第95話 鳥魔族編⑪ 憎しみの連鎖
「・・・何、逃そうとしてんだ?
甘いんだよ、お前ら!!」
こ、この声は・・・ザック!?
なんでこんな所に?
( ゜д゜)ハッ!
・・・ひょっとして頑なに殺し合いを拒否し、しかも鳥魔族達を逃がそうとする俺達にキレた!?
けどだからって、戦いに巻き込んでおきながら、用が済んだら殺しに掛かるとか鬼畜すぎるわ!!
「死ねぇーーーーーーーーー!!!!」
剣を構えたまま、猛突進を行うザック。
咄嗟に身構える俺達。
だが。
「あ、あれ?」
ザックは身構える俺達など完全に無視し、そのまま横を通り過ぎる。
?
???
エルム達もザックの意図が読めず、呆然としている。
え、どゆことなの・・・・・・・・・・・・あっ!?
そうだ。
ザックが、ザック達が一番憎んでいるのは、殺したいのは・・・!!
「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!」
ザックの剣が突き刺さり、町中に断末魔が響き渡った!!
・・・鳥魔族のボスである、グリフォンの断末魔が。
グリフォンには初級魔法でさえ、ほとんど効かなかった。
そして並の使い手が普通の剣で攻撃した所で、その攻撃力は初級魔法以下だ。
つまりザックの攻撃なんて、グリフォンに通じるはずが無い・・・通常であれば。
だが今のグリフォンはユラの魔法で大きなダメージを受けている。
生物なんて弱り切ってしまえば、そよ風みたいな攻撃でさえ、耐えられなくなるもの。
だからザックの剣でも、グリフォンを突き刺せたんだ。
「「ボ、ボスぅうううううううう!!!!」」
子分達の叫びなど完全に無視し、無情にも突き刺した剣を引き抜くザック。
「がふっ!?」
グリフォンから大量の血が吹き流れた。
「・・・やった、やったぞ。
俺はついに仲間達の仇を取ったんだ!!
あははははははは、あはははははははははははははは!!!!」
ザックは涙を流しながら、狂ったように笑い続ける・・・。
・・・こ、怖い。
はっきり言って、鳥魔族やグリフォンなんかよりもよっぽど怖い!!
「はは、そうだよなぁ・・・。
俺達はお前らに散々酷い事をしたんだ。
酷い事をした奴らに復讐を目論むなんて当たり前。
・・・俺達だって、そうだったから。」
虚ろな目付きで、自らの行いを懺悔するかのように独り言を呟くグリフォン。
なぜだろう?
自業自得なはずなのに、哀れみすら感じてしまう・・・。
「だがなぁ!!」
「ひっ!?」
今すぐにでも息絶えそうなグリフォンが、凶悪極まりない形相でザックを睨みつける。
今ならザックでもグリフォンに勝てそうだが、魔族の気迫には抗えず、腰を抜かしていた。
瀕死のグリフォンは最後の力を振り絞り・・・。
「「えっ!?」」
そのまま近くにいた子分2人を空高く放り投げた!!
「逃げろーーーーーーーー!!!!
お前達だけでも、逃げるんだぁ!!」
「「ボ、ボスぅうううううううう!!!!」」
「・・・あっ・・・。」
けれどそれで力尽きてしまったのか、前のめりになって倒れるグリフォン。
もう既に瞳から光を失いつつある。
・・・奴の命が尽きるのも時間の問題だろう。
「な・・・何が『逃げろ!!』だぁ!!
クズが良い奴ぶってんじゃねぇ!!!!」
「ぐはっ!?」
しかしその行為がザックをさらに怒らせてしまい、グリフォンは剣でめった刺しにされる。
「そんなに仲間に死なれたくないならなぁ・・・。
始めから恨みを買うような真似、すんじゃねぇ。クソがぁ。
遊び半分で俺達の命を奪っておきながら、ふざけんなぁ!!」
泣き叫びながらも、ザックはグリフォンへの攻撃を止めない。
それどころか・・・。
「ザックの言う通りだ!!」
「・・・お前らのせいで、俺の家族は死んだんだ!!
俺達がお前らに何をしたって言うんだ!?
家族を・・・皆を返せ!!」
「お前ら化物達が僕達の町を襲うから悪いんだ!!
お前達が何もしなければ、誰の血も流れなかった・・・。
全部、全部お前らのせいだーーーー!!!!」
うわっ!?
あいつらは確か、ザックの仲間!!
