第24話 スキル検証大会! ……ストレージと収納って何が違うんだ?
翌朝。
俺は、テントの前で腕を組んでいた。
「……よし。今日は家造りを中断しよう」
「「「えっ?」」」
唯衣、慎之助さん、蝉丸が同時に声を上げた。
「ちょっと待ってください、海斗さん。昨日、あれだけ木材を集めたのに?」
蝉丸が眼鏡を押し上げる。
「だからこそだよ」
俺は真剣な顔で答えた。
「昨日、俺のスキルが3つとも判明しただろ?」
「インターネット検索、ストレージ、身体能力強化ですね」
「ああ。それに蝉丸も収納スキルを持っていた」
「はい」
「そこで、ふと思ったんだ」
俺は腕を組み直した。
「ストレージと収納って、似たような能力だよな?」
「……確かに」
蝉丸が頷いた。
「私の収納も、海斗さんのストレージも、物をしまって必要なときに取り出せる能力ですからね」
「そうなんだよ。じゃあ、何が違うんだろうって」
昨日、俺はストレージを使って丸太を収納した。
そして、好きなタイミングで取り出すことができた。
一方、蝉丸も収納スキルを持っている。
普段は道具や小物を入れているらしいが、基本的な使い方は俺のスキルとよく似ている。
だったら、わざわざ別の名前がついている理由があるのではないだろうか。
もちろん、単に呼び方が違うだけという可能性もある。
だが、せっかくスキルという不思議な能力が存在する世界に来たのだ。
確認できることは、今のうちに確認しておきたい。
「後になってから『そんなことができたのか!』って後悔するのは嫌だからな」
「分かります!」
唯衣が勢いよく頷いた。
「私も、自分のスキルをもっと知りたい!」
「俺も賛成だ」
慎之助さんが腕を組む。
「特に、俺のスキルが酒造りに役立つなら、今のうちに調べておきたい」
「……慎之助さん」
「何だ?」
「検証する理由が、酒なんですね」
「当然だろう!」
「胸を張って言うことじゃありません」
俺は思わず苦笑した。
だが、考え方自体は間違っていない。
俺たちはそれぞれスキルを持っている。
しかし、その効果を完全に理解しているわけではない。
名前だけで判断して、実際の能力を確かめていないものも多いのだ。
「よし。今日はスキル検証大会だ!」
「おー!」
唯衣が元気よく手を挙げた。
こうして、俺たちの家造りは一時中断。
予定を変更して、それぞれのスキルを調べることになった。
……まあ、家造りを効率よく進めるために、家造りを中断してスキルを調べるというのも、何だか妙な話ではあるけれど。
◇ ◇ ◇
最初に検証するのは、俺のストレージと蝉丸の収納スキルだ。
「まずは、基本的な使い方を確認しよう」
俺は近くにあった小さな木片を手に取った。
「俺の場合、こうして収納したいと思えば入れられる。取り出すときも、意識するだけでいい」
木片が消え、次の瞬間には元の場所に現れた。
「私も同じですね」
蝉丸も自分の収納スキルを使う。
木片が消え、再び現れた。
「……うん。基本的な使い方は同じだな」
「そうですね。少なくとも、物を出し入れするという点では違いがなさそうです」
俺は頷いた。
では、ほかに違いはあるのだろうか。
収納できる量。
収納できる物の種類。
収納中の状態。
そして、収納した物に対して、ほかのスキルを使えるかどうか。
調べるべきことはいくつもある。
「まずは、容量を比べてみましょうか」
蝉丸が提案した。
「どれくらい入るのか、試してみるわけですね」
「ああ。俺も、丸太を何本か入れただけだからな」
俺たちは、昨日集めた木材を使って検証を始めた。
細い木材。
太い丸太。
枝。
それぞれを順番に収納していく。
結果として、俺のストレージも蝉丸の収納も、今のところ問題なく木材を入れることができた。
ただし、容量の限界については、すぐには分からない。
「これだけじゃ、どちらがたくさん入るのかは判断できませんね」
蝉丸が言った。
「無理に限界まで詰め込む必要もないしな」
「そうですね。何か変化が起きたら、そのときに確認しましょう」
ひとまず、容量については保留だ。
次に調べるのは――。
「収納した物の状態、かな」
俺が言うと、蝉丸が頷いた。
「それは確かに気になりますね」
収納している間、物はどうなっているのか。
ただ別の空間にしまわれているだけなのか。
それとも、収納した物に何らかの変化が起きるのか。
名前だけでは判断できない。
