〜その者の名 〜
ヒュオオオオオオーーーーーッ
道来達の乗る宇宙船は日本に到着した
そこは大方、現代文明に慣れしたしんだ人間は間違いなく住まないであろう、辺鄙な山奥の未開の土地
「さすが一斎だ、こんな場所に住んでるなんて、地図にすら載ってないな」
ここに本当にあの一斎が居るんだ
真堂丸と死闘を繰り広げた一斎、あの日の記憶が蘇る
本当に強い男だった
太一の心臓の鼓動は一斉の居ると思われる場所に近づく程に、激しく速く脈打っていた
道来は崖の上にある祠に気付く
直感だった、あそこに一斎が居る
そして、それもまた同時に感じた直感だったのだが、何故だかとても嫌な予感がしたのだ
「太一、ジョー、すまないが。少しここで待っていてくれないか」
「何か嫌な予感がする」
道来の真剣な眼差しに太一が応えた
「本当は俺だって一緒に行きたいけど、待ってます」
太一は何かに気付いた様だった、道来のあの瞳は語っていた、中でお前達を守る事は出来ないと
道来の足を引っ張りたくなかった、ここから先は命に関わる、太一にもそんな予感がしていた
あの中に本当に一斎が居るのかも分からない……
だけど自分は道来さんの感覚と同じく自分の感覚に従う、ここは待つべきだ
「何かあったら、すぐに呼んでください」
「ありがとう」
道来は太一の心情を察知し、その言葉を述べた
それから、崖の上の祠に向かい一人歩き出す
「しかし太一さん、一斎の伝説は自分も聞いた事があります、あの真堂丸とほぼ互角の力を持った侍だったと、彼は本当に味方なんですよね?」
「さあな、正直分からない。何故あの人が現在ここに居て、何をしてるのか、全く分からないのが正直な本音だ」
「何も起こらなきゃいいですけど………」
その頃、場面は変わりタケル達の場所では
ここが龍と共存する星
ペドスドラコ
タケル達は白龍の背中から降りる
「俺たちをこんな山奥に降ろして、なんかあるのか?」タケルが言った
「ここに我が主、リタドラゴンが住む、ついてこい」
「しかし、やっぱこの星は苦手ウキ〜」
「どうしてだよペレー」
「空を見るウキよ」
タケルは空を見上げて声を上げた
「すげーーーーーーー」
上空には無数の龍が空を飛んでいたのだ
「俺が育った地球にだって、龍とかドラゴンとかそんな空想話は聞いた事あったけど、ああ言う話はあながち嘘じゃなかったのかもなぁ」
「ええ、タケル君、地球に残る龍やドラゴンの逸話は、実際に見た人が居るから残ってるのよ、それが証拠に絵とかで見た事あるでしょ」
「確かに、白龍なんて、小さい時、絵で見た日本の龍にそっくりだぜ」
「あそこの川の奥に森がある、そこがリタの住処だ、行ってみろ」
皆がリタドラゴンの住む、その森に入って行こうとする、その時
「お前はここに残れ」
白龍に呼び止められたのは光堂だった
「みんな、先に行っててくれ、すぐに向かう」
皆が森に向かったのを確認した後、白龍は話し始めた
「お前、タケルについてどこまで知っている?」
光堂は自分の舌を出す
「そうそう、呪印があるんだったな、その情報に関わる事を喋れば死ぬか」
「お前達は何故、タケルの事を知っている?」
「龍の中でも、一番の大親の様な存在が居るのは知っているな?」
「龍神」
「あの方が教えてくれた、闇の主の存在する、この宇宙の唯一の可能性であり希望、我々とてこの宇宙を愛している、そう簡単に暗黒の闇に沈める訳にはいかないのだ」
「それでお前達、龍族はタケルをどうするつもりだ?」
「龍族とて、タケルの事を知ってるのは龍神様くらい、自分は何故か龍神様に、この事を告げられたのだ、知る必要があると未来を見れる龍神様によって伝えられた。我はタケルを龍神様に会わせる事に決めた」
「龍神に?」驚く光堂
「あのお方は一ヶ月後、この地に姿を表す、それまでここにお前達は滞在して貰う」
光堂は少し考える
「良いだろう、だが何故一月も前にここに俺たちを連れて来た?」
白龍はほくそ笑む
「観察、本当に我々が信頼出来る心を持つ者か…のな」
再び場面は道来達の居る日本に戻る
ザッ
道来の立つ祠
その場所は、何処か神がかった神聖な空気が流れている様な、そんな感覚に道来をさせた
この中に一斎が………
暗い祠を歩き道来は進んで行く
凄い、信じられない程に、空気が研ぎ澄まされている、一息、呼吸をするのにこれ程までの緊張感
ここは一体?
