〜 因縁 〜
その頃、惑星スフェア全体を見えない透明なシールドが包み出す
それは霊力を研ぎ澄まし、余程意識しなきゃ気付かない程の感知の難しいシールドであった。
もちろん問題の渦中にいる、光堂、神井、マタスーバは気付いている。
「こんなシールドがこの惑星を覆った事を、民は気付かないだろう、これでこの惑星から外に誰も連絡はとれない、出入りも不可能だ」マタスーバが言った
「だがチャンスでもある」光堂は上空を見上げる
「このシールドはpipテイット302型のシステムZ3056のものだ、この旧型のpipはそこまで膨大な防御エネルギーは使えない、つまりpipシステムの大半のエネルギーを惑星の出入りをせき止めるのに使ったって事だ」
「だが、それで充分ではないですか?これでもう我々はこの惑星から誰も逃げられない」
「逃げられない、確かにそうだが、俺達がクリストフに辿り着くのは容易になった」
マタスーバは思う、彼は何者なんだ、あのシールドを感知しただけでpipシステムの型まで完全に把握している、余程の知識がなければ不可能だ
そして、問題解決に向かう意識の強さ
この状況の中、この人数で、本当になんとかするつもりで動いている
これが宇宙連合と言う組織の一員
なんと、頼もしい存在だろう
光堂はそっと自身の腹部に手を当てる、血が滲むのを、着ているロングコートでそっと隠した
現状六割の力ってところか
それにしても流石だなマナ、あの一瞬で深手の俺の傷をここまで回復させるとは。
それにしても、クリストフの部下は後どれくらい居るんだ?
さっきの程度の奴なら問題ないが、最初に会ったあの子供くらいのレベルが何人もだと厳しいか
先程のあいつが、下っ端くらいのレベルでないことを祈るしかないな
光堂はほくそ笑む、まあ神井の奴がプッツンしてるのは、好都合だな
「二人共急ぐぞ」光堂が声を張る
同時刻、タケルはバルベインを必死に探していた
あの怪我であいつ一体何処に行きやがったんだよ。
それになんか変なんだよなぁ、さっきと何か感覚が違うっつーか、まぁ良いや(それは惑星を覆ったシールドによる影響の、感覚の変化だった)
「バルベイン〜〜」
バルベインの居た病室ではマナが異変に気付く
「変だわ、テレパシーがこの惑星外の人と取れないの」
「マナは回復するのに霊力使って、疲れてるんじゃないウキか?」
「いえ、何か異変が起こってるのかも、さっきから光堂とも連絡が取れないし、それに少し違和感が」
クンクン鼻をヒクヒクさせるペレー
「マナ確かにおかしいウキよ、空気の匂いが何か違う感じがするウキ」
ペレーの発言に、マナが瞳に霊力を集中し空をみる
「ペレー、この惑星にシールドが張り巡らされてる」
「pipシステムが発動してるわ」
「まっ、まじウキかぁ〜〜〜」
ポッポに取り憑いた悪霊はポッポの背後で笑っていた
「あの調子じゃあの女、今世も俺達に殺されやがったなポッポ、お前また人を殺したんだぞ、罪深い奴め、どうしようもない罪人め」
ポッポには声は聞こえないが、その悪意ある念をもろに受けていたのだ
その時だった
「ポッポ」
「さっきのお姉ちゃん、無事だったんだね」
その瞬間背後から姿を現す悪霊
「生きてやがったのか」
「貴様、キュアス。いい加減ポッポの魂を解放しろ」
「やだね、こいつの身体は居心地が良い、永遠に俺の物だ」
「ポッポ、目を覚ませ。お前の持つ罪悪感は、こいつの創った幻想なんだ」
意味の分からないポッポ
「こいつって誰?」
ポッポには背後に立つ悪霊の声も姿も、認識出来ていなかった
それに過去世から握っている自身の心の底に埋もれる罪悪感にも気付いていない
「お前、今世もまた殺されたいらしいな、グハハハ、ポッポの魂に。こいつはまた罪悪感を重ねて行く、貴様のおかげで俺はなんとも心地良いぜ」
