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05 真琴は碧眼の美少女から謎のブツを受け取った

「まぁ、座ったらどうだ。社長令嬢様よ」


桐谷はそういうと、壁に立てかけられていたパイプ椅子を一個持ってきた。


「桐谷、社長令嬢様って呼ぶのはさすがに失礼じゃないか?」


そんな風に呼ばれて、いい気がするとは思えない。


「ん?そんなん気にするこっちゃねぇよ」

「でもさ――」

「気にしないでください。昔からですから」


姫上さんはそう物憂げに言うと、パイプ椅子に腰掛けた。


(昔から・・・?)


いきなり問題発言だし。


「あなたが葛城真琴さんですね」

「・・・えっと・・・ど、どうもはじめまして。葛城真琴です」


まぁ、色々聞きたいことはあるけど、こういうときはまず自己紹介だ。

それにしても名前を名乗るだけって自己紹介になってんのかなこれ。


「お体のほうは、大丈夫ですか?」

「あ、はい。なんとか・・・」


僕の言葉を聞くと姫上さんは、笑みを見せた。


「それは、なによりです。それにしても、先ほどはうちの妹が本当にご迷惑をおかけして――」

「い、いやいや。大丈夫ですよ。全然。その・・・迷惑かけたのってむしろこっちのほうで」

「いえ。妹が、あんなひどいことをしてしまって。ほんとに申し訳ありません」

「そんな・・・。き、気にしないでください」


なんとなく今の自分は滑稽に見えているのだろうと予測がつく。

女子と面と向かってしゃべるのって、久しぶりなのだ。

こういうときはいったいどんなことを言えばいいのだろうか・・・。

うーむ。



「お邪魔でしたか?」


僕が黙りこくっているのを見かねたのだろうか。

姫上さんが声をかけてきた。


「あ、いや、全然オーケーです。っていうかむしろ大歓迎ですよ。男二人じゃなんか物悲しいんで」


あ、結構爆弾発言だなこれ。


「男で悪かったな。」


桐谷が呪うような声で、ポツリとつぶやいた。


「い、いや別に男でもいいんだけどさ。やっぱりこういう看病系のイベントって女子がいないと成り立たないだろ」


あ、やばい。

つい重ねて爆弾発言を・・・。

こりゃ怒らせちゃったかな・・・。


「そうか・・・」


そして桐谷は一瞬の間をおいて・・・


「そのとおりだな」


と答えた。


・・・


・・・


「き、桐谷!!??」


思わず、驚愕の声を上げてしまう。


「俺も、そう思うぞ」

「ほ、本当か!!やっぱりそう思うよな!!」


まさか、こんなところに同志がいるとは思わなかった。

まぁ、所詮男子など考えることは同じなのだ。

みんな同志なのだ!


「やっぱり、桐谷も男子だな~!やはり、看病系イベントに男子だけというのは酷すぎるよな~」




「二人とも。楽しそうですね」


姫上さんの声が聞こえた。


・・・


・・・


緊張のあまり、目の前の姫上さんから逃避してしまっていた。


振り向くと、そこにはにこやかな笑顔の姫上さんがいた。


よかった。

特に何も思ってないみたいだ・・・たぶん。


「いいや、楽しいのはオタクな葛城だけだ。俺は、イタイ発言をした葛城をフォローしてやっただけさ」


へ?


「葛城、看病系イベントに女子がいいなんて、イタイにもほどがあるぞ。フォローしてやった俺に感謝しろよ」

「全部暴露してる時点で、フォローじゃないよそれ。っていうかオタクとか言わないで」

「あとで、ジュース一本な」


桐谷は僕の言葉を華麗にスルーしてくれた。


「ジュースなんか奢るもんか。く、くそ。同志だと思ったのに・・・」

「だから、俺は全然そういうの興味ないから。」

「桐谷ぁ――」


思わず、体を乗り出してしまった。


と、


「葛城さん。これだけ元気なら大丈夫そうですね」


姫上さんの言葉が、再び聞こえてきた。


桐谷のほうに乗り出していた体を戻す。

振り返ると姫上さんは、相変わらず笑みを浮かべたままだった。


これって、なんか恐いな。


この笑みは、オタクを憐れむ笑みだったりして・・・



「そういえば、こちらを」


そんな僕の不安をよそに姫上さんはそういうと、鞄から封筒を取り出した。

よくあるA4の茶封筒だが・・・


(なんか、妙に厚いな・・・)


姫上さんは僕にその封筒をを差し出した。


「急いで準備したものですが、どうぞ受け取ってください」

「え、そ、そんなの別に大丈夫ですよ」

「いえいえ、妹が迷惑をおかけしましたから。これくらいは受け取っていただかないと」


えっと・・・こういうときは受け取ったほうがいいのかな?

