〜 真堂丸と道来 〜
ズゥオオオオオオーーーーンッ
その空間に鳴り響く「助けて」と言う叫び声
真堂丸と道来が立つそこには沢山の魂達が集まっていた
丸い透明な球体の前に無数に群がる魂
その球体は透明なのだが、何処か濁っている様に見えた
真堂丸と道来は前に進み、その球体を覗き込む
そこに映るのは多くの人々が泣き叫ぶ姿
「なんだこれは」道来が言った
その時、隣に居た魂が反応する
「君達はこの次元に来て、まだ日が浅かったね、説明するよ」
「僕らは地球で過ごしていた肉体を脱いで、今はここの次元に住んでいる、説明すると、ここは生きていた時から見ると、あの世みたいな場所と捉えてくれても構わない」
「驚くな、次元空間は無限にある、魂達は壮大な旅に出ているんだ。だけどね、時にあんな空間を生み出してしまう」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオーー
指差す先には球体
「あれはね、地獄すら生ぬるい、悪夢の様な危険な空間、時に多くの魂はあの場所に入ってしまう」
その言葉に道来が反応する
「しかし、亡くなれば全ての魂はこの場所に戻って来れるのだろう?ちゃんと帰れるのだろう?」
説明してる者の魂は言葉をつまらせる
「あんな波動の次元はここに長く居るが見たことない、多分彼等は………道を見失い、ここに戻るのは難しいのかも知れない、信じられないよ、あんな波動になるまでの空間世界に生きる者達の行く末が」
「なんて事だ、助ける事は出来るのか?」
「正直お勧めしない、自分には恐ろしくて無理だ。あの球体の中に飛び込めば、その次元で産まれ、生きれる事になる、だけどあの中だけは行っちゃいけない、確実に戻ってこれなくなる、そんな波動を放つ恐ろしい次元だ」
前に進み、歩き出す真堂丸
道来が肩を掴む
「真堂丸、行くのは止めるつもりはない、だが、文太達を待たなくて良いのか?もう会えなくなるかも知れないのだぞ」
その瞬間、道来はゾッとする事になる
なんだ………なんだ………
この恐ろしい感覚は…………
違ったのだ
違った
本当に恐ろしいものは、あそこでは無かったのだ
「道来、気がついたか?」
なんなんだ……なんなんだ…あの底の知れない闇、今まで見てきたものとはまるで異質、何なのだあれは?恐ろしい、道来の全身は正直にそれに反応していた
それはその球体のすぐ後ろに存在した
よりどす黒く、暗黒を表すかの様な黒い球体が、まるで呼吸する生き物の様に存在していたのだ
しかし、不思議な事があった
多くの魂にはその背後に存在してる球体が全く見えていない様なのだ
「本当にやばいのはあそこだ」真堂丸が口にする
「よせ、なんだか分からないが、あそこだけは行っては行けない気がする」道来の直感が叫んでいた
あそこにだけは入っては行けない
絶対に行っては行けないと
その時だった
「少し、話さんかのぅ」
その声に聞き覚えのあった二人は振り返る
背後に立つのは一山だった
「一山」
「お主らにも見えるんじゃな?あの暗黒の空間が」
「ああ」
「説明しよう、ついて来なさい」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオーー
次の瞬間、真堂丸と道来は静かな土地に居た
一山が語り出す
「ここなら、静かで良い、まずは大帝国の事、鬼道の事、あの地を救ってくれた事、礼を言わせてくれ」一山が頭を下げた
「あの場所」真堂丸が口にする
「あそこから、なにか感じたかな?」
「ああ、説明される前に何が待ち受けているのか、そして何故あそこにあれが存在しているのかが、なんとなく分かった気がした」
「本当か真堂丸」驚く道来
「なるほど」
沈黙の時が、少しの間流るる
静寂
音はなにも無かった
道来にはその沈黙が怖かった
何故なら、真堂丸と言う魂を知っていたから
この先にとる行動も
先程のあれは、人智を超えた存在に違いない、人間にどうこう解決出来るものでは無い様な気がした
一山が再び喋りだす
「いけない、あそこに行っては」
静かに放った一山のその言葉に、道来の頭は真っ白になる
先生が……そんな事を言うのか………