「じゃあ、水と食料を使ってみよう」
俺たちは村で水の入った容器と、朝食用に用意していたパンを借りた。
水の入った容器を2つ。
パンを2つ。
それぞれを、俺のストレージと蝉丸の収納に分けて入れる。
「これで、しばらく様子を見ましょう」
「どれくらい待つ?」
「半日くらいあれば、何か違いが分かるかもしれません」
「よし。じゃあ、夕方に確認しよう」
俺たちは、収納した物を取り出さずに、ほかの検証を進めることにした。
この時点では、どちらにどんな特徴があるのか、まだ分からない。
ストレージと収納。
名前が違うだけなのか。
それとも、何か根本的な違いがあるのか。
それを確かめるのが、今日の目的だった。
◇ ◇ ◇
次は、建材の加工についてだ。
「蝉丸。錬金術って、具体的には何ができるんだ?」
俺が尋ねると、蝉丸は少し考えた。
「基本的には、素材の性質を変えたり、複数の素材を組み合わせたりできます。もちろん、何でも自由に変えられるわけではありませんが」
「例えば、木材を加工することも?」
「やったことはありませんが、試す価値はありますね」
「よし。じゃあ、やってみよう」
俺はストレージから木材を取り出した。
まずは、普通に錬金術を使う。
蝉丸が木材に手をかざすと、淡い光が広がった。
木材の表面が整い、ささくれが消える。
「おお……!」
唯衣が目を輝かせた。
「すごい! きれいになった!」
「なるほど。表面を整えるくらいならできるんだな」
俺は加工された木材を手に取った。
手触りが滑らかになっている。
これなら、建材として使いやすくなるだろう。
「もう少し試してみましょう」
蝉丸が別の木材を手に取った。
今度は、長さをそろえるように意識する。
すると、木材の端がきれいに切りそろえられた。
「おお!」
「これは便利だな」
俺は感心した。
手鋸で切るよりも、ずっと早い。
ただし、どんな形にも加工できるわけではないらしい。
複雑な加工には、素材の性質や構造についての知識が必要になるという。
「……待てよ」
俺は、ふと気になったことを口にした。
「これ、収納した状態でも錬金術を使えるのか?」
「……なるほど」
蝉丸が目を見開く。
「確かに、それは試したことがありません」
「もしできたら、かなり便利だぞ」
俺は加工前の木材をストレージへ収納した。
そして、蝉丸に頼む。
「この木材を、収納したまま加工できるか試してみてくれ」
「やってみます」
蝉丸は目を閉じ、意識を集中させた。
しばらくして――。
「……できました」
「え?」
俺は目を見開いた。
「本当に?」
「はい。収納の中にある木材の形を変えられたようです」
「取り出してみよう!」
俺が意識すると、木材が目の前に現れた。
その表面は滑らかで、端もきれいに整えられている。
「…………」
「…………」
「…………」
3人で木材を見つめた。
そして。
「すげえええええ!」
慎之助さんが叫んだ。
「これ、作業場すらいらないんじゃないか!?」
「いや、さすがに全部が不要になるわけじゃないと思いますけど……」
蝉丸は苦笑した。
「ただ、収納内で加工できるなら、材料を運び出す手間を減らせます。建材を収納しておき、必要な形に加工してから取り出すこともできそうです」
「つまり、木材を運ぶ前に加工しておけるわけだ」
「そういうことですね」
これは大きい。
木材を切り出す。
収納する。
収納内で錬金術を使い、表面を整えたり、長さをそろえたりする。
そして、必要なときに取り出す。
これなら、作業効率が大きく上がる。
「蝉丸、すごいじゃないか!」
唯衣が笑顔で言った。
「いえ、私も驚いています。収納の中で錬金術が使えるとは思いませんでした」
「これなら、家造りがかなり楽になるな」
俺は頷いた。
建材を加工するために、いちいち作業場所を用意する必要もなくなるかもしれない。
もちろん、すべての加工ができるとは限らない。
複雑な加工や、素材そのものの性質を大きく変える作業は、まだ試していない。
それでも、今の発見だけで十分な成果だ。
「……やっぱり、スキルって便利だね」
唯衣がしみじみと呟いた。
「まったくだ」
俺も笑った。
便利な能力も、使い方を知らなければ、その真価を発揮できない。
だからこそ、今のうちに調べておく意味がある。
◇ ◇ ◇
昼ごろ。
俺たちは、慎之助さんのスキルを検証することにした。