外で待つ太一とジョー
太一は緊張と不安からか、何処か落ち着きがない、行ったり来たり歩き回っている
「本当にあの中に一斎が居て、もし文太の兄貴や真の兄貴の事を知っているなら、とにかく知りてぇ。だけど、まさかとは思うが、もし敵だったら?そもそも一斎が何故この宇宙に転生して生きているんだ?何か目的があるのか?」
「あ〜〜もう考えたら、余計分からなくなってくる」
「とりあえず、今は道来さんに任せて落ち着きましょう、太一さん」
ジョーの瞳は一点を見つめ、真剣になる
「太一さん、一つ聞きたい事が………」
「なんだジョー、真剣な顔して」
「インフィニティ、この名前に聞き覚えは?」
太一は真剣なジョーの顔を見て、表情を一変させる
「お前、何を調べている?」
「光堂さん達のチームが解散した原因ですよ、調べていたら、この名前にたどり着いた」
「あの事件は確か謎のまま…ジョー、これ以上の探索は止めるんだ、殺される事になるぞ、間違いなく厄介な者が関わっている、連合が隠す程の相手だ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオーー
真っ暗な祠を突き進むと、そこには一本の蝋燭に火が灯っていた
道来は一瞬言葉を失うも、すぐに喋り始める
「お前は本当に一斎なんだな」
「道来、待っていたぞ」
道来が言葉を失った理由
目の前に一斎が正座して座っていたから……
片目、片足、片腕を失った
「一斎、お前、ここで何をしている?」
一斎は、ほくそ笑む
「一番聞きたいのはそれじゃあないだろ、道来」
「真堂丸と文太、その二人の現在じゃないのかい?」
道来の表情が一変する
「知っているんだな二人の居場所を?二人が今、何をしているのか、どうなっているのかを?」
「ああ、知っている」
「頼むっ、教えてくれ」
一斎は微笑む
「まあ、座れ道来、話をしよう」
薄暗い祠の中、二人の会話は始まった
「僕はあの大帝国との戦で死んだ後、君達二人の向かった次元には進まなかった」
道来は思う
道理で、いつまで立っても一斎に会うことが無かった訳だ
「お前は何をしていた?」
「道来、君も知るように、この空間には無数の宇宙があり、無数の次元が存在する、何処に向かうかは各々の魂が決める、と言っても、多くの人々は無意識化でそれをしている様だが、僕は死んだ後、自身の魂が最も強くなる険しい道を進めるような次元に転生していた、僕自身がそれを無意識かに、切に願っていたから」
「そこは君達が向かったであろう、場所とは正反対の所だったかも知れない、僕はそこで生活している時に知る事になる、それは絶対に向かっては行けない空間とでも言おう」
道来は息を呑む
「その場所(一斎の向かった次元)に住む者ですら、向かわない真っ暗な空間を僕は発見したんだ」
道来にはすぐにピンと来た、間違いない、真堂丸が見つけたあの時空間への入り口
「入ったんだな一斎」
「ああ」
「僕は何も知らなかった。そこは、ほんの入り口だったんだ」
道来は取り乱す
「会ったのか?二人にそこで」
次の瞬間、道来に戦慄が走る
一斎も小さなため息をつく
「なっ、なんなんだ……この信じられない霊力は」
道来の震えは止まらなかった
「来たか、これでこの場所も終わりになっちまうな」一斎は祠の奥の壁にたてかけてある、大きな鏡に目をやり、立ち上がる
「なんだと言うのだ、あの鏡、あの中から何か得体の知れない力を感じる」道来は刀を抜く
