者やってたら誰だって頭抱えたくなると思うよ。
とんでも無いもの出されてる…!とぴるぴるしているルビナとアトラがいる中。キュウヤとウィルフェアが通信系の魔道具をまじまじと見る。キュウヤは〈鑑定〉も使っている気配。
「結構大きい魔石も入れられるようになってるね…距離が離れるにつれて、それなりに必要なマナの量も上がっていくと見た。魔石の消費量も、とんでも無い量になりそうだね?」
「ふむ。1対1の通信網ですから、恐らくこれがそうなんでしょうけれど。確かに一本の線のように通信網が見えます。
しかし、この線には妨害に対する何かしらの対応がされている形跡はございませんので、傍受からの情報漏洩は起こりうる被害かと。
秘匿情報は暗号化してやり取りするのが望ましいかと思いますが、そもそも事前に形式化しておかねばなりませんからね。」
「暗号化しないといけない。となると、煩雑化してしまって、密な情報なやり取りをしないといけない時に足を引っ張りそうだね。
だからこそ傍聴されないようにする事が大事なんだけれど。その辺りの防護を織り込むとなると、文言の特定も難しそうだし、何より魔石は2級だと容量が足りない可能性があるね。
恐らくは、1段の魔石で魔道具の核を作成すると理想的だと思うんだけど。」
「問題は、1段の魔石は流通量が少なく高価である事と、そもそも1段の魔石を加工できる方がいらっしゃらない事、でございますね。」
「そう。となると、1級の魔石に防護も織り込んで、通信系の魔道具の核とするのが、諸々を考えると最善なんだろうね。流通量が少なく、魔石の価格が高いのは1級の魔石もそうなんだけど。1段の魔石よりはまし、って感じかな?
後は、盗難対策として考えると、使用者権限とかも盛り込んだ方が望ましいんだけど。そこまで盛り込んだら間違いなく1段の魔石じゃないと、容量が足りないだろうね。」
ぽんぽこぽんぽこ、キュウヤとウィルフェアのやりとりが続く続く。遠慮のない内容すぎて、トラおじじとドレグの話し合いがまた中断されたのだが。
…ヘルロットが教えてくれた魔道具作成の知識が遺憾なく発揮されてますね?後、ウィルフェアはいつその知識を仕入れたんだ。ルディの報告書あたりだろうか。
ちなみに。ウィルフェアがスキルも何もなしに情報網を読み取れるのは、ウィルフェアの中身が微精霊が成長したような存在だから、としか言いようがない。マナの流れ方には敏感だから…。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