「さて。慎之助さんのスキルは、危険察知と空気でしたよね」
蝉丸が確認する。
「ああ」
「危険察知は分かりますが……『空気』というのは、どういう意味なんでしょう?」
「俺も分からん」
慎之助さんはあっさり答えた。
「鑑定で名前を見ただけだからな」
「それで今まで放置してたんですか?」
「特に困ってなかったし」
「……そうですか」
蝉丸が微妙な顔をした。
俺は慎之助さんに向き直る。
「じゃあ、まずは危険察知から試してみましょう」
「どうやって?」
「危険なことをすれば分かるんじゃないですか?」
「よし、じゃあ俺が木の上から飛び降りてみよう!」
「駄目です!」
俺と唯衣と蝉丸の声が重なった。
「冗談だよ、冗談」
「冗談でもやめてください」
俺はため息をついた。
スキルを検証するために怪我をしたら本末転倒だ。
そこで、村人に協力してもらい、少し離れた場所から安全に木の枝を落としてもらうことにした。
もちろん、人がいる場所には落とさない。
十分に距離を取ったうえで、俺たちは慎之助さんの様子を観察した。
――パキッ。
枝が折れる音がした瞬間。
「右に避けろ!」
慎之助さんが叫んだ。
俺たちは反射的に横へ移動する。
枝が地面に落ちた。
「…………」
慎之助さんは驚いた顔をしていた。
「今、分かったんですか?」
蝉丸が尋ねる。
「ああ。落ちてくる直前、妙な感じがした」
「危険察知の効果か……」
俺は頷いた。
「どんな危険でも分かるんですか?」
唯衣が尋ねる。
「いや、そこまでは分からないな。今のは、何かが落ちてくるという感覚だった。危険の内容まで、はっきり分かるわけじゃない」
なるほど。
危険が迫ると、直感的に察知できる。
ただし、万能ではない。
危険の種類や程度まで分かるとは限らないようだ。
「これは、冒険者としても役立ちそうですね」
蝉丸が言った。
「戦闘だけじゃなく、罠や事故を避けるのにも使えるかもしれません」
「だろう?」
慎之助さんが得意げに胸を張る。
「俺の勘は当たるんだよ」
「それ、今までは勘だと思ってたんですね……」
俺が言うと、慎之助さんは少し考え込んだ。
「……言われてみれば、昔から危ないことを妙に避けられた気はするな」
「スキルが原因だったのかもしれませんね」
蝉丸が頷いた。
次は、もう1つのスキル。
空気だ。
「……名前だけでは、効果が想像できませんね」
蝉丸が腕を組む。
「空気を読む能力とか?」
唯衣が首を傾げた。
「いや、空気を操る魔法かもしれないぞ」
慎之助さんが言う。
「風魔法の一種とか?」
「それなら『風』と表示されそうですけどね」
蝉丸が冷静に突っ込んだ。
「とにかく、試してみよう」
俺はそう言って、慎之助さんに頼んだ。
「何もせずに、少し離れた場所に立っていてください」
「それだけでいいのか?」
「はい」
慎之助さんが数歩離れる。
俺たちは、彼の様子を観察した。
……特に変化はない。
普通に立っている。
だが、しばらくすると――。
「……あれ?」
唯衣が首を傾げた。
「慎之助さん、どこ?」
「……え?」
俺は振り返った。
慎之助さんは、そこにいる。
すぐ近くだ。
それなのに、なぜか視線が滑る。
目を向けているはずなのに、意識が彼を捉えにくい。
「…………」
俺は目をこすった。
見えている。
確かに、そこにいる。
でも、意識から抜け落ちそうになる。
「……慎之助さん?」
声を掛ける。
「おう」
返事があった。
その瞬間、俺はようやく彼の存在をはっきりと認識できた。
「……何だ、今の?」
思わず呟く。
蝉丸も驚いた顔をしていた。
「今、確かにそこにいたのに……認識しづらくなっていました」
「私も!」
唯衣が何度も頷く。
「見えてるのに、なんか気づきにくいっていうか……」
慎之助さん本人は、きょとんとしている。
「そうなのか?」
「ああ。もう一度やってみてくれ」
慎之助さんが黙って立つ。
すると、また同じ現象が起こった。
視界には入っている。
だが、意識が向かない。
まるで、そこにいるのが当たり前すぎて、気に留める必要がないもののように感じるのだ。
「……もしかして」
俺は、ふと思いついた。
「これが『空気』の効果なのか?」
「空気……」
蝉丸が呟く。
「周囲に溶け込んで、存在を意識されにくくする能力……ということでしょうか」
「なるほどな」
俺は頷いた。
透明になるわけではない。
