〜 龍神現る 〜
薄暗い洞窟内、睨み合うタケルと神井
神井に負ける理由にはいかない、青龍は絶対に殺させはしない、それに…神井の手をこれ以上黒く染めさせる訳にはいかないんだ
タケルの拳は力強く握りしめられていた
ゴゴゴゴゴゴゴゴオオー
「確実に息の根を止めたところまで確認しなかった俺の未熟さ、もう少し弱いと思っていたんだが」
「俺が簡単に負けるかよ」
突如耳の中に届いた様に鳴り響く、空を切る凄まじい音
それは無数に繰り出される霊気を纏ったタケルの拳だった
神井は躱していたが、予想以上の速度に驚いていた
「雑魚が失せろ」
タケルの肩に鋭く尖った神井の霊気が突き刺さる
?
おかしい、圧倒的な力の差の中、戦闘を確実に支配してるにも関わらず神井に生じる、気に食わない違和感
それは、自身が思い描いているものとは違う現実に対しだった
確実に心臓に刺した筈だと思ったが肩?
「けっ、何処狙ってやがんだ神井、そんなんじゃ俺は止められないぜ」
神井は気付く、自身の頬が切れ、一滴の血を垂らしている事を
圧倒的にこの戦闘を支配しているこの状況で、自らに傷?
俺の思い描く通りの現実ではない
この期間で俺と共に鍛え、俺の想像よりも強くなっている?
「ふっ貴様、一体何者なんだ?」
「さあな、俺は俺だよ」
空を斬り裂く様なタケルの拳を躱した直後、神井の蹴りはタケルの溝落ちに深く蹴り込まれた
「ぐふおっ」
「貴様、目障りなんだよ、なにかとな」
神井は次なる拳も躱し反撃の一撃を浴びせようとした直後、もう一方のタケルの拳を肩にくらっていた
自身の想像を超えた相手の攻撃パターンがそこにあった
なんだと……差は圧倒的なはずだ
神井は身体に走る痛みにより、受け入れ難い現実を直視せざるを得なかった
「神井、俺はお前のこともダチだと思ってる」
「笑わせる、貴様など俺にとっては、なんでもない、そのくだらない想いと共に死ねよ」
「神井、絶対に死ぬな」囁くように、声を発したのはタケルだった
「?」
「これは俺が今放てる全力の霊気、秘密の技をとっといたんだ、いつの日か必ず役に立つと信じ、まさかお前に向けて放つ事になるとはな…」
それはタケルの右手に集中し、集まっていた黄金に輝く霊気
「うおおおおおおおおおおおぅーーー」
躱そうとした瞬間、自身の脚がタケルに掴まれ動けない事を知る
「良いだろう、きやがれ」
「うおおおおおおおおおおおぅーーー」
ズゴオオオオオオオオオンンッ
「なんと凄まじい霊力」 驚き、息を呑んでいた青龍
辺りを物凄い爆風が包む
タケルは全てを見届けた、その直後、地面に倒れ込んだ
青龍は二人の様子をジッと見つめている
砂煙の舞う中、薄っすらと見える神井の身体が視界に入った
神井はなんと立っていたのだ
「ぐっ」
こいつ、まさかこれ程迄の霊気を放てる程、成長していたとは…
流石にかなりのダメージを負ったか
青龍は思う、神井、恐ろしい人間だ…あれ程の一撃をまともにくらって立っている
この者が、更なる成長を遂げ、闇のエネルギーを軸として立った時……必ず強大な力を持つ厄介な敵となるだろう
「さて、約束通り殺すとしよう、まぁ、既に瀕死の状態だろうがな」
「待て、タケルを殺す必要はない」
喋りだしたのは青龍
「我を殺せばここからは出られる、それで良い筈だ。それとも今殺さないと後のタケルの成長が怖いのか?」
「ふっ、まぁどうでも良いが」
青龍は神井のプライドを良く見抜いていた為に、後者の言葉を追加した、タケルを生かす為
神井が青龍に近づいて行く
鋭く尖った霊気が青龍の首の上に据えられた
タケル、お前は生きねばならない
この先、数々の試練がお前を待ち受けているだろう、負けるなよ
我のダチ(友)よ
そして……リタ、白龍に、我の最後は輝かしいものだったとそう伝えてくれ、我にはもう何の未練もない
神井が青龍を殺そうとしたその瞬間、神井は背後に恐ろしいものを感じた、それは決して見てはならない、いや、直視したくない程の恐ろしく深遠で広大な……
闇の様なもの
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーッ
「馬鹿な」「タケル……」驚く青龍
「なんだ、こいつは」これはまさか?
