↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転移したら、何のスキル?スキル名が文字化けで役立たず扱いなんですけど?  作者: 奈汪翳芳
第1章 異世界転移とスローライフの始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/54

第49話 辺境の村で新築祝い! ……その前に、我が家の見学会?

 翌日の昼過ぎ。

 俺たちの家の前には、村長をはじめとする村人たちが集まっていた。

「皆様、本日はお招きいただき、ありがとうございます!」

 村長が代表して頭を下げる。

「いやいや、こちらこそ。わざわざありがとうございます」

 俺も頭を下げた。

 そもそも、今回の新築祝いを提案してくれたのは村長だった。

 俺たちが家を建て終えたことを知り、村の集会所でささやかな宴会を開こうと言ってくれたのだ。

 もちろん、俺たちに異存はなかった。

 村の人たちには、土地を用意してもらったり、材料について相談に乗ってもらったりと、何かと世話になっている。

 感謝の気持ちを伝える、いい機会だと思った。

「それにしても……」

 村長が、俺たちの家を見上げた。

「改めて見ると、立派なものですな」

「ありがとうございます。まだまだ試している設備も多いですけどね」

「ほう。設備ですか」

 村長の目が、きらりと光った。

 ……ん?

 今、ちょっと反応が変わらなかったか?

 そう思った直後、村長の後ろから村人たちが口々に話し始めた。

「中はどうなっているんだろうな?」

「窓も大きいし、明るそうだ」

「屋根も変わった造りだな」

「台所も使いやすいと聞いたぞ」

 ……なるほど。

 そりゃそうだ。

 村人たちからすれば、見慣れない造りの家が四軒も並んでいるのだ。

 気になるのも当然だろう。

 俺だって、異世界に来たばかりの頃に、こんな家を見かけたら中を見てみたいと思う。

「海斗さん」

 隣にいた唯衣が、俺の袖を引いた。

「みんな、家の中が気になるみたいですね」

「みたいだな」

「せっかくですし、見てもらったらどうですか?」

「……そうだな」

 俺は村長たちに向き直った。

「もしよければ、宴会を始める前に家の中を見ていきますか?」

「よろしいのですかな!?」

 村長が身を乗り出した。

「もちろんです。ただ、まだ試作段階の設備もありますので、何でも完成しているわけじゃありませんよ」

「それでも十分です!」

 村長が嬉しそうに頷いた。

「皆も、それでよいな?」

「もちろんです!」

「ぜひ見せてください!」

「どんな造りになっているのか、ずっと気になっていたんです!」

 村人たちの反応は上々だった。

 こうして、予定にはなかった新築見学会が始まることになった。

 ◇ ◇ ◇

 まずは、俺の家からだ。

「どうぞ。足元に気をつけてください」

 玄関から中へ案内すると、村人たちが一斉に周囲を見渡した。

「おお……!」

「これは広い!」

「床が平らだな」

「壁もきれいに仕上がっている」

 俺たちが建てたのは、丸太を組み上げたログハウスだ。

 壁や屋根にはまだ改善の余地があるものの、雨風をしのぎ、生活するための家としては十分に形になっている。