「道来、まだ少し僕には時間がある」
「何を言っている一斎」
「落ち着くんだ道来、僕が住んでいた次空間を抜けて、僕が辿り着いた真の闇の次元の話に戻す」
道来の額から汗が流れ落ちた
「その抜けた先、それこそがここだったんだよ」
「なんだと」
「一斎、どう言う事だ?真堂丸は?文太は?それにあの鏡、鏡はなんなんだ、あっ」
来たか
大きな鏡から、突如出てくる大きな大きな真っ黒い腕
なっ、なんだとおっ、このとんでもない霊力は…道来の脚はあまりに想像を越えた霊力に圧倒され震えていた
道来の視界を闇が覆う瞬間
目の前に立ちはだかったのは一斎だった
「道来、よく聞くんだ」
その大きな腕を刀で必死に抑える一斎
「一斎、私も加勢する」
「いや、ここは僕に任せるんだ」
道来はその言葉に真堂丸を思い出す
一斎、この男を見ていると真堂丸を思い出す
「一斎、二人には会ったのか?」
「いや、会っていない」
「だけど、居場所は知っている」
「とにかく聞くんだ、道来」
「この鏡の中は、とある時空間に繋がっている」
「彼らに会ってはいない、だが間違いなく、彼等はこの中の何処かに居る」
「なんだって?」
「一斎、お前ここで何をしていたんだ?」
「援護していた、彼等をずっと」
道来は唖然とする
一斎、この男は一人、こんな所で誰にも知れず、こんな得体の知れない化物と闘っていた、こんなになるまで
援護?まさか。
「真堂丸と文太を助けていたんだな、たった一人で」
「そうだ、だけどこの問題は二人の事だけじゃないんだ、今、全宇宙が危機に晒されている」
「良いか道来、真堂丸、文太が関わっているのは、この次元の宇宙に大きく関わりがある、だが、彼等だけじゃ駄目なんだ、こっちの世界の闇の主を、ぐっ」一斎は口から血を吐いた
「一斎、大丈夫か?」
「確かな事がある、真堂丸と文太は生きている、感じないか、この中から、彼等の光を」
腕は、より一層膨らみ始める
「真堂丸、文太」
「道来、この宇宙を救いたくば、宇宙に増幅する闇の波動を下げ、なんとしても闇の主の完全復活を止めるんだ、忘れるな、彼等も共に闘っている」
道来は真堂丸の言葉を思い出す
"ここにはお前が必要なんだ"
そうか、やはり繋がっていた
「道来、どうやら僕はここまでだ、だがここは必ずせき止めてみせる、僕の愛したこの国に、こいつを行かせはしない」
「一つ、試したい事がある」
一斎から放たれる光の波動が、鏡の中に真っ黒い腕を押し込んでいく。
「一斎ーーーーーっ」
鏡の手前の所
一斎は微笑んだ
そして鏡の中に腕を押し込んでるところ、別の腕が出て来て、身体ごと引きずり込まれて行ったのだった
「一斎ーーーーーーーーーーーっ」
道来は鏡の中を覗き込む
中から無数の目ん玉がギョロリとこちらを見つめていた
「まずいっ、こちらに来る」
道来がそう思った瞬間、鏡の中、一斎が映る
中から鏡を叩き斬った
「良かった、うまくいった」
「一斎」
ズギャア ボゴオオッ ドギュウウウッ
鏡の中から、鈍い嫌な音がしたと同時に鏡は消えて行った
一斎
私達は、またお前に救われた
道来は悟った、今この時空間は一斉によって救われた
もし、あれがこちら側に来ていたら、日本は、いやこの宇宙は…消滅していたかも知れないと
必ず、お前の意思は私が受け継ぐ、この宇宙を破滅の道になど進ませない
道来は力強い覚悟の元、祠の外に向かい歩き出していた
〜 アンブラインドワールド 〜




