二章:微精霊入りの人形は夢も見る。3
このサブタイトルの回、毎回色々悩みながら書いてます…。
…やっぱりあの黒い穴、亜空間系統にまつわるスキルの効能だわ。〈召喚〉で出てくるゲートは魔法陣だったり、穴が空いたとしてもきらっきらしているもん。
ミルキィが黒い穴の方を見て考えていると。執事服をかっちりと着込んだ初老の男性の背後で、役目を終えた黒い穴が、しゅるん、と、小さくなって消えた。
「これはこれはまた、相談事の最中ですかな?
皆様方におかれましては、お初にお目にかかります。私はウィルフェア・ノスタと申すものでして。
こちらの魔法使いの皆様方にお仕えしております使用人達の纏め役、と思っていただければ幸いでございます。」
ぴしり、と綺麗な角度でお辞儀をしながら、ウィルフェアがトラおじじ達に向かって自己紹介をする。
うなじよりも下で一つに束ねた銀色の髪が、お辞儀の時に揺れる。
ウィルフェアは、ロマンスグレーでかっこよいおじいさん手前の男性である。オートラナの面々を、笑顔で纏める手腕は素晴らしいものがある。若干圧がもれているときもあるが、まぁ…。
そんなウィルフェアを、トラおじじ達は目を丸くして見つめている。ある程度場数を踏んできているだろうトラおじじもエデュライナも、驚いているのか目を丸くしているのだ。
それもそのはず。オートラナの存在については、ゴーレムタイプの〈人形〉系統の魔獣やロボットやアンドロイドタイプの〈律動人型〉系統の魔獣で存在の説明はしたものの。実際のオートラナは、どこからどう見ても、ヒトにしか見えないのだ。
血色のいい肌、理知的な菫色の瞳、キューティクルの麗しい銀色の髪、綺麗に切り揃えられた形の良い爪、お辞儀をした際の筋肉や関節の動き。どれをとっても、つくりものには見えないだろう。
「え、あ、あの。」
「いかがされましたでしょうか?」
ドレグが言葉を探しながら、ウィルフェアに声をかける。声をかけられたウィルフェアは、にこりと微笑んで、ドレグに相対する。
体幹はぶれず、スムーズな動き。そんなウィルフェアの動作を見て、え、えぇ…?とルビナが困惑の声をあげていた。
「ウィルフェア殿は…」
「どうぞ、ウィルフェア、と呼び捨てでお呼び下さいませ。皆様方も、同じように呼び捨てでお呼びくださいませ、ね?」
敬称をつけて呼ぶドレグに対し、にっこりと、お茶目に微笑むウィルフェア。物腰は柔らかく、しかし自己主張はしっかりと。
「えー、ウィルフェアは、本当に、〈隣空族〉ではないのだろうか…?」
「ええ、我々オートラナは、〈隣空族〉ではございません。この身体は〈隣空族〉のものより、人形に近いものとなりますね。」
疑いの眼差しで、ドレグがウィルフェアの方を見るのだが。ウィルフェアは微笑みを崩さず、ドレグに、更にトラおじじや〈森の輪〉の面々に向けても告げる。
目を丸くしたまま、トラおじじがゆっくりと口を開いた。
「これは、驚いた。どこからどう見ても〈隣空族〉の初老の男性にしか見えんのだがのぅ…。」
「違和感を抱かれてしまいますと、皆様方の中に自然に溶け込むことは難しくなりますので。
私は基本的に魔法使いの皆様方のお側でお仕えしておりますが、担当によっては買い物などで人の中に紛れ込む事も必要になってきます。その際に、他の方と違っておりましたら、目立ってしまって仕事になりませんから。」
あっさりと、しっかりした口調で。ウィルフェアがトラおじじの言葉に返す。
何かしら疑問が浮かんだのだろうか、ルビナが近くに座っているスノゥの肩をつついて注意をひいてから、口を開いた。
「あのさあのさ、なんでウィルフェアを最初から呼ばなかったの?」
「人数が多くなりすぎる、っていうのがまず一つ。オートラナだから、何かしら反応しないものが出てきそうな気配がしたのも一つ。それに、使用人担当がいたらいろっいろややこしくなると思うのよねー。」
「なるほどー?」
少なくとも、使用人がいたら本当に異世界から来たのか?って疑われる可能性が上がるよねぇ。
ま、始めからオートラナがいたら、11人で異世界生活を始めるより、何かしらは確実に面倒になっていた気配がするんだよね。後ね、一人だけ呼び出して終わりにならないだろうし。
読了ありがとうございます!
また次話お会いできると嬉しいですっ。