 村人たちは、壁や床を眺めながら感心した様子で話し合っていた。

「この窓は、どうやって作ったんです?」

「木材を組み合わせて、開け閉めできるようにしています。細かいところは、村の職人さんにも相談しました」

「なるほど……」

 俺は台所へ案内した。

「こちらが台所です」

「おおっ!」

 村人たちの視線が、一斉に流し台へ集まる。

 作業台の横に設置された流し台。

 その上には水を出すための蛇口があり、下には排水管がつながっている。

「水を使う場所が、家の中にあるのですか!?」

「はい。井戸から水を汲み上げて、いったん高い位置にある貯水槽へ送っています。そこから管を通して、ここまで水を引いているんです」

「水を汲みに行かなくてもいい、と……?」

「毎回、井戸まで行く必要はありませんね」

 村人たちが顔を見合わせる。

「それは便利だ……!」

「ただし、貯水槽や管の点検は必要です。水も、今は砂や砂利で濁りを取り除いている段階ですから、そのまま飲めると保証できるわけではありません」

「なるほど。便利なだけではなく、管理も必要なのですな」

「そういうことです」

 続いて、魔導コンロを紹介した。

「これは火を使うための道具です。魔石と魔法陣を利用して、熱を出せるようにしています」

「魔石で火を!?」

「火そのものを出すというより、魔力を熱に変える仕組みですね。まだ試作段階なので、使う前には必ず確認しています」

 村人たちは、魔導コンロを囲むように集まった。

「薪をくべなくても料理ができるのですか?」

「はい。火力もある程度調整できます」

「それは……すごい」

 ただ、俺は念を押した。

「便利ではありますが、まだ改良中です。勝手に分解したり、魔法陣をいじったりするのは危険なので、そこは注意してください」

「分かりました!」

 村人たちは真剣な顔で頷いた。

 ……うん。

 ちゃんと聞いてくれて助かる。

 ◇ ◇ ◇

 次は、風呂場だ。

「こちらは……?」

 村人の一人が、浴室の入口で首を傾げた。

「風呂場です」

「ふろば?」

「お湯を張った大きな浴槽に入って、身体を温めたり洗ったりする場所ですね」

 俺が説明すると、村人たちは不思議そうに顔を見合わせた。

「身体を洗う場所なら、井戸や川でもよいのでは?」

「もちろん、そういう方法もあります。ただ、寒い日でも家の中で身体を温められますし、ゆっくり休めます」

「なるほど……」

 浴室の中央には、木製の浴槽が置かれている。

 その脇には、湯を張るための管がつながっていた。

「お湯は、外に設置した釜で温めて、管を通して浴槽へ送ります」

「火を使う場所が、浴槽から離れているのですな」

「はい。火元を浴室から離すことで、安全に扱いやすくしています。ただ、管の接続部分や温度の確認は欠かせません」

 村人たちは、浴槽をのぞき込んだり、床を眺めたりしている。

「この床は、水が流れるようになっているのですか?」

「そうです。水が一か所にたまらないように傾斜をつけて、排水管へ流れるようにしています」

「床に傾斜を……」

「排水は台所と同じ処理設備につながっています。ただ、まだ処理方法を確認している途中なので、排水が安全に浄化できていると分かるまでは、勝手に川へ流すことはできません」

