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フェアリースクワッド魔法少女特別遊撃隊 ―オペレーションアンゲリア―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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4/5

恐怖の魔法少女VS疾風のアスリート

 恐怖を教えるだと……?

 俺は、目の前の鼻水少女の声帯自動翻訳シールの故障を疑った。

 他には、ことわざの可能性。日本には、井の中の蛙や犬も歩けば、棒に当たるなどの言葉そのままの意味とは別の意味を込めた伝統的な例えがある。

 豚に真珠とかは、その最たるもので、デブに真珠のネックレスなんて付けても似合わないだろベイビーという意味でデブはいくら金を持ってても、ファッショナブルでもデブはデブというルッキズムに満ちた日本のユーモアが込められている。

 それと同じで恐怖を教えるという彼女のさっきの言葉にも、今夜は月がキレイですねっなどと同じでI LOVE YOUの意味が込められてたのではないか?

 音声自動翻訳シールは、暗に込められた言葉の意味、恥ずかしがり屋の少女の愛の告白のパスワードまでは、解いて正しく伝えられなかったのだろう。

 つまりは、俺はまたまたモテてしまったということか? まったく罪作りな主人公だぜ。

 未成年の少女と一流ゴールドメダリストの禁断の恋愛ドラマが今、開幕したということかっ!!


「Hey、ノーズウォータービューティーウーマン。気持ちは嬉しいが、俺の返事はノーサンキューだ。俺には、ハリウッドに3人、ロシア1人、ペンタゴンに1人、彼女がいるんだ。日本女性は好きだが、週に出せる量は、きちんと管理している。今は、ここから出られないが、未成年と間違いを犯すぐらいなら、左手で十分さ。ここスマホ継るから、FANZAも見れるんだ」


「ちょっと何、言ってるかわからないだす」


 もう恥ずかしがり屋だなぁ、ベイビー。

「仕方ない。お兄さんが想い出作りにキッスをしてあげよう。Huh〜♪」

 俺は、疾風と共に走り出した。唇を突き出しながら、高速で走ったので、自然と口笛が鳴った。

 少女の牛乳臭いやわらかなほっぺへと俺は、一直線に目にも止まらぬ速さで向かっていく。

 しかし、少女は俺の目の前の景色から突然に消失した。


 !!! !!?


 一度止まって、周りをようく見回すと少女は鼻水を垂らしながら、俺の隣にいた。息も切らさず、余裕を持った口調で

「いきなり未成年のほっぺに吸い付ごうとするなんで、とんでもない変態さんだっすね。今すぐ金メダルは、マイケルに返上すべきだっす」

と言った。


 まさか、避けた? バカなっ、俺の風のブーストによる移動は、筋肉を使った移動と違うから、初速からスピードはMAX……目で軌道を捉えることすら、できなかったはずだ!! なのに、何故っ!!?


ズルズルずるぅ〜!!ちーんっ!!


という豪快な音を立て、白い迷彩柄のミニスカドレスから取り出したポケットティッシュで鼻をかむ少女。

 鼻水を含んだティッシュをポッケにお行儀良くしまうと、少女は新しくティッシュを一枚だけ取り出し、

「あだす、あまり頭良くないんで、見ぜて解説しまずねっ」

と言い、取り出したティッシュ一枚を手から離し、ひらひら。それにパンチをくり出し、当てようとするもティッシュはパンチの風圧に押され、ふわりと浮き、ひらりと避ける形で落ちていき、地面に着地した。

「あだすの魔法能力は、重力からの解放。つまり、究極的に重さを無くし、軽くなることだっす」


 つまりは、ティッシュが鼻水少女で風の塊で突っ込んで行った俺がこの場合でのパンチってことか?


 IQの高さから、理解力のハンパないクールガイの俺は、

「そんな理屈どおりにいくかーーっ!!」

と風のブーストをさっきより全開にし、少女に掴みかかった。少女の目の前で鼻をかむという余裕にプライドを傷つけられた気がしたのだ。風を操るという俺の無敵能力をアイデンティティをバカにされ、ナメられた気さえしたのだ。

 しかし、少女は俺が必死になればなる程、俺の纏う風でふわりふわりと浮き上がり、近づくことは出来ても、触れることができない。


「無駄だっす。一流のボクサーのジャブで木からひらりひらりと落ちる葉っぱに触れるこどはできでも、羽毛には触れられもしないだす。それは、葉っぱよりも羽毛の方が重力に支配されていないがら。仮に触れられても、羽毛は一流ボクサーのジャブでダメージを負うこどはないだす」


 少女の言葉どおり、俺の速さは少女の軽さで無効化された。試しにゆっくり近づいて、掴もうとしたが、それでも少女の軽さが上回り、俺の動きに合わせて、ふわりひらりと少女はすり抜けるように避けた。

 俺は、近づこうとするのをやめ、少女から距離を取ると、一番の得意技をぶちかました。空気をも切り裂く真空のかまいたち。その乱れ打ちが少女に連続で浴びせられるように向かっていくが、

 白い迷彩柄のミニスカドレスがふわりひらりぐにゃりと関節捨てたんかっ!! とでも言うような柔軟性のあるアクロバティックな時に映画「マトリックス」のキアヌ・リーブスを思わせる動きで避けていった。いや、それは、動きではない。力が一切、込もっていない。力の放棄。力の消失による自然な流れに身を任せた葉や、それこそ風にそよぐ草そのもの。風に草や葉を飛ばすことはできても、止めたり、そこに留めることはできない。自らが作り出した流れに素直に従うものを捕らえることは、できないのだ。

 こちらの力に従う圧倒的弱者である存在が最も恐怖の対象になり得るとは、こちらの攻撃に身を委ねるからこそ、こちらの攻撃が効かないという反転が起こるとは……!!


