表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

03 真琴は事の真相を知ろうとした

「い、いてぇな・・・」


僕の目覚めは体中の激痛を伴っていた。

しばらく横になったままだったのだが、だいぶましになったので場所の確認をしようと体を起してみる。


「ここは・・・どこだ?」


やはり、僕の記憶にはない場所だ。

白を基調とした、無機質な室内には僕しかいない。


「もしかして、保健室か?」


たしかにズラリとベッドが並んでいるところを見る限り、そうとしか考えられない。

うむ。ということはやはりあの後保健室に運ばれたのか・・・。


「もしかしなくても、保健室だぜ」


声のほうを振りかえると、ちょうど入口の所に一人の男が立っていた。

その風貌と、声色には覚えがある。


「君って入学式の時の――」

「そう。瀕死状態のお前のために先生を呼びに行った心優しい男子さ」


そういうと彼はにやりと笑った。


「それって、自分で言うこと?」

「そりゃもちろん。事実だからな。」


彼はそう言い、軽い笑みを浮かながらこちらへやってきた。


「そういや、具合のほうはましになったか?結構寝てたけど。」


彼はそう聞くと、ベッドの近くのパイプいすに腰掛けた。


「だいぶ。体中から激痛はするけどね」

「そうか・・・。まぁ、あんだけ転がり落ちたからな」

「そういえば僕、転がり落ちたんだったね」

「おいおい・・・。あんだけ転がり落ちておいて自覚ほとんどなしかよ。

ほんとなら骨折とかしててもおかしくないんだぜ。ほんとついてるよ、お前」

「いや・・・そういわれても・・・」


確かに、骨折とかはしているようでもないし、そこはついてるとは思うけど・・・。

転がり落ちたこと自体、結構不運なんじゃ・・・。

朝から、なかなか不運なことに恵まれていたし・・・。

いや、でも死んでもおかしくない状況だったかもしれない。

事実、死ぬな・・・とか思ってたしな・・・。

それならやっぱり幸運なのか・・・。



「おい、さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?

とにかくお前は生きてんだし、万事OKじゃね?

っていうか、まずは自己紹介させてくれ。

このまま名前も知らずにそばにいるのはなかなかきつい」


彼はそう前置きすると自己紹介を始めた。


「俺の名前は、桐谷一きりやはじめ

桐谷でも、一でも、どっちで呼んでくれてもかまわないぜ。

お前と同じくここのわずかばかりの男子新入生の一人だ。

んじゃ、俺の自己紹介は終了。次はお前の番」


彼はそう言い切ると僕に目配せしてきた。

あんまりにも簡略すぎないかそれは・・・。

と心では思ったが、まだ出会って間もないわけだしそんなに深い自己紹介はいらないかと一応納得。


「僕は葛城真琴。身分は君と同じ。以上」


我ながら、なんとも簡略的な自己紹介だ。

他人に言えたもんじゃないなこれじゃ。

まぁいうことなんて特にないし・・・。


「んじゃ、これからよろしくな。葛城。

お前とはなかなかいい友達になれそうだ。」


しかし彼、まぁ桐谷は気にしなかったらしい。

なんかさばさばした性格でいいな。


「こちらこそよろしく。桐谷くん・・・でいいかな?」

「くん付けとかいらないよ。なんか堅えし。

友達同士、フランクに行こうぜ」


なるほど・・・。

ほんとにさばさばしてる。


「じゃあ、桐谷。って呼ぶよ。」

「そうそう。それでおkだぜ」


桐谷はそういうと、満足げに笑顔を浮かべた。




◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇




「そういえば、僕が転がり落ちた時のこと覚えてる?」

「あぁ、もちろんだぜ。」


さっきまでの自己紹介とかで忘れていたが、僕には気になっていることがあった。


「そしたらさ、あの・・・最後のあれは・・・何?」

「最後の?」


彼はそうつぶやくと、腕を組んで考え込み始めた。

もしかして、心当たりがないのか・・・。

講堂の中は暗かったし、よく見えてなかったのかもしれない。


ちなみに、僕が気になっているのは最後のアレ。

つまり、誰かを巻き込んで転がり落ちきった後の強烈な衝撃の正体だ。


「なんかさ・・・ものすごい衝撃を食らったんだけど。

たぶんなんだけど、あれって、巻き込んだ誰かに蹴られたんだよね。」


まぁ、僕は床に転がっていたわけだし、蹴られた以外には考えられない。


「あれか・・・。たしかにお前は蹴られた」


やはり蹴られたのか・・・。


「一応、なんで蹴られたのかなぁと思ってさ。」


まぁ、第一の理由は巻き込んだからだと思う。

でも、それ以外にも理由があるかもしれないと思っている。


巻き込まれたから。

ただそれだけで蹴られるのはあまりにも理不尽だ。


「そうか。知りたいか。」

「もちろんだよ。巻き込んだ以外の理由を」


その返事を聞いた桐谷は、なぜか真剣な目になった。


「いいか、お前。俺の話をよく聞けよ。」


お、おう。

それにしても、なんなんだ。急にこの緊迫した口調は・・・。

もしかして、僕が巻き込んだのはどこかの暴走族の幹部だったのか?

