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第94話 鳥魔族編⑩ 風の中級魔法

未だ中級魔法を使えず、落ち込んでしまうユラ。

しかしそんな彼女をレイドが励まし、元気付ける。


レイドのおかげで立ち直ったユラから、強い風が吹き荒れているのがわかる。

あっ、この感じ。

まさか!!



「この感じ・・・まさか!!

 ちっ。」



だがグリフォンも嫌な予感がしたのか、焦りながらユラに攻撃を仕掛け始める。

覚醒する前にユラを倒す気か!?


「くたばれっ。

 メガ・バード・カッター!!」


ユラに向かって、巨大なブーメラン状の衝撃波を放つグリフォン。

ところが・・・。


「メガ・サンダー・ロッド!!」


ユラを守るため、魔法で雷の杖を生み出し、強烈な電撃を放出するアカリ。

彼女の活躍により、グリフォンの中級魔法が相殺された。


「クソが。

 邪魔をしやがって!!」


「・・・うっ!?」

 はぁ、はぁ。」


けれどさっきの一撃により、アカリの体力は尽きてしまう・・・。

疲れのあまり膝をつき、苦しそうに息をしていた。


「次こそは!!

 メガ・バード・・・。」


「メガ・ホーリー・・・。」


再度、ユラに攻撃を仕掛けるグリフォンに向かって、俺は中級魔法を・・・


「なっ!?

 ・・・・・・?

 ・・・っておい、撃たないのかよ!!」


・・・中級魔法を撃たなかった。

だってさっきのは、時間稼ぎのフェイントだもの。


ユラ以外、あのグリフォンに真正面から攻撃しても避けられてしまう。

しかし当たってしまえば、グリフォンとて致命傷はまぬがれない。

だから全く警戒しないわけにもいかないはず・・・。


「小賢しい真似を・・・はっ!?

 こんな奴と遊んでいる場合じゃない!!

 早くあのチビガキを・・・。」


「ホーリー・ナイフ。

 ホーリー・ナイフ!!

 ホーリー・ナイフ!!!!」


「あがが!?

 ・・・いてて、この!!

 うっとうしいわ!!!!」


今度は初級魔法を連打し、グリフォンを攻撃する。

有効打にはほど遠いも、意識を散らす程度の効果は発揮した。


「このクソガキがぁ、俺をおちょくりやがって!!

 そんなに死にたいなら、先に殺してやる!!!!

 メガ・バード・・・。」


「メガ・ホーリー・ソード!!」


「バード・・・って、うわぁ!??

 も、もう少しで当たって・・・。

 脅かしやがって、このクソガキがぁ!!」


残念、外れてしまった。

あのグリフォン、本当に手強くてまいってしまう。


「くっ!?

 さすがにもう、体力が限界・・・か。」


俺も中級魔法を二回使ったせいで、体力が無くなってしまった。

・・・もうグリフォンを相手取る事はできない。


「はっ、ようやくお前もへばったようだな。

 ・・・散々俺をコケにしやがって!!

 死ねっ、メガ・・・。」


だが、時間稼ぎは成功したようだ。





「メガ・ウインド・アロー!!」


「なっ!?

 しまった!!!!」





ついにユラが中級魔法を発動させる!!

あれは・・・風の矢を放つ弓?

グリフォンのようなすばしっこい奴を倒すには最適の魔法だろう。


あの魔法ならきっと・・・。

あとは頼んだぞ、ユラ。

・・・そして。


「・・・。」


ユラが弓を構え、グリフォンを真っ直ぐと見据える。


「な、舐めるなよぉ!!

 俺だって、知ってるんだからな。

 覚えたばかりの上位魔法なんぞ、そう何度も使えない事くらい!!」


確かにユラが中級魔法を使える回数はせいぜいが1~2回のはず。

その1~2回をどうにかされてしまえば、俺達はもうグリフォンに敵わない。


「覚悟しやがれっ、このチビガキがぁ!!

 メガ・バード・カッター!!」


グリフォンがユラに向かって再度、巨大なブーメラン状の衝撃波を放つ!!

俺もアカリもエルムも既に体力は尽き、あいつの攻撃に対抗する事はできない。


ところがユラは風の矢を放とうともしない。

・・・何故なら。


「メガ・アイス・ランス!!」


「な、何ぃ!??

 しまった、あいつがまだ・・・。」


まだレイドの力が残っていたからだ。

彼の氷魔法がグリフォンの中級魔法を見事、相殺する!!


「今だ!!

 行け、ユラ!!!!」


「はぁああああああああ!!!!」


魔法を撃ったばかりのグリフォンの隙を突き、ユラが風の矢を撃ち放つ!!

回避率なら最強のグリフォンも、遠距離戦では最強であるユラの魔法を避けられない!!!!





「ぐわぁああああああああああああああああ!!!!!!!!」





そしてユラの風の矢は見事、グリフォンにクリーンヒットした!!

断末魔をあげながら、力なく地上へ落ちゆくグリフォン。


「や、やったぁ・・・。

 勝った!!