そんな場所なのか………
「実はのぅ、儂も以前、あそこに行こうとした。何故なら、誰かが入らねばならないと思ったから、だがのぅ、入る前に悟った
ここは、適さぬ者が入った途端に時空間が乱れるやも知れないこと、それと、己じゃ行っても何一つ出来ないと……己じゃ駄目だと、そして薄っすらとだが、視えてしまった、あの先に待つ場所がどんな所か」
「どんな場所なのです、先生っ」
「いや」真堂丸が口を開く
「ここから先は知ってはいけない」
「なんだと真堂丸、まさかお前、一人で行くつもりではないだろうな?」
「そんな事はゆるさんぞ、私がお前を一人で行かせるとでも思うか、行くなら私も一緒に行く」
その時だった
真堂丸が道来の顔を直視する
「お前は希望を信じるか?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオー
「先程最初に見た、球体の次元はほぼ救うのは不可能に近い状態の場所、あそこですら危険で、ここに戻って来るのは難しいと感じた」真堂丸の口調は何かに気付き、分かっていた様子だった
そして、次の言葉は意外なものであった
「道来、お前はあそこに進み、あの場所の者達を助けてやってはくれないか」
「俺が進むべきはあそこではない、あの背後にあった先だ」
オオオオオオオーーーーオオオオオオオーーーー
「太一が戻った後に向かうんだ、あそこには、お前達が必要だ」
「待て、一体何だと言うのだ、私には訳が分からぬ」
「道来、今説明は出来ないんだ」
一体何が起こっていると言うのだ?
「なら、真堂丸、お前だって文太を待って、せめて、会ってからにしてはどうだ」
「いや、一刻を争う事態になっている」
この時、道来は思った、真堂丸が文太に会って伝えれば、必ず文太もついて行くだろう、文太を巻き込まない様にしたのかも知れないと
「道来、今は俺の言葉を信じてくれ、あの球体の時空間は、お前に任せる」
この時、真堂丸には何が見えていたのだろうか?
「俺は入る前に、少しやっておきたい事がある、その後すぐに向かう」
真堂丸はこの時点で決断していた、決めていたのだ
絶対に向かってはいけない、その道に進む覚悟を
分かっていた真堂丸が決めた事を貫き通す事を…
次に会ったのは、真堂丸があの暗黒の空間の様な場所に進む直前
「真堂丸、教えてくれ、何が起こっていると言うのだ?何が視えたんだ?」
「今言えることはひとつ、俺とお前があそこに進む事で、ほんの少しかも知れないが、何かが変わるかも知れないと言う事だ。道来、俺の進む場所とお前の進む場所は無関係ではない、繫がっている、だが、今これ以上喋るとお前の身が危険になる」
なんだと
背後から声が
「君達は、あの時空間に向かい、多くの魂を助ける決断をしたんだな」一山だった
一山は真剣な眼差しを浮かべていた
「進む覚悟、戻れぬ覚悟を決めたうえか?」
「戻れぬ覚悟を決めては、進まない」
一山の口元が少し緩んだ
「それなら、行くのを赦そう、もし、お主が死の覚悟を決め、この先戻らぬつもりなら、先に進む事を全力で止めるつもりでいた、他の命を尊重する様に、君自身の命の大切さを忘れていたのなら、きっと文太君なら同じ事を言ったと思う、だがその心配は無さそうじゃの」
真堂丸は一山の言葉をしっかり聞き終え、頭を下げてから、先に進むべき道に歩み出す
「それから…」真堂丸は何かを言おうとする
道来にはすぐに分かった
「文太だろう。分かっている、私は彼等を待ってから向かう事にする、お前の気持ちから、きちんと伝えるから安心して大丈夫だ」
真堂丸は何処か安堵の顔を浮かべてから、再び歩き出す
私は先に進む友の背中を見ていた
「真堂丸、約束だ。必ず、また再会するぞ」
「ああ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオーー
それが真堂丸を見た最後の姿
今、道来の目の前には、現在がしっかりと映っていた
道来の進んだ球体の空間の先に待っていたもの
それはここの世界であった
「道来さん着きました、一斎が居ると言われている場所に」
道来は頷く
「行くぞ」
〜 アンブラインドワールド 〜