「こいつ、無敵かっ!?」


 一度、言ってみたかったんだ、このセリフ。

 でも、冗談抜きで風との相性が悪すぎる。

 ど〜すりゃいいの!!?これっ!!!


「あっ!閃いたっ!!さすが、IQアスリートの俺っ!!」


「何がどうじだんだすか?」

 目の前の白の迷彩柄の少女は、まだ、この圧倒的事実に気づいていないようだ。


「俺の攻撃が効かない原理で、お前も俺に触れられないじゃんっ。だって、風のバリアーを張っている限り、究極的に軽いお前は、その風の流れを突き破って、俺に触れるなんて、できないんだから、お前も俺に攻撃できないじゃんっ!! ハッ! それに気づくなんて、俺って、やっぱ天才っ! 頭脳バトルもイケるくちの主人公だったんだなっ、俺は!! ヒャッハ!」


「あだすが攻撃? んな必要ないっず」


「は? なんでだよ? 強がりはよせよ」


「だって、おいしいとこは、いつもゼンパイが持っていぎまずから」


 白の迷彩柄の少女がそう言うと、俺に四方八方から何かが衝突してきた。


 ぐっ……!!上下左右後ろ前を囲まれたっ!!なんだ!?この圧迫感っ!!


「何も見えんっ!何も見えんぞっ!!いったい、何が俺を攻撃してるんだ!?」


「魔法防壁っず」


 くそっ! そう言えば、魔法少女の使える魔法には、そういうのもあったなぁ!! 確か、通常は、敵の攻撃を防ぐバリケードに使う魔法だったか? 半透明の壁みたいなものだっけ?


「そのサングラス越しだと、まるっきり透明に見えるだろ? 光学詐称の技術が織り込まれているからな」

 俺の後ろから、俺がサングラスを奪った少女の声が近づいてくる。


「お前、もう目が見えるのか!?」


「それだけベラベラ喋ってたら、目が見えなくても、位置ぐらいわかる。私たちは、魔法少女であり、訓練された兵士なんだからな」


「ぐっ……」

なんて、頑丈なんだ魔法防壁。俺の風のバリアーで押し返せない。


「風のバリアーを解け。自分の作った風に圧迫されて、押し潰されるぞ」


「バリアーを解いたら、お前の魔法防壁に押し潰されるだけだろっ。っ!!!」

 俺は、人生で初めて死を間近に感じていた。


 俺は、無敵のはずなのにっ!!ワールドレコードだぞ!!人類の宝であるはずの俺がこんな所でっ!!


「私たちは、そんな残酷な殺しはしないだっす。信じてほしいっず」


「くそっ!!」

 悔しいが、ここは敵に従うしかない。

 俺は、風のバリアーを解き、幾分か息をするのが、楽になった。


「その様子だと、かまいたちで魔法防壁を破ることはできないようだな」

「おぞらく、自分が触れている空気しかあやづれんのでじょう」

「私たちは、魔法防壁であんたを押し潰したりはしないが、このままだと窒息するぞ」


「なら、魔法防壁とやらを解いてくれよ」


「タダでは無理だな」

 背中越しに緑の迷彩柄の魔法少女がにんまりしてるのが、わかる。


「交換条件か? 奥の扉を開ければ、いいんだな?」


「話が早くて、助かる。AIの仲間に開けてもらうつもりだったが、あんたがマジカルウォッチを壊しちまったから、パスコードさえわからない」


「パスコードなんて無い。あの扉を開けるには、俺の生体認証が必要だ。つまり、目的を果たす為には、どのみち、あんたら魔法少女は、俺を殺せない。あとは、チャールズのおっさんの生体認証でも開くが、あのおっさんは、絶対にあんたらでは捕まえられない」


「そうか。じゃあ、今からあんたの言葉を全面的に信用して、魔法防壁を解くが、自由になった途端、またバトルを再開するなんて、面倒くさいことは、やめてくれよ」


「オーケー。スポーツマンシップに則り、負けた俺はあんたらの望むとおりにするよ。元々、アメリカと心中する程の愛国心はない。ここに監禁されてるんだ。できることなら、復讐したいぐらいだよ」


 緑の魔法少女は、すんなりと魔法防壁を解き、俺を自由にした。

 本当なら、俺は魔法少女たちの周りの空気だけを消失させ、窒息死させることもできるが、そんな残酷な殺し方は、俺のリテラシーに反する。何より、チャールズのじーさんに教えてもらった戦い方で勝つのは、癪に触る。

 俺は、THEアメリカなサイズの円形に区切られた扉の前に立ち、生体認証で開けて、魔法少女二人が中に入っていくのを見送った。

 しかし、本当にオールディクショナリーちゃんの言う通りになったな。

 怖いね。予言者ってのは。

 ちなみに、オールディクショナリーちゃん曰く、俺は、この物語には、今後、登場しない。

 主人公のはずなのに。ふっしぎ〜。

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