なんか欲深いとか思われたくないんだけどなぁ



「葛城、ちょっと耳貸せ」


桐谷はそういうと、俺の耳元でつぶやいた。


「葛城、あれは受け取っとけ。多分金だ」

「や、やっぱり・・・」

「それにあの厚さから見て100万くらいあるんじゃないか」

「ひゃ、100万!!??」



・・・



「姫上さん。・・・有り難く受け取らせていただきます」


僕は、現実を見据える男だ。

生きていくために必要なもの。それは「金」だ。





姫上さんは、僕に封筒を渡すと席を立った。


「では、もうそろそろLHRが始まりますので私はこれで失礼します。桐谷君も、もうそろそろ教室戻ったらどうですか?」

「俺は、もう少しここにいるよ。まだ話があるし」

「そうですか・・・。では失礼します」


姫上さんは、そういうと保健室を出て行った。

なんか、最後にほんの少しだけ憂いの表情を見せたような気がしたのは僕だけだろうか。



「それにしても、桐谷って姫上さんと知り合いなの?っていうか知り合いだよね」


僕が質問すると、桐谷は少しうつむいた。

なにか、言いにくいようなことがあるのだろうか


「まぁ、幼馴染。みたいなもんだ」


桐谷はぼそりと答えた。


「へぇ、社長令嬢と幼馴染なんてすごいじゃん」

「全然すごくなんかねぇよ。それより封筒の中身、気にならないか?」


なんか、無理やり話をそらしたようにも感じるけど、きっと彼にも何か考えるところがあるんだろう。

ここは明るく――


「まぁ、気になるけどさ。家に帰ってからあけようかな。ここであけると、桐谷に横取りされそうだし」

「ほう。なかなか言ってくれるじゃないか。今日で俺らの友情も終わりだな」

「って今日始まったばっかなのに?」

「まぁ、人生そんなこともある。オタクが友人じゃ俺も迷惑だし」

「だからオタクって言うなよ。僕は最新の日本文化に嗜みがあるだけだよ」

「へぇ。そうかいそうかい。つまりオタクを認めるわけだな」


桐谷はそういうと、ふっと笑みを浮かべた。


「だから、オタクじゃないんだけどな~」


多分、このままどれだけ訂正しようと結果が覆らない気がする。


「んじゃ、俺ももうそろそろLHR行くぜ。お前は様子見て、家に帰っとけ。先生には俺から言っといてやる」

「うん。ありがと」

「ま、これからもよろしく頼むぜ。葛城」


彼はそう言い残して保健室を去った。

どうやら、僕は入学早々友人を失うことは無かったようだ。




保健室の時計を見ると、ちょうど1時45分になろうとしていた。

窓から外を覗くと、校内を生徒たちが歩いているのが見える。

そういえばLHRの開始はたしか1時30分だったはず。


「そうか・・・入学式って中断したんだったな」


桐谷がそういっていた。

ということは、今日の日程は僕の事件でずれてしまったのだろう。


「なんか・・・申し訳ないな」


一生徒の体調不良を原因とした些細なアクシデントで、これほど影響が出るとは。

あとで先生とかに呼び出されても文句は言えない。

先に謝っといたほうがいいだろうか。

そして、巻き込んでしまった姫上美月さんにも・・・


「姫上美月さんってどんなひとなんだろ」


思わず疑問を抱く。

無抵抗の男子に非情にも蹴りを入れるような人物なのだ。

きっと、ものすごく恐ろしいに違いない。


「お姉さんはあんなにいい人なのになぁ」


頭の中にさっきの光景がよみがえる。

言葉遣いや、態度はもちろん、見た目の美しさも兼ね備えているときた。

もはや文句のつけようが無い。

そして、あの神秘的な碧い目。


「見かけは完全日本人なのになぁ。外国人の血が混ざってるのかなぁ」


今度、桐谷に聞いてみようか。

いや、姫上さんの話をしたときにあの反応をしたということはあまり突っ込まないほうがいいかもしれない。

ま、そのうち分かるだろう。


「今日はもう帰ろう」


せっかく、学校を抜けれる口実を得たのだ。

いくら入学早々だといっても、これだけのことがあればさすがに家に帰りたい。


「それに、姫上美月さんと遭遇したら大変だしな」


これ以上損害を被るのは、身体的に危うい。





僕は、ところどころ痛む体に鞭打って帰路についた。

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