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04 真琴は不幸な未来を見据える男だった(これを人は暴走と呼ぶ)

ストーリーに少し修正加えています。

「お前、姫上美月ひめがみみつきってしってるか?」

「う~ん・・・。聞いたことは無いな・・・。」


僕の返事を聞いた桐谷は呆れたように、ふぅ と溜息をついた。


「んじゃ、姫上美鈴ひめがみみすずならどうだ?」

「そっちにも心当たりは無いなぁ・・・。でも、その姫上って言う名前なら聞いたことあるよ。たしか――」

「『姫上総合産業』だろ」


桐谷は僕の言葉を継ぐと、再び呆れたような顔をした。


「そんぐらいポポッと言えんのか?

若宮市民なら知ってて当然だぜ。もしかして、お前県外から来たか?」

「いや、そんなことはないけど。まぁ、なんか忘れちゃってただけだよ。」


慌てて弁解する。

誤解されてはたまらない。


「私、葛城真琴。若宮生まれの若宮育ち。正真正銘の若宮っ子であります。

さらに、生まれてこの方、県外出たのは数えるほど。心から若宮を愛しております。」

「そうか。お前が正真正銘の世間知らずだということだな」

「な、なんと言う暴言。県外を出たのが数回だからってそれを世間知らずというとは・・・。訂正を求めます!!」

「んで姫上総合産業のことは大体知ってるよな。」

「華麗にスルーだとっ!なんていう男」


桐谷一。なかなかやってくれるじゃないか


「そんなこたぁどうでもいい。要は姫上総合産業だ」


桐谷はそういって、こちらに鋭い目つきを向けてきた。


仕方ない。真面目にやろう。




『姫上総合産業』


若宮市民なら誰でも知っている、僕らの暮らす若宮市を拠点とする大企業だ。

たしか創業は戦後になってから。

創業当時は、金属加工専門の零細企業だったらしい。

それが、先代の社長がとある金属の加工法で特許を取ったらしく、そっから急速に大企業へと成長した。

今の代の社長になってからはさらに事業を拡大し、金融業や国際貿易、レジャー施設など、さまざまなところで「姫上」の名前が見られるようになった。

ニューヨークや上海、ロンドンなどの世界中に支社があり、「HIMEGAMI」はもはや世界共通語である。

っていうと言い過ぎかも知れないけど、実際にその影響力は絶大だ。

今の若宮市はそれこそ県内だけでなく国内でも有数の大都市へと変貌したが、ほんの数十年前までは、電車の駅も無いような小さな町だったらしい。

若宮市が、ここまで発展できたのはひとえに「姫上総合産業」のお陰なのである。




まぁ、ここで生まれるのは当然疑問だ。


「で、そんな大企業がいったいこの話に何の関係が?」


あ、桐谷が哀れみの目でこっちを見てきた。


「お前・・・ここで関係なかったら話に出すと思うか?」

「いいえ・・・思いません。」



あぁ・・・。

やっぱりか・・・。

なんとなく話は読めていたよ・・・。

僕はこう見えても、未来を見据える男なんだ。

ここから先の展開は予想がつく。

つまり――


「桐谷が言った、その・・・姫上美月さんとか姫上美鈴さんは、姫上総合産業のご令嬢かなんかなんでしょ・・・」

「おお、飲み込みが早くて助かったぜ」


桐谷が、無理やり飲み込ませたんだよ。


「そう。そのとおりだよ。まぁ、正確に言うとちょっと違うんだがな。まぁ、そんなことはどうだっていい。

それよりお前、俺がこれから言いたいことも分かってるよな」


はぁ・・・。

分かっていますとも、桐谷さん。

その人の不幸を喜ぶようなキラキラと輝く瞳をこちらへ向けないでください。

こっちはこれからの人生を考えるだけで精一杯なんですよ・・・。


でもまぁ、事実は認めるしかない。


・・・


・・・


・・・


「つまりさ。僕が巻き込んだのってその二人のどちらかなんだよね」


・・・


・・・


・・・


「ご名答!!お前が巻き込んだのは、姫上総合産業の社長令嬢「姫上美月」様だ」


桐谷は笑いながら豪快にそう言い放った。


「さすがは、"マイ・ベスト・フレンド"だな。物分りのよさは天下一品だぜ。」


だから物分りがいいんじゃなくて、あなたに分からされたんです。


しかし、ここで懸案事項がある。


「それにしてもさ、そんな大企業のご令嬢を巻き込んじゃったんでしょ。

んで、最終的な反応を見る限りでは、怒ってたわけでしょ。

だったら、僕って姫上総合産業を敵に回しちゃったってわけでしょ」

「まぁ、敵に回すは少し言い過ぎかもしれんが――」

「それって・・・この町全体を敵に回したようなものじゃん!!」


そう。

この若宮市では、姫上総合産業=若宮市の構図が成り立っている。

たしか市長選では姫上総合産業の支援した人が何年も当選し続けているのだ。

数年前にも、姫上総合産業のレジャー施設建設に反対した住民が行政から強制立ち退きとかさせられていたような記憶がある。






~暴走スイッチON~






つまりこのままだと・・・


市役所の職員が家に乗り込んできて、


そして、最終的には姫上総合産業から雇われた黒服たちに連行されて、そのまま拷問される。


いやいや、ありもしない罪を擦り付けられて刑務所行きなのかもしれない。


