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アクヤクーヌ・レイジョリオンは断罪される①

 最初に行われたのは、第一王子であり卒業生代表を務めるフィービー王子の挨拶であった。


 差し障りのない挨拶と、三年間苦楽を共にしてきたクラスメイトや他の生徒と分け隔てなく接してくれた教師への感謝の言葉を述べた後、傍らに控えていた婚約者の令嬢との結婚を発表したのである。


 侯爵家令嬢である彼女は、フィービー王子のルートやハーレムルートでは病に倒れた事を理由に婚約を解消されてしまう。


 彼女もまたシナリオの犠牲者であるが、これらのルートが潰えた今、病魔に侵されること無く安心して王太子妃の座に収まることが出来るだろう



 会場は歓声と温かな拍手で包まれ、祝福を受けた二人は仲睦まじく笑いあっている。

 純粋に良いカップルだと思う、幸せになってほしいものだ。


 殿下に続けとばかりに、貴族令息達が卒業後に婚約者との結婚を発表していく。


 隣に立つ令嬢たちは穏やかに微笑んでみたり、照れくさそうにはにかんでみたり、皆幸せそうだ。


 パーティーは平穏に進んでいく。

 和やかなお祝いムードの会場の空気を一変させたのは、自信満々なこの男の一声であった。


 「俺も報告がある。

 皆、俺の話を聞いて欲しい!」


 私の婚約者であるゼルハルト・オーレサーマが不適な笑みを浮かべて片手を上げていた。


 会場がざわつく。

 ゼルハルトの噂は他学年にまで知れ渡っている。

 此処で彼のする報告など……皆大体想像が付くのであろう。


 隣に立つテディの肩を抱きつつ、ゼルハルトは鋭い瞳で私を睨み付ける。


 「アクヤクーヌ・レイジョリオン、貴様にはほとほと愛想が尽きた!

 貴様との婚約を、破棄させてもらう!」


 本当によく通る声だ、この広い会場全体に響き渡っているではないか。

 ゼルハルトの高らかな宣言に、一瞬会場がシンと静まる。


 周りが聞き入っていると勘違いしているのか、口端を上げて自信たっぷりに笑ったゼルハルトは、更に続ける。


 「お前は、このテディ・ブライアンに嫉妬し辛く当たり取り巻きを使って詰っていた。

 しかもテディの持ち物を壊したり突き飛ばしたりしたらしいではないか!」


 おうおう、盛られとるやんけ。


 確かに、ゲーム内のアクヤクーヌはテディの大切なものを破壊したりした。

 私もテディに対して貴族らしい振る舞いをするよう、注意はしたが、実害を与えるような事は一切していない。


 罪状を盛りに盛ってくれた女はゼルハルトの隣でくすん、と啜り泣きをしている。

 小動物のような愛らしい外見も相まってか弱い印象を与える。


 しかしちらりとこちらを一瞥した瞳は一切泣いていなかった。やはり強かな女だ。


 「元々生意気で冷たい女だとは思っていたが、此処まで性根が腐っているとは思わなかった!

 よって、アクヤクーヌ・レイジョリオンと婚約を破棄し、新たにこのテディ・ブライアンを新たな婚約者とする!」


 静まっていた会場が、少しずつざわめきを取り戻し始める。


 「やはりオーレサーマ伯爵令息はあの娘を選んだか」


 「たかだか庶民の娘を迎えるために、レイジョリオン家の令嬢へこのような仕打ちを……」


 聞こえてくるのは主にゼルハルトへの侮蔑を含んだ言葉だ。


 貴族同士の婚約は、家と家との繋がりの強化だ。ゼルハルトはそれをふいにした愚か者と見られても仕方はない。


 多分、本人もそれは承知の上だろう。


 「アクヤクーヌ様もお気の毒に」


 「このような場で吊るし上げられて、もう嫁ぎ先は無いのではないかしら」


 「まあお可哀想、私ならその場で死を選ぶわ」


 それと、私に対する好奇心を含んだ憐れみの声だ。


 まあ、私が言うのも何だがアクヤクーヌは見た目もキツけりゃ中身もキツい。

 思ったことをズバズバ言う性質は、正直ゼルハルトとは合わないと思う。


 ――まあ、こんな晒し者にされる言われは無いのだが。


 ゲームでは、アクヤクーヌはヒステリックにゼルハルトとテディを罵り、泣き崩れるという貴族令嬢には有るまじき失態をさらし、同情をもふいにしてしまう。


 そして、周りからも見放された彼女の絶望が終盤の大きな盛り上がりを呼ぶのだが……。


 「……アクヤクーヌ様がブライアンさんを虐めたという証拠は有りますか!?

 私たちはブライアンさんの淑女らしからぬ行いを咎めはしましたが、そんな卑劣なことはしていませんわ!」


 「してないですの!」


 背後にいたトリマーキ姉妹が声を上げる。互いに手を取りあい、勇気を分けあうように寄り添いながら二人で鋭く問い掛けた。


 この重苦しい空気の中、反論するのはさぞかし勇気がいっただろう。


 ゼルハルトは、こちらを睨み付けるトリマーキ姉妹に目を向けると、小馬鹿にしたように鼻で笑った。


 「アクヤクーヌの取り巻き達か、お前達が寄って集ってテディを罵り泣かせている事はもう知っている。

 彼女本人から聞いたのだ、正しいに決まっているだろう!」



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