そこに立つのは異形の姿をした存在
身体半分は真っ黒な闇、その影なる形は人間の身体の形を成してはなく、もう半分はタケルの姿であった
「ぐごががががああっ」
それが動いた霊気の圧力で神井は吹っ飛ばされていた
「なんだ、この力は」
ズゴオオオオオオオオオンンッ
「タケル、正気を戻せ、取り込まれるな、闇に」
それはほんの数秒前のタケルの意識内
ああ、負けちまった、やっぱあいつは強えぇ
その時
神井が青龍を殺そうとしているのが分かった
駄目だ、やめろ、くそっ身体が動かねぇ
同時に青龍の想いが、意識内に流れ込んでくる
やめろ、神井、そいつは俺達の仲間だろ
何故殺す、ホントに正気なのかよ、神井
お前って奴は本気で仲間を殺すのか……
俺の友達を殺すのか?
怒りと悲しみが、タケルを支配する
突如タケルの意識内に浮かんだのは、真っ黒い真ん丸の球体
ワレニ フレヨ
ゾウオヲモヤセ
スベテヲ ハカイスル チカラヲアタエヨウ
このまま、青龍を助けられないんなら、なんだか分かんねぇけど、意識は朦朧としかけていた
このまま全てが消え、なにもかも失う様なそんな
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオーー
タケルはその闇に触れた
それは自身の内に姿を現した、強大で果てしなく深淵な闇
「ウゴオオオオオオオーーー」
「タケル、我を取り戻せ、このままじゃお前は神井を殺してしまうぞ、神井はお前のダチなのだろう」
タケルの腕は既に神井の首根っこを掴んでいた
「ぐごおおおおおっ」
「貴様、笑わせる。何だお前は?」
「シネ」
やめろ
タケルの意識内にタケル自身の声が響き渡る
やめろ 俺は神井を殺したくない、誰か止めてくれ
もう、身体が制御できない……
タケルはその瞬間、光輝く球体を自身の内側に発見する
エラブノハ ヌシダ
コノサキ ナニヲ ジクニ ウゴクカ キメルノハ ヌシ
センタクシハ ヌシニアル
ソレヲ ワスレルナ
光の球体がタケルの意識に触れた直後、タケルはそれを選ぶ
意識が消えそうな最中、自身の身体の闇の部分に無数の拳を打ち込んでいた
ズゴオオオオオオオオオンオオオオオオオオオオンッ
その凄まじい威力は闇を貫き、背後の洞窟の空間を貫き、巨大な穴を開けるほどだった
この時、不気味に闇は笑っていた
コレハ ハジマリニスギヌ
キサマハノガレラレナイ
開いた穴からは洞窟の外の景色が覗き込み、外の明かりが天上から差し込んでいた
あれは 何だったんだ………
消えゆく意識の中でタケルは考えていた
ズサッ
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ
しまった、さっきの衝撃で洞窟が崩れるか
青龍は傷だらけの身体をなんとか動かし、倒れる二人の身体を掴む
「間に合うか?」
ズゴオオオオオオオオオオッ
同時刻
その瞬間、ペドスドラコの惑星は静寂に包まれていた
それは多くの存在にとって、生まれて初めて感じるかのような、心の底から訪れる様な神聖なる静寂な瞬間
そう、時はやって来たのだ
二匹のレインボードラゴンが頭を下げた瞬間
時空は切り開かれ
三度の心臓を震わす程の大きな落雷の後
その場に現れたのは黄金を身に纏うような輝きを放つ龍神
「まっ、まっまっ、マジウキよ、本物の龍神様が、本当に現れたウキ」
あれが龍神……なんてエネルギー
光堂も、その神々しい姿をジッと見つめている
白龍も気がつけば頭を下げていた「おお…」
「本当に…本当に来たんだ龍神様」リタの足は恐れから来るものではない感情で震えていた
「我の名は龍神、全宇宙の存在達に告ぐ」
宇宙中、銀河全体の意識内に龍神の声が響き渡っていた
全ての惑星の存在達は龍神の存在、声を認識した
宇宙中の存在達が、ざわめく中
次の瞬間
龍神の言葉に
宇宙は闇に包まれ、絶望と化す
〜 アンブラインドワールド 〜