姿が消えるわけでもない。
ただ、周囲の人間から認識されにくくなる。
いわば、存在感を薄くする能力だ。
「……これ、すごくないか?」
唯衣が小声で言った。
「すごいですね。潜入や偵察には、かなり役立ちそうです」
蝉丸が真剣な顔で頷く。
「敵に気づかれずに近づくこともできるかもしれません。ただし、完全に気配を消せるのか、視線を向けられても気づかれないのかは、まだ分かりません」
「なるほど……」
俺は慎之助さんを見た。
「慎之助さん、これまでにも似たようなことはありましたか?」
「……そういえば」
慎之助さんが顎に手を当てた。
「飲み屋で、店員に気づかれずに注文を待ってたことがあるな」
「それは単に声が小さかったんじゃないですか?」
「いや、ちゃんと手も挙げてたぞ」
「……」
「あと、仕事中に上司が俺の存在を忘れて、先に帰ったこともある」
「それはそれで問題では?」
俺は苦笑した。
本人はただの偶然だと思っていたことが、実はスキルの影響だったのかもしれない。
「なるほど。『空気』というのは、周囲に溶け込んで存在感を薄くする能力だったんですね」
蝉丸がまとめた。
「名前だけでは分からないものですね……」
「本当だな」
俺は頷いた。
スキルの名前が分かっただけでは、能力の全貌までは分からない。
実際に使ってみて、初めて見えてくるものがある。
◇ ◇ ◇
午後。
俺たちは、唯衣のスキルを確認することにした。
「私のスキルは、幸運とテイム、それから身体能力強化だよね」
「ああ」
唯衣は以前から、自分のステータスを確認していた。
ただ、どの程度の効果があるのかまでは、詳しく調べていなかったらしい。
「まずは幸運からだな」
俺が言うと、唯衣は少し考えた。
「幸運って、どうやって調べるの?」
「……難しいな」
幸運というのは、危険察知のように分かりやすい反応があるとは限らない。
運がよかったのか、単なる偶然なのか。
判断が難しい。
「何かを落として、拾う前に見つけられるとか?」
慎之助さんが言った。
「それは運じゃなくて注意力じゃないですか?」
蝉丸が即座に突っ込む。
「じゃあ、サイコロでも振るか?」
「この世界にサイコロがあるかどうかは分かりませんけどね」
「……確かに」
俺たちは顔を見合わせた。
結局、幸運については、すぐに効果を確かめるのは難しいという結論になった。
無理に試そうとして危険なことをする必要もない。
「じゃあ、テイムは?」
唯衣が尋ねた。
「動物や魔物と仲良くなれる能力、かな?」
「その可能性はありますね」
蝉丸が頷く。
「ただ、どこまでの相手に通用するかは分かりません」
今すぐ魔物を探して試すわけにもいかない。
俺たちは、まず村で飼われている動物に対して使えるか、様子を見ることにした。
村人の許可をもらい、鶏や犬に近づいてみる。
唯衣がそっと手を差し出すと、犬は警戒する様子もなく近づいてきた。
「わあ……!」
唯衣の顔が輝く。
「可愛い!」
犬は尻尾を振り、唯衣の手を舐めた。
「……元から人懐っこい犬という可能性もありますね」
蝉丸が冷静に言った。
「うっ……」
「何度か試して、普段と違う反応があるか確認する必要がありそうです」
「そっか……」
唯衣は少し残念そうだったが、すぐに笑顔に戻った。
「でも、可愛いからいいや!」
「検証の目的を忘れてるぞ」
俺は苦笑した。
最後は、唯衣と蝉丸の身体能力強化だ。
これについては、慎之助さんが簡単な測定方法を提案した。
走る距離を決めて、どれくらいの時間で走れるか。
どれくらいの重さを持ち上げられるか。
ただし、無理はしない。
まずは普段の感覚を確認する程度にとどめた。
結果として、2人とも自分の身体が以前より動かしやすくなっていることは自覚していた。
だが、具体的にどれほど強化されているのかは、まだ分からない。
「これは、継続して調べる必要がありそうですね」
蝉丸が言った。
「そうだな。無理せず、少しずつ確認していこう」
俺は頷いた。
◇ ◇ ◇
夕方。
俺たちは、朝に収納した物を取り出すことにした。
「さて。水とパンだな」
俺は、ストレージに入れていた水とパンを取り出した。
水の入った容器。
パン。
どちらも、収納したときと変わらないように見える。
「次は、蝉丸の収納だな」
「はい」
蝉丸も、自分の収納に入れていた水とパンを取り出した。