もしかしたら、何かの人体実験の実験台か。


それとも、もう命を狙われているのか。


外に出た瞬間、凄腕の雇われスナイパーに狙撃されるのか・・・。





だめだ・・・。もう僕は終わりだ・・・。


お父さん、お母さん。今まで育ててくれてありがとう・・・。


この恩は一生忘れないよ・・・。







「おい、どうしたお前?さっきからもの凄い負のオーラが漂ってきてんだが・・・。

もしかして、まだどっか痛いのか?」

「い、いや・・・。痛みはもうほとんど無いよ。

でも、これからの人生を思うと・・・さ。」


桐谷はそんな僕の言葉を聞くとキョトンとしてしまった。

もしかして、僕がこれからめぐり合うであろう不幸のことなんて全然気にしてもいなかったのか・・・。

なんて薄情な・・・。


「ぷっ。ぷはははははははっっ!!お前最高だわ!!そんなこと考えてたのか!?

いやはや、なんかお前ってすげえな」

「そんな笑うなって・・・。それにしても、何でそんなに笑ってられるんだよ?

こっちは、あと何年生きれるかわかんないんだよ」


既に、この部屋に爆弾が仕掛けられている可能性だって無いわけじゃないんだ。

それなのに、相変わらず桐谷は爆笑したままである。


「やっぱお前最高!!なんていうか、かわいそうなぐらいだな。

心配のしすぎだよ。どうせ命が狙われるんじゃないかとか思ってんだろ。そんなことありえねえって。」

「な、なんでそんなことが言えるんだよ。」


こっちはもはやパニックなんだ。


「ならさ、これからの人生にまだ希望があるって言うならその理由を説明して欲しいな。

出来るだけわかりやすく。簡潔に。」


ここまでい言うと、やっとこさ僕の悲痛な願いをやっとこさ聞き入れてくれたのだろうか。

桐谷は、下を向いてなにやら真剣な表情になった。

さぁ、説明してくれ!!

僕の人生に希望があるんなら、その訳を!!



「もうすぐ1時か・・・。時間だな。」


え、・・・時計見てただけなの。

なんていう・・・。

期待だけさせておいて・・・。

もう耐えられない。


「教えてくれよ。世界規模の大企業の令嬢を色々と巻き込んだ挙句、憤慨させておきながら、まだ僕の人生に希望があるわけを!!」

「まぁ、ちょっとは落ち着けよ。お前の言ってることって、結構常識の範疇外れてるぜ」


常識?そんなの・・・・


・・・




~暴走スイッチOFF~





たしかに・・・

考えすぎだったか。

さすがにそれだけで命を狙われるとかは無いか。


「ふ、やっと冷静になったか。そんな簡単に命とか狙われてたら、日本の社会は成り立たねえぜ。」

「そうだね・・・。ちょっとパニックになりすぎたよ。でも、状況が芳しくないのはたしかだよね。」


命が狙われるとかは無いにしても、めんどくさい事に巻き込まれたのは事実。

だって、社長令嬢を怒らせたのだ。

きっと何かあるに違いない。


「まぁ、お前がいってることも確かだ。少なくとも、今の状況は普通の人を巻き込んだのとは一味違うだろな。

まぁ、そんなこともひっくるめて関係者に聞くべきだろ」

「へ?関係者?」


そ、そこでなぜ関係者が出てくる?


「そんな間抜けな声出すなよ。聞こえちまうぜ。

って、さっきのお前の悲痛な叫びも十分聞こえてたと思うけどな」

「き、聞こえる?誰に?」

「その関係者に、だよ。哀れな子羊ちゃん」

「だから関係者が誰かって言ってるだろ!っていうか何なんだよ、その人を馬鹿にしたな台詞」


展開が急すぎる。

ちょっとついていけないぞ。


「じゃあ、実際にあって確かめれば良いさ。

まぁ、お前のことだから顔見てもわかんないと思うけど」


だ、だから何なんだよ!!


と僕は言おうとした。けど、なんとなく展開は読めている。

我輩、これでも未来を見据える男だ。


これは――


「んじゃ、入っていいぜ。社長令嬢さんよ~」


桐谷の声と共に、保健室の白い扉が開く。

扉が開けられたことで、保健室に一陣の風が流れ込む。


(あ・・・いい香りだ・・・)


扉の先にいたのは、一人の少女だった。

この人が、この香りの持ち主に違いない。



まず目に入ったのはその腰の辺りまで下ろした、艶やかな黒髪だった。

どこを見ても、文句のつけようが無い華奢なラインに、端正な顔立ち。


そして、その瞳に僕は目を奪われてしまった。


(瞳が・・・碧い・・・)


どこから見ても日本人にしか見えない。

なのに、その碧い瞳は決して不釣合いなんかじゃなかった。


(なんか・・・神秘的だな・・・。それに綺麗だ)


(人はこのような少女をなんと呼ぶだろうか・・・。美少女?)


(いや、違う。・・・女神?)


(さすがに、それは言い過ぎか。・・・べっぴんさん?)


(僕は昭和生まれかよ。)


それとも――


ここで、僕の思考は中断された。


理由は簡単。


扉の先に立っていたその人が口を開いたから。





「はじめまして。姫上美鈴と申します。先ほどは、うちの美月が御迷惑をおかけしました。」





あぁ、なんか入学早々凄いイベントだわ。





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