「今回はそうはいかない」
バルベインの両手から霊気の塊が放出され、悪霊となったキュアスの全身を包む
「うっ、動けねえ」
「お前は優しいポッポの魂をいつまでも縛り、苦しませる。これ以上は私が許さない」
その時だった、ポッポの意識に声がまとわりつく
「お前は人殺しなんだ、この女はお前が殺した男を殺そうとしている、罪を償いたければ、俺を守るためにこの女を殺せ」
ポッポの意識が薄らいでいく
「ポッポしっかりしろ、まやかしの声じゃなく、本当に大事な自身の心の声に目を開くんだ」
お前は人殺し
強い念が頭に鳴り響く
ポッポの目が白目になる
「僕は罪深い存在、だからこの男の人を守らなきゃ」
「ポッポ」
ヒャツハッハッハッハアッハッハッハっ
キュアスの高笑いが響き渡る
「そうそう、お前の罪悪感が俺を強くする」
次の瞬間、地面に転がっていたのはバルベイン
キュアスはバルベインの頭を踏みつけた
「あ〜〜失敗、また失敗、お前たちは永遠に失敗し続けるんだよ」
その言葉に、普段は強く自身の心を保っているバルベインの心も折れかかる
今世もまた駄目なんだ…悔しい、私はポッポの魂をまた救えないのか
いや、諦めるな
バルベインは再び顔を上げた
「頼むキュアス、約束する、ポッポの魂を解放してくれたら、私は永遠にお前の魂の奴隷になると約束する」
「ほぉ、永遠に、なるほどなるほど」
キュアスは考える、確かにこいつの霊力はポッポなんかより全然強い、こいつに完全憑依すりゃあ、俺は更に強くなるな
だが待て、こいつが俺に憑依され続ける保証はあるか?
ポッポの身体から離れた瞬間、奴は手のひらを返すかも知れねぇ
やはり人質が必要
「良いだろう、お前の魂を奴隷にさせてもらう」
「本当か?はやくポッポを解放してくれ」
「いや、駄目だ。見ての通りお前は俺達に手が出せねぇ、お前も瀕死の状態、俺がお前の魂も、ポッポの魂も両方支配する」
「なんだと」
「さあ、ポッポ、お前はまた人殺しになるんだ、さあ、あの女を殺せ」
わっ私のせいだ、私のせいでポッポまで永遠に逃げられなくなる、そんなっ
バルベインから零れ落ちる涙
ごめんねポッポ、私は最低だ、あなたをもっと深い闇の中に落としてしまう
「頼むキュアス、絶対に約束は守る、だからポッポだけはお願いします」
ニヤリ
「ヤダね」
バルベインの視界は真っ暗になる
「さあ、ポッポやれ」
「ポッポ、目を覚まして」
ズガアアアアアアアアアアアアンッ
突如辺りに凄まじい音が鳴り響いた
皆は音のする方に目をやった
「あ……」
バルベインは涙とともに口に手を当てる
「タケル…」
タケルは怒っていた
「お前何してんだ」
「何だてめぇは」
その時バルベインが叫ぶ
「ふざけんなよタケル、お前はなんも関係ないだろ、帰れ」
お前まで巻き込まれて、傷つかないでくれ、バルベインの本心だった
ギリッ
「関係ないわけねーだろ」
「俺達は友達なんだぞ」
タケル………
「おいっ、くそ野郎、その子を離せ」
「なんだとクソガキが」
タケルの拳がキュアスの顔面に打ち込まれる
ズゴオオオンゥ
こいつ、つっ、つぇえ
「速く離れろよ」
アッハッハッハッ
「ポッポ、この男も悪い奴だ、俺を殺そうとしている、さあ、この男を殺せ」
その直後意識の無いポッポがタケルを睨みだす
「完全に取り憑かれてやがる」
「タケル、その子に手を出すな」
ゆっくりとタケルに近づいて行くポッポ、タケルは霊力をすべて消し、ポッポと向き合った
「タケル、やめろポッポの後ろには悪霊が潜んでいるんだぞ霊力は解くな、死ぬぞ」
「死にな、クソガキ」
ズバアアアンッ
次の瞬間、バルベインは言葉を失った
タケルの拳がポッポごとキュアスを貫通していたのだ
〜 アンブラインドワールド 〜