「水を使った後のことまで考えているのですな」

「ええ。使うだけでなく、後始末も大切ですから」

 俺が答えると、村長は感心したように何度も頷いた。

「いやはや、これは勉強になります」

 さらに、浴室の壁際にある魔導換気扇も紹介した。

「これは、湿気を外へ逃がすための装置です」

「風を起こす魔法道具ですか?」

「そうですね。魔法の力で羽根を回して、空気を外へ送り出します」

 蝉丸が改良に関わった部分を説明すると、村人たちはまた驚いた。

「魔法で風を起こすだけでなく、空気を外へ出すこともできるのか……」

「ただし、これもまだ改良中です。動作を確認しながら使っています」

 台所にも別の換気扇があることを説明すると、村人たちは興味津々だった。

 ……なんだか、家の設備を紹介するというより、発明品の展示会みたいになってきたな。

 ◇ ◇ ◇

 俺の家を見終えると、今度は唯衣の家へ移動した。

「わあ、こっちも素敵!」

 村人たちの中には、家ごとの違いを見比べている人もいた。

 唯衣の家は、内装に彼女らしい工夫が多い。

 小物を置く棚。

 窓辺の飾り。

 使いやすいように整理された台所。

「この棚、かわいいですね」

「ありがとうございます! 使いやすいように、自分で配置を考えたんです」

「なるほど。見た目だけでなく、使いやすさも考えているのですね」

 唯衣は嬉しそうに笑った。

「はい! 毎日使う場所ですから!」

 続いて慎之助の家。

 こちらは、家具の配置が実用的で、荷物を置く場所も多い。

「おお、広い棚ですな」

「酒や食料を置くためにな」

「酒、ですか?」

「大事なものだからな!」

 慎之助が胸を張る。

「……慎之助さん、それは宴会で説明してください」

「なぜだ!」

 村人たちが笑った。

 最後は蝉丸の家だ。

 彼の家には、本棚や作業机があり、錬金術の道具を整理するための棚も設けられていた。

「この道具は、何に使うのですか?」

「錬金術の作業に使います。薬品や素材を扱うので、用途ごとに分けているんです」

「ずいぶん細かく整理されているのですな」

「必要なときに、すぐ取り出せるようにしています」

 蝉丸は少し得意そうだった。

「作業場は、使いやすさが重要ですから」

 こうして四軒すべてを見学し終えた頃には、村人たちの表情がすっかり変わっていた。

 単に珍しい家を見たというだけではない。

 水の使い方。

 火の扱い方。

 湿気への対策。

 道具や家具の配置。

 俺たちが暮らしやすくするために考えた工夫の数々に、興味を持ってくれたようだった。

「皆様、本当にありがとうございました」

 村長が深々と頭を下げる。

「いえいえ。こちらも、見てもらえてよかったです」

「これほど工夫された家を見せていただけるとは思いませんでした」

「まだ試している途中のものも多いですからね。安全性を確認できていないものは、簡単に真似しないでください」

「承知しました」

 村長は真面目な顔で頷いた。

「では、そろそろ集会所へ参りましょう。宴会の準備も整っているはずです」

「そうですね」

 俺たちは村人たちと一緒に、集会所へ向かった。

 ◇ ◇ ◇

 集会所に入ると、長い机の上には料理が並べられていた。

 焼いた肉。

 煮込み料理。

 焼きたてのパン。

 野菜のスープ。

 村で採れた果物。

 そして、村で造られた果実酒。

「おお……!」

 慎之助が目を輝かせた。

「これはいいな!」

「さっきまで酒の話をしていたでしょう」

「それとこれとは別だ」

「何が別なんですか……」

 村長が笑う。

「さあ、皆様。今日は新しい家の完成を祝う宴です。遠慮なく召し上がってください!」

「ありがとうございます!」

 俺たちは頭を下げた。

 こうして、新築祝いの宴会が始まった。

 最初は、俺たちが異世界で暮らし始めたことや、家を建てた苦労話が中心だった。

「最初は、木を切るところからでしたからね」

 俺が言う。

「大変だったでしょう」

「ええ。木を切るのは何とかなっても、運ぶのが大変で」

「確かに、大きな木は運ぶだけでも一苦労ですからな」

 村人たちが頷く。

「でも、こうして家ができたんです。皆さんのおかげでもあります」

「いやいや、我々は少し相談に乗っただけです」

「それでも助かりました」

 俺は素直に礼を言った。

 唯衣も笑顔で続ける。

「村の皆さんが親切にしてくれるので、安心して暮らせそうです!」

「それは何よりですな」

 村長が嬉しそうに頷いた。

 やがて、話題は家の設備へと移っていった。

「ところで、先ほどの水を送る仕組みですが……」

 村人の一人が、遠慮がちに尋ねる。

「井戸から水を汲み上げる装置は、どなたが作られたのですか?」

「ポンプの部分は、村のダンさんにも相談しました。貯水槽や配管の配置は、俺たちで考えたんです」

「なるほど……」

「ただ、まだ水質や設備の耐久性を確認している段階です。すぐに同じものを作れるとは限りません」

