〜 前兆 〜
龍神出現 前日
タケルと神井の二人はまだ洞窟内に居た
タケルは、これから生と死のやり取りをする神井と言う人間を前にして、初めて本当の意味で神井と言う存在を真に直視した事に気付く
無論、今までだって何度も神井について考え、思う事はあった
だが、今以上に神井と言う存在を直視はしていなかった
俺にとって神井って、どんな存在だったんだろう、そしてこれからは…
ここまでくるのに、俺はどこか神井を目標にしてたかも知れない
こいつに少しでも近づける様、置いて行かれないよう、俺の目の前には常に神井が居た
もし、こいつが居なかったら、俺は果たしてここまで、今居るこの自分にまで辿り着けていただろうか?
もし、ここまでの修行、経験、自分一人だったら…
正直好きじゃない、危ない奴だし、自分の事しか考えない、生命をなんとも思ってない…
でも、こいつが居たから、今の俺があるのも事実
正直、こいつの事を全て受け入れて好きとは違う、でも、もし何かあった時には見捨てる事も出来ないんだろうな
ダチ?
分からない
嫌い
こいつのありのままを受け入れるつもりもない、俺にとってこいつはダチと呼べる存在じゃないかも知れない…
ああ
例えこいつに嫌われていようとも、俺が嫌っていようとも
でもやっぱ…諦めんのはムカツク
望みはなんだ?
自分の望む今の状況の最良はなんだ?
俺はこいつを殺して、青龍を助けたいのか?
それが俺の本当にしたい事か?
いや、望んでない
今、俺はこいつに勝ちたいんだ
負けると言う事は、青龍は死に、俺も殺される、神井の手を更に、どす黒い血で黒く染めさせる事になる
これ以上、こいつをそんな風にさせたくない
青龍を死なせたくない
これが俺の今の正直な気持ちだ
なら、それを自分の為に実現させる
タケルが構える
俺は絶対に負けねぇぞ
神井は、タケルの立ち振舞、表情、そして目を見て、しっかりと理解していた
そして、呟く
「普段甘っちょろい事を抜かす割には本気で闘う覚悟を決めてるらしい、死にたくなきゃ俺に勝つしかない、この残酷な現実がお前の突き付けられたものだ。俺は貴様も、あの龍を躊躇無く殺す」神井は無表情で構えている
俺がずっと追っかけていた背中
今勝てなきゃ、全てが望まない未来に向かう
ここで 終わる
「神井、来やがれ。俺は絶対にお前に勝つ」
「不可能を応えるな、その実力はお前に無い」
青龍が二人のやり取りを見ていて、はっきり理解した事があった
神井、どうやらお前は本気でタケルを殺すつもりらしいな、微塵の躊躇も無く
本当にお前はそれで良いのか……お前にとってタケルは仲間ではないのか?
本当に殺すつもりなのだな…
青龍は現時点での二人の霊力の差を、しっかりと把握していた
タケルは確かに強い、だが神井、あいつは産まれながらにして、次元が違うと言っても過言ではない、霊力、戦闘に関しては間違いなく、この広大な宇宙の中でも特異な才を持つ天才児と言っても過言では無い、あそこまでの才を持つ者はこの宇宙でも、そうそう見つからないだろう……
今はまだ小さな存在だが、必ずこの者はとてつもない存在に化ける
タケル どうする?
今のお前じゃ奇跡が起こっても勝てない………
力の差をお前自身が一番分かってるはずだ
どうする?
この不可能とも言えるこの状況
お前はどうする?
ギィョウウオオオオッ〜〜
宇宙の不協和音とも言える様な、どこか人を不快な気分にさせる音が鳴り響くと同時に、神井の霊力が爆発的に膨れ上がった
「一撃で決めてやる」
「じゃあな」
大きな黒い円の形になった神井の霊力が二人を押し潰す様に上空から、凄まじい速度で迫り来る
ズゴオオオオオンンンッ
大きな音と共に
決着は一瞬だった
「さて、ここから出るとするか」
洞窟の外
現在のペドスドラコの惑星は先程までとは違う、何処か異様で不気味な慌ただしさを見せ始めていた
「光堂」マナが異変を察知した
「ああ、この星の霊気が異常な乱れをしてる」
「オカシイウキよ、ペレーの全身の毛が逆立ってるウキ、こんなの初めてウキ、とにかく怖いウキ」
動物の本能とでも言うのであろうか?ペレーの肉体が全身全霊で叫んでいた、何かとてつもない事が、この先に起こると
白龍も異変を感じ、動き出す
「この霊気の乱れはまさか……」
その瞬間 同時に二つの穴が時空間に突如現れ、空間を切り裂いては、中から七色に輝く二体の龍が現れる
惑星全体、何も無くなった野原に新たな息吹が芽生える様な、生命を感じさせる感覚が広がった
それを察知した白龍は叫ぶ「あれはレインボードラゴン様達の霊気」
直後、レインボードラゴン達のテレパシーがペドスドラコの惑星中に響き渡った
「約束通り、明日龍神様がこの地に姿を表すであろう、この宇宙の存続に大きく関わる出来事が明日起こる、今よりこの地は神聖な儀式に備える事となる、何人も龍神様の邪魔をする者は我々が許さぬ」凄まじく鋭く力強い眼光が、この惑星に存在する全ての者、いや、全宇宙の存在の心の中にはっきりと映っていた
「凄まじい……これがレインボードラゴン…こんな存在を人間に扱える筈がない」驚きを隠せずに居たのはペダ