それとも若宮学園の影の番長か?

な、なんか冷や汗が出てきたぞ。


「とにかくわかった。ちゃんと聞くよ。それで、なんで僕は蹴られたの?」


僕も真剣な声で返す。

僕の青春時代を決める大事な事柄だ。

運が悪ければ、僕はこの高校生活を暴走族や、学園の影の組織と闘いながら過ごさねばならない。

入学式初日から、校舎裏でリンチされたくはない。


僕の肯定と疑問の返事を聞いて彼は話し始めた。


「蹴られたのは、巻き込んだからというだけじゃない。

マリアナ海溝以上、日本海溝未満のふか~い訳があるんだ。」

「やっぱりか・・・。それにしても中途半端に結構深いな」


っていうか無駄な説明は省こうよ。


「まぁ、まずは俺が見た事件の全貌を説明しよう」


彼はそういうと、語り始めた。

なかなかに遠回りな男なんだな。





◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇





入学式開始から約1時間後、ちょうど副部長の話が佳境に入っていたころだ。


さっき、どんくらいで副部長の話終わんのかって聞いてきた隣の男、つまりお前が顔を真っ青にして、足元をがくがくふるわせながらフラフラとしていた。

まさに、瀕死寸前。

誰が見たって健康な状態には見えない。

もちろん俺にも大丈夫そうには見えなかった。

だから、俺は優しくも声をかけてやった。

それなのに、そいつ・・・つまりお前は大丈夫と言い張った。


まぁ、こりゃ自己責任だなと思ったけど、やっぱり見捨てらんなくても一回声をかけた。

それでも、お前は大丈夫と言う。

でも、既にそん時からお前はいつ倒れてもおかしくない状態だった。

顔は暗い講堂の中でもわかるほど青白かったし、震えも増してた。


ってなわけで俺は先生を呼びに行くことに決め、周りのやつにお前の面倒をみるように頼んだ。

で、俺が先生を呼びに教職員席に向かっている途中、すんげえ音がしたんだよ。

振り返ってみると、お前が通路を転がり落ちているところだった。

そりゃものすごい速度で。


相当な音だったから結構な人が気付いてさ、もう会場は騒然。

あの副部長ですら、話を止めたんだ。


その間もお前は加速しながら落ちて行って全然止まる気配がながった。

さすがに俺もやばいと思ったね。

こりゃお陀仏かもしれんって。


そしたらだ、通路脇に座ってた女子が一人出てきたわけ。

こいつ、止めにかかるんだなって思ったよ。

なかなか感心な奴だと思わないか。

女子一人で転がり落ちる男子を止めようとしてるんだ。

まぁ、無謀ともいえるな。

そして、お前は速かった。

それこそ坂道をブレーキ無しで走る自転車並みの速さだな。

んで、その女子の努力空しくお前は止まらなかった。

当然の結果だな。

そして、その女子はお前に巻き込まれて一緒に転がっていった。


重要なのはここからだ。

無意識だか何だか知らんがお前とその女子は密着状態だった。

抱き合うようにしてゴロゴロゴロゴロ――。

まぁ、お前に無理やりくっつくような余裕はなかったから、不可抗力だったんだろうけどな。

でも、まるで――えっとだな――まぁ――

とにかく相当な密着具合だったんだ。

お前は全然意識とかないかも知れんが、女子からしてみたらそれこそ・・・

その・・・結構ショックなことだと思う。

見ず知らずの男子と、ピタリと密着状態だろ。

もしかしたらだが・・・いろいろ触られたのかもしれん。

もちろんお前の意識はなかったと思うがな。


で、転がり落ちきった時、その女子は最初は茫然としてた。

たぶん相当ショックだったんだろ。

で、瀕死状態のお前を見つけた。

あの表情は忘れらんねぇぜ。

まさに憤怒の表情。

そしてその女子は律儀にも他人を心配するお前の声なんか聞き入れず、お前を蹴り飛ばしたってわけだ。

それにしてもありゃ見事の蹴りだったな。

お前の体が2,3メートルは吹っ飛んだからな。


でお前はそのまま気を失って入学式は一時中断。

俺たち男子で、お前を保健室まで搬送してきたのさ。





◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇





彼はここまで話すと、ふぅと一息ついた。


「大体、事の流れはこんなもんだ。」

「なるほどね。僕が、その・・・巻き込んじゃった女子と密着状態で、女子が相当ショックを受けて、そのせいで蹴られたってことか。」


なんか、全然理不尽じゃないようで理不尽だと思う。

まぁ、一応受け入れないと話は先に進まない。

でも、男子校育ちだから女子の気持ちとかよくわかんないけど、まぁショックだったとして、そこで人を蹴り飛ばすものなのだろうか。


「まぁ、それだけじゃないんだな。」


僕の疑問を感じ取ったのだろうか。

彼はふたたび真剣な眼をして言葉を続け始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