どこに潜んでいたのか、ザックの仲間達までグリフォンの元へ駆け寄り、剣や槍で突き刺し始める。
もうとっくにグリフォンは息絶えているが、それでも彼らは手に持った武器で攻撃するのを止めようとしない。
・・・あっ、斧で頭蓋骨を砕いている奴まで!!
「あ、あああ・・・。」
「見るな、アカリ!!」
「ムゴい。
・・・けど、でも。
一体何が正しいの?」
怯え切ってしまうアカリ。
そんな彼女に悲惨な光景を見せまいとするエルム。
もう何が正義なのかわからなくなってしまったユラ。
「憎しみから生まれる強さがこれほどのものとは・・・。
・・・だが、俺は。
俺はそんな力なんていらない、欲しくない。」
憎しみ、か。
魔王を憎む俺達の顔も、あいつらと変わらないのかな・・・。
グリフォンへの死体蹴りは未だ止まらない。
が突然、ザックが攻撃を止め、剣を抱えたまま俺達の元へと近づいて来た。
グリフォンの返り血をたっぷりと浴びたザックは、そこいらの山賊なんかよりもはるかに凶悪に見える。
「な、なんだよ。ザック。
こっち来んな!!
もう俺達に用なんかねぇだろ?」
清々しいまでの笑顔なのが逆に悍ましい。
気の強いエルムでさえ、ザックに恐怖し後ずさりする。
ザックの奴。
そのまま剣を振り下ろして、俺達を斬り殺す気か!?
「そう警戒するなよ・・・。
俺はな、お前達に感謝してるんだ。
・・・お前達がいなければ、俺達は町の皆の仇を取れなかった。
お前達のおかげで、あの化物どもを皆殺しにできたんだ!!」
なんだよ、それ・・・。
「なんだよ、それ!?」
なんだよ、それ・・・。
「!??
・・・ライトっつったな。
お前、なんで怒ってんだよ?」
「だって、だって・・・。
俺・・・最初から殺し合いは嫌だって、言っただろうが!!
なのにザック、お前らは俺達を無理やり殺し合いに巻き込んだ。
・・・しかも俺達のせいであいつらは死んだんだ~、なんてっ。」
元々、俺達は逃げ遅れた人達を助けようとしただけだった。
本当ならあの鳥魔族達と殺し合いなんかしなくて済んだんだ。
ザック達が無理やり戦いに巻き込まなければ・・・。
「あっ!?
ザック、たまに私達の前から姿を消してたけど。
もしかして、弱った鳥魔族達にトドメを刺していたから?」
「・・・そう言えば、俺達が大勢の鳥魔族と戦ってた時もいなかった。
あれは逃げたからじゃなくて、逃げる鳥魔族達を殺し回ってたからか!!」
「ユラに確か・・・エルムっつったな。
その通りだ。
どうせお前ら、トドメを刺したがらないから、俺達がトドメを刺したんだ。」
・・・。
「なんで今まで黙っていたの!?。
私達に知られたら、見捨てられると思ったからなの??」
「ああ、そうだ。アカリ。
正直に話せば、お前らの事だ。
『やっぱり殺し合いに巻き込む気だな!?』とか言って、逃げるだろうしな!!」
「つまり俺達はまんまと乗せられたわけだ。
大人の狡猾さは、本当に侮れぬ・・・。」
・・・。
「な~にが大人の狡猾さだ、レイド!!
結局お前ら、たった五人で鳥魔族達を全員、ぶっ倒せただろうが。
その気になれば俺達が手を下さずとも、皆殺しにできた癖に。」
「しかも全員、疲れてはいるが重傷すら負ってないじゃないか。
力を持っている癖に、傷つくのを嫌がって悪を滅ぼそうとしない。
なんて、正義感の無いお子様だ!?
・・・そんな自分達が恥ずかしいと思わないのか?」
・・・はぁ。
「もう良いよ。
エルム、アカリ、ユラ、レイド。
・・・ハル達を回収して、とっととこの町から出ようぜ!!」
なんかもう疲れた。
「お、おい。
ガキども!!」
「鳥魔族達は皆、去った・・・。
もう俺達の出る幕は無い。
さっさと旅に戻ろう。」
「・・・ライト。」
俺は心も体も疲れ切っていたが、それでもハル達が待つ場所へ足を進めた。
ザックがグリフォンを倒せたのはあれです。
例え格闘技の世界チャンピオンだろうが、車に轢かれて死に掛けている所を攻めれば勝てる。
そんな感じの理屈ですw