「それでも、参考になります」

 別の村人も口を開いた。

「魔導換気扇というものも、興味深いですな。家の中にこもる煙や湿気を外へ出せるなら、便利でしょう」

「ええ。ですが、換気のための空気の通り道も必要です。扇風機のように羽根を回すだけでは、十分に空気が入れ替わらないこともありますから」

 蝉丸が補足する。

「装置だけでなく、空気の入口と出口を考える必要があります」

「ふむ……」

 村人たちは、真剣な顔で話を聞いていた。

 俺たちとしても、こうして興味を持ってもらえるのは嬉しい。

 ただし、まだ実験中の設備もある。

 すべてをそのまま村へ広めるわけにはいかない。

「まあ、まずは俺たち自身が使いながら、問題がないか確認していくつもりです」

「それがよいでしょうな」

 村長が頷いた。

「安全に使えると分かれば、村の暮らしにも役立つかもしれません」

「そうですね。できることがあれば、相談には乗りますよ」

「ありがとうございます」

 村長は、ほっとしたように笑った。

 ◇ ◇ ◇

 宴会は、夕方になっても続いていた。

 村人たちは料理を楽しみ、俺たちも勧められるままに食事を取った。

 唯衣は村の子供たちと話し込み、蝉丸は錬金術に興味を持つ若者から質問攻めにされている。

 慎之助はというと――。

「この果実酒、香りがいいな!」

 すっかり村の酒好きたちと意気投合していた。

「だろう? うちの村で採れた果物を使っているんだ」

「へえ! どんな果物を使うんだ?」

「季節によって違うな。リンゴに似た実や、赤い小さな実も使うぞ」

「なるほど……」

 慎之助は真剣な顔で酒を味わっている。

 ……普段から、あれくらい真面目に仕事の話をしてくれればいいのに。

 そう思っていると、慎之助が俺の肩を叩いた。

「海斗!」

「何です?」

「この村、いい村だな!」

「それはよかったです」

「酒も美味いし、人もいい!」

「はいはい」

「いつか、もっといろんな酒を造れるようにしたいもんだ!」

「……本当に酒のことしか考えてないんですね」

「失礼な! 今日は新築祝いだぞ!」

「それは分かってます」

 俺が苦笑すると、近くにいた村人たちも笑った。

 その後も、宴会は和やかに続いた。

 家を建てた苦労。

 村での暮らし。

 これからやってみたいこと。

 話題は尽きなかった。

 そして、宴会の終わりが近づいた頃。

 村長が俺たちの前に立った。

「皆様、本日は本当にありがとうございました」

 村長は深々と頭を下げた。

「新しい家が完成したこと、村の者一同、心よりお祝い申し上げます」

「こちらこそ、ありがとうございました」

 俺たちも頭を下げる。

「これからも、何か困ったことがあれば遠慮なく相談してください。村としても、皆様が安心して暮らせるよう協力していきたいと思っております」

「ありがとうございます」

 俺は、改めてこの村に来てよかったと思った。

 異世界に転移してから、まだそれほど時間は経っていない。

 帰れるかどうかも分からない。

 それでも。

 この村には、親切な人たちがいる。

 俺たちを珍しい存在として見るだけでなく、同じ場所で暮らす仲間として受け入れようとしてくれている。

 そのことが、何より嬉しかった。

 宴会が終わり、俺たちは家へ戻ることになった。

「今日は楽しかったね!」

 唯衣が笑う。

「そうですね」

 蝉丸も頷いた。

「村の人たちが、設備に興味を持ってくれたのはよかったです」

「ただ、まだ試作段階のものも多いからな。焦らず、ひとつずつ確認していこう」

 俺が言うと、二人も頷いた。

 慎之助は満足そうに腹をさすっている。

「いやぁ、食った食った。飲んだ飲んだ」

「明日、二日酔いになっても知りませんよ」

「大丈夫だ!」

「その自信はどこから来るんですか……」

 俺たちは笑いながら、夜道を歩いた。

 家に帰れば、使いやすい台所がある。

 水を使える流し台がある。

 温かい風呂もある。

 もちろん、まだ改良すべきところは多い。

 それでも、ここは俺たちの家だ。

 自分たちで考え、工夫し、少しずつ作り上げた場所。

「……ようやく、生活が始まるんだな」

 俺は夜空を見上げた。

 満天の星が輝いている。

 日本では見たことがないほど、たくさんの星が見えた。

 異世界での生活は、まだ始まったばかりだ。

 これから何が起こるのかは分からない。

 けれど――。

「まあ、何とかなるか」

 俺は小さく笑った。

 こうして。

 俺たちの新築祝いは、無事に終わった。

 そして翌日。

 俺たちの辺境スローライフは、いよいよ本格的に始まることになる。


いつも読んでいただきありがとうございます。


もしよろしければ、ブックマークと評価の方もよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。