こちらも、見た目には大きな変化がない。
……いや。
「ちょっと待ってくれ」
俺はパンを手に取った。
俺のストレージに入れていたパンは、朝のままの状態だ。
一方、蝉丸の収納に入れていたパンは、表面が少し乾いている。
「……違いが出たな」
蝉丸が目を見開いた。
「確かに。こちらのパンは、朝より乾燥しています」
「水はどうだ?」
水の容器も確認する。
見た目や量に明らかな違いはない。
だが、パンにははっきりと差が出ていた。
「ということは……」
俺は自分のストレージを意識した。
「俺のストレージは、収納した物の時間が止まっているのかもしれない」
「一方、私の収納では、時間が普通に流れている可能性が高いですね」
蝉丸が頷く。
「ただ、パンだけで完全に証明できたとは言い切れません。もう少し条件を変えて確かめたいところです」
「そうだな」
俺は頷いた。
水やパンだけでなく、切ったばかりの果物などでも試してみれば、もっと確実に分かるだろう。
ただ、少なくとも現時点では、俺のストレージには時間停止に近い性質があると考えてよさそうだ。
「これは大きな違いですね」
蝉丸が言った。
「私の収納は、道具や建材を保管するのに向いています。一方、海斗さんのストレージは食料や薬草など、状態を保ちたい物の保管に向いているのかもしれません」
「使い分けができるわけだ」
「そういうことですね」
俺は笑った。
ストレージと収納。
名前が違うだけかと思っていたが、どうやら特徴にも違いがあるらしい。
もちろん、まだ分からないことは多い。
だが、今日の検証で大きな手掛かりを得られた。
「スキルって、便利だねぇ……」
唯衣がしみじみと呟いた。
「本当だな」
俺も同意する。
ただ便利というだけじゃない。
使い方を工夫すれば、生活そのものを変えられる可能性がある。
だからこそ、今のうちに知っておくべきなのだ。
◇ ◇ ◇
夕食前。
俺たちは、今日の検証結果を整理した。
俺のスキルは、インターネット検索、ストレージ、身体能力強化。
蝉丸は錬金術と収納スキルを持っている。
慎之助さんのスキルは、危険察知と空気。
唯衣は幸運、テイム、身体能力強化。
それぞれの能力には、まだ未知の部分が残っている。
それでも、今日だけで多くのことが分かった。
ストレージと収納は、基本的な使い方こそ似ているが、収納中の物の状態に違いがある可能性が高い。
俺のストレージでは時間が止まっているように見え、蝉丸の収納では時間が流れているらしい。
さらに、蝉丸の錬金術は、収納の中にある木材にも使うことができた。
これは家造りにとって、大きな発見だ。
慎之助さんの危険察知は、迫る危険を直感的に察知する能力。
そして『空気』は、周囲に溶け込んで存在を認識されにくくする能力らしい。
唯衣の幸運とテイムについては、まだ十分な検証ができていない。
身体能力強化についても、具体的な効果を調べる必要がある。
「……よし」
俺は立ち上がった。
「明日からは、家造りを再開しよう」
「やっとですね!」
蝉丸が笑う。
「今日の検証で、かなり効率が上がりそうです」
「ああ。木材は俺のストレージに入れておける。蝉丸は収納内で錬金術を使って加工できる」
「建材を必要な形に整えておけば、現場での作業が減りますね」
「そういうことだ」
俺は頷いた。
それに、慎之助さんの危険察知と空気も、今後の生活で役立つだろう。
唯衣のテイムや幸運については、これから少しずつ確かめていけばいい。
何もかもを一度に理解する必要はない。
できることから試して、使い方を覚えていけばいいのだ。
「……さて」
俺は、村の外れに広がる土地を見渡した。
家はまだない。
風呂もない。
快適なトイレもない。
やることは山積みだ。
でも――。
「明日は、今日の分まで家造りを進めるぞ!」
「おー!」
唯衣が元気よく声を上げる。
「酒の保管場所も頼むぞ!」
「だから、まずは家ですって!」
蝉丸の突っ込みが響く。
俺は笑った。
こうして、俺たちのスキル検証大会は幕を閉じた。
そして、明日からはいよいよ本格的な家造りが始まる。
……ただし。
俺たちがまだ知らないだけで、このスキルには、ほかにも試していない使い方があるのかもしれない。
それを知るのは、もう少し先の話だ。
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