「焦るなペダよ、レインボードラゴンは龍神の世話役に過ぎない、あの程度で驚いていたら我々は龍神を越えられぬぞ」
正直、黒龍自身も内心同じく驚いていた
久しぶりに見る龍神の使いレインボードラゴン、まさかこれ程までの霊力を持っていたとは、より高い霊力、深い観察眼を身につけたからこそ理解出来る、あの者達が在る境地を
今ここと言う時にありありとした威厳と実体を持ち二匹は存在していた
同じ惑星に居ると言うだけで感じとれるこのとてつもないパワー
黒龍の全身の毛穴は己の理解を越え、開ききっていた
そんなレインボードラゴンを遠くから見ている二つの影
「ったく、やっぱりこの任務降りりゃ良かったよ」
青いモヒカン頭の男は大きな溜息をつく
「仕方ないですよ、私達が適任者なので、ドラ・マスーヌ隊長」
腰まで伸びる長い金髪、そして特徴的な黄色の瞳の美しい女はレインボードラゴンをじっと見つめていた。
「クエヌ隊長、あんたも運が悪いな、今回の任務は相当ヘビーだぜ、こんな任務こそあの筋肉馬鹿のマッカースにやらせれば良いものを」
そう、その二人は宇宙連合の隊長であり、クリスタルスカルを創った十三人の叡智者の内の二人でもあった
「俺達が選ばれたって事は、絶対クリスタルスカル使う訳だろ?」
「まぁ、そうなるでしょうね」
「理由すら教えられず、一体何をやらされるんだろかね」
「クリスタルスカルを全て集めた事を知ってるのも隊長の内の僅か数名、それにスカルの創造者達、この任務の全貌全てを知ってる者は宇宙連合トップの総隊長のみです」
「総隊長は誰に頼まれたんだ?この任務は総隊長の決めた任務じゃあないだろう?」
「分かりません」
「嫌な予感がしやがるぜ」
その時だった
三つの大きな霊力がレインボードラゴンの前に立つ
「レインボードラゴン、貴様らの首はこの宇宙で高く売れる、貴様らが現れるのをずっと待ってたぜ、俺達は宇宙中を駆け巡るドラゴンハンター」
連合の隊長ドラは三人が何者かすぐに分かった
「あいつら全宇宙に手配されてる、三人兄弟の龍の狩人」
「どうします、サポートしますか?」
「いや、必要ねぇだろ」
ドラの瞳に映るのは、そこに居る筈とは思えぬ強者と呼べる存在
「やれやれ、邪魔だねぇ」
三人組の前に立ちはだかったのはなんと、ラルフォート・ナザレだったのだ
「あれは、ラルフォート どう言う事?」
驚くクエヌ
「さあね。ただ一つ言えるのは、あんな奴までこの惑星に来てるとは、ふぅ〜 こりゃ本当に面倒くせぇなぁ」
「久しいなレインボードラゴン」
ラルフォートが笑みを浮かべ叫んだ
レインボードラゴン達もラルフォートを見ている
「警戒する必要はない、あの邪魔者を消すだけだ」
「ラルフォートオオオオッ、俺達の狩りを邪魔する者は何者も許さん」
三人の首は既に消し飛んでいた
「くふふふふっ くふっ」
「あーっはっはっは 面白い、面白い この先に待つのは悲劇か喜劇か?どうなる?」未来が次の瞬間に、今までと全く別の宇宙になり変わる可能性がある現在
百全く真逆な世界に!!!
「クエヌ行くぞ」
「行く?何処に?」
「これから間違いなく、本物の化物級の連中がこの星に集まってくる、闇の王達の幹部、もしくは本人が来てもおかしくないくらいの事態だ、今クリスタルスカルを奪われる様な事だけは絶対に避けなきゃならない事態なんだよ」
「ったく、俺達の護衛くらいつけて欲しいもんだぜ」
この為か、情報が漏れる危険性を危惧し、他の隊長にすら知らせていなかったのは?情報が漏れるのを極力防ぐ為に…総隊長は連合のメンバーに裏切り者が居るとでもお考えなのか?
ルシ・サタンの幹部
エバーフーミーはペドスドラコに向かっている宇宙船の中で瞳を閉じ、この様子を見ていた、心の中で惑星内の霊気を察知していたのだ
ほぅ、レインボードラゴンにラルフォート、どうやら祭りは始まっている様だ
「テレポートはどうせできないだろ?」
「はい、エバーフーミー様、ペドスドラコの地場が二匹のレインボードラゴンの出現により乱れているので、今テレポートするのは危険かと」
要するに、ペドスドラコへは現在何者もテレポートで侵入出来ない訳だ、時間をかけて宇宙船で飛んで向かう以外には
まぁ、我々はそれを見越した上でベストなタイミングに向かっているので、丁度良い頃合いに着くがね
洞窟内
いつまでも開かぬ扉を前に神井の怒りが頂点に達する
「貴様、まだ生きていたのか?」
「ああ神井、正直意識は失ってたけど、まだ俺と青龍は生きてるぜ」
神井の腕に鋭く刃物の様な霊気が纏う
「ならば直接息の根を止めてやる」
神井……分かってたけど、お前は本当に躊躇ねぇんだな
俺は少しは、お前も、俺と同じ様に友達になれるかもなんて考えてくれてたんじゃないかって思ってたんだ
お前はこれだけ長く一緒に過ごした俺達の事、ほんとになんとも思ってないんだな、そんな想いがタケルの心を覆う
タケルは悲しい表情を浮かべ、直後タケルの全身を黄色い霊気が勢い良く包む
「来いよ神井、お前の好きにはさせねぇ」
「雑魚がほざくな」
睨み合い、再び対峙する二つの魂
〜 アンブラインドワールド 〜




