二章:事前準備のすり合わせを。2
ウィルフェアが密偵担当予定の忍者五兄弟(クノイチ含む)の保有する技能を一つ一つ挙げていくと。トラおじじの瞳がどんどん丸くなり。トゥエラが、だろうなと言わんばかりの表情を浮かべる。
一方、エデュライナは好奇心の光を瞳に宿したまま、ウィルフェアの方を向いている。実際に忍者五兄弟に出会ったらどんな反応をするだろうか。こちらに呼ぶ時は、エデュライナにも立ち会ってもらおう。
驚きの表情を浮かべたドレグが、ゆっくりと言葉を選びながら紡いだ。
「…オートラナって、多彩なんですね…?」
「魔法使いの方々に支えておりますものは、基本的に何かしらの一芸は持っておりますので、そう見えるのかもしれません。
我らオートラナはそれぞれに使える主人を持ちますが、今いる主人が存命の間に他の誰かに忠誠を違う事は決してございません。」
ざっくりと。多分トラおじじもドレグも気にしていたであろう事項に、ウィルフェアが遠慮なしに踏み込んでいった。
ま、魔法が使えるような使用人が、どこかの貴族の下についた、となればそれだけでパワーバランスがあっさりと変わるだろうからね。しかも、忍者五兄弟の存在を提示している以上、間違いなく複数人いる。故に、勧誘が可能であれば、更なる人材の取り合いにもなりかねない。しかし、それはウィルフェア、オートラナ自身から否定された。他に仕える気はないぞ、と。
それでも。魔法を使える使用人を得たくても、旅人達が存在している限り、使用人達は主人を変えない。だからと言って、旅人達を害した時点で冒険者ギルドからのカウンターが決まる、と。詰んでるんだよなぁ。
トラおじじ的には、オートラナの素体は人工的に作られているとわかっただろうけれど。素材の段階で入手経路的にもこの領域の技術力的にも製造不可だと理解しているだろうから、そっちの方面でも問題が起こる可能性はほぼゼロである。
ざっくりと踏み込んだ発言をしたウィルフェアはにっこりとした微笑みを崩さず。トラおじじとドレグはウィルフェアの方を見る。
「確実に?」
「ええ、確実に、でございます。」
にっこりと。ウィルフェアはドレグの質問に微笑んだまま返す。
「なお。情報のやり取りはオートラナ間であれば、いつでもどこでも脳内で可能である、と思っていただければ。
例えば、冒険者ギルドルビナリオ支部にて何かを発見した場合にも、即座に魔法使いの皆様方と行動を共にしております私の方へと情報を提供する、という事が可能でございます。」
どかどかと、ウィルフェアがオートラナの情報開示をしていく。売り込んでいくなぁ。本当に開示したら良くない情報は秘匿してるから問題はないんだけどね?
開示されていく情報に、トラおじじとドレグの目が更に丸くなる。一方、はい、質問です!と元気良くルビナがウィルフェアに声をかけた。
「それってどこにいても情報がやり取りできるって事?」
「お嬢様、まさにその通りでございます。
多少距離が離れておりましても、情報のやり取りに関してはなんら問題はありません。」
「えっ、すごっ。」
「え、それってさ。ノルキスタとルビナリオぐらい距離が離れてても問題ないのか?」
「実際の距離を私が知りませんので断言はできませんが、おそらくは可能ですね。」
質問にアトラも加わり。ウィルフェアの回答を聞いて、二人ですごいね、すごいなと言い合っている。気圧されずに質問までしていくとは。何気にこの二人、大物なのではなかろうか。
質問の内容に、冒険者ギルドノルキスタ支部のギルドマスターと副ギルドマスターの二人の瞳がきらりと光る。通信機器みたいにタイムラグなしで情報共有可能な存在がいるって、情報共有が大事な場面で刺さるよねぇ。少なくともこの領域では、通信系の魔道具は存在しているけれど、広い場面で流通していなさそうであるから、更にオートラナの情報共有能力が刺さるかもしれない。
…旅人達の〈念話〉については、秘匿しておこうかな。この状況下で〈念話〉あります、情報共有可能ですって言ったら更にややこしくなる。少なくとも、またトゥエラが机に突っ伏せるだろうし、なんならめりこみそうである。
…そういえば、情報共有で思い出したのだが。ルビナリオにいる〈森の輪〉とノルキスタ支部とでどうやって情報のやり取りをする予定だったんだろうか。通信機器貸し出しでもする予定だったんだろうか、時間かかるのは承知の上で、手紙でやりとりするつもりだったんだろうか。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