 ユラの中級魔法があのグリフォンを打ち倒した!!!!」


「さすがだぜ、ユラ!!」


「ええっ!!

 あのグリフォンを倒せたのは全部、ユラのおかげよ。」


ユラの功績を称える俺、エルム、アカリ。

あと・・・。


「ユラ・・・お前のおかげだ。

 お前の力が俺達の命を守ったのだ!!

 自信を持て、お前は強い・・・。」


「レイド・・・でも、私一人の力で勝ったわけじゃない。

 レイドが、皆が力を貸してくれたから、あいつに勝てた。

 ありがとう、皆!!」


こうして俺達は勝利の喜びを分かち合った。


********


「ライトお兄ちゃん!!

 みんな~。」


おっ、あの声は!!


「ハナ!?

 お前、どうして・・・。」


「・・・ライトお兄ちゃん達がいつまで経っても来ないから、心配で。

 無事で良かった!!」


どうも俺達の事が心配で様子を見に来てくれたらしい。

良い子だなぁ。


「ありがとう、ハナ。

 私達は平気よ。

 ・・・そっちは大丈夫だった?」


「うん!!

 何度かゴブリンやビックボアーなんかがやってきたけど・・・。

 大丈夫、み~んなハナ達でやっつけたから!!」


「お~、そっかそっか!!

 偉いぞ、お前ら。」


エルムに褒められ、嬉しそうにするハナ。

魔族は攻めて来なかったみたいだが、野良魔物の襲撃はあったようだ。

ハナ達を向こうに行かせてて良かった。


「ハナ。私達、まだ鳥魔族達を追い返していない。

 彼らにはこの町から早く出て行ってもらう。

 それまでハナ達は町人達を守っていて。」


「追い返すって・・・。

 お前ら、またそんな温い台詞を!!」


ザックの仲間が不満気に文句を垂れるが、ここはスルーしよう。

口論するのも面倒だもの。


「・・・うん、わかった。

 ユラお姉ちゃん、みんな。

 気を付けてね。」


「ああ、わかった。

 ハナ達も油断だけはするなよ。」


「うん!!」


けどあとは、ボロボロになった魔族達に出て行けと脅す・・・もとい、交渉するだけだからなぁ。

きっともう、危険は無いだろう。


ハナを帰した後、俺達は鳥魔族のボスであるグリフォンを追い返すため、奴が落下した方へと進んだ。

きっとユラの魔法で死なずとも相当のダメージを受けているに違いない。

だからさすがに、交渉すれば素直に逃げてくれると思う。


********


「え~と・・・。

 あのグリフォンが落ちていったのは、と。」


「ひゃっ!??」


「なんだよ、アカリ。

 ・・・って、うわ!?」


アカリやエルムが悲鳴を上げるので振り返ると、鳥魔族が剣や槍に突き刺さったまま放置されているのが見えた。

既に事切れているようだ・・・。


「・・・誰がこんな事をしたのだ?

 俺達ではない。だとすれば一体・・・。」


だって俺達に鳥魔族にトドメを刺す余裕なんて無かったもんな。

そもそもモノホンの剣や槍なんて持っていないし。

魔法で出せるから。


・・・でもじゃあ誰の仕業なんだろう?


「気を付けましょう。

 得体の知れない何かがこの町に潜んでいる。」


お、おう。

俺達は全員、既にかなり体力を消耗しており、初級魔法一回使えるかも怪しい。

危険な連中から襲撃を受けないよう、注意を払わなければ。


そんな事を話しながらも、俺達はユラの中級魔法を受け、満身創痍となっているグリフォンを発見した。

その傍には俺達が倒した鳥魔族が二体、ヘロヘロになりながらも自分達のボスを支えている。


「ぎゃっ!?

 あ、あいつら・・・。」


「ぼ、ボスぅ。

 ・・・お、俺達。」


「・・・・・・。

 けっ、俺達ももうお終いだな。

 さあ、殺せ・・・殺せよ!!」


俺達がトドメを刺しに来たとでも考えたのか、びびったり、殺せと叫び出したりと、せわしない鳥魔族達。

・・・いや、あのなぁ!!


「やだよ!!

 いくら連続殺人鬼でも、人を殺すなんて嫌だってば。」


「れ、連続殺人鬼って・・・。

 人って!!」


連続殺人鬼と言われ、何故か酷く動揺するグリフォン。

だってさぁ。


「何動揺してんだよ。ダイチが言ってたぜ。

 お前ら魔族は全員、元は人間だって。

 人を喜んで殺す人間だから連続殺人鬼・・・何も間違っちゃいねぇだろ?」


エルムの言う通り、魔族は異形の生物ではなく、魔物の姿をしているだけの人間に過ぎない。

最初から妙に人間臭くて殺す気になれなかったが、フラウやハナ達と関わり、余計に殺す気になれずにいる。


何せ俺達は正義の味方なんかじゃない。

だから例え、悪だとしても、連続殺人鬼だとしても・・・。

人を殺したりなんかしたくない。


仮に死ねば良いのに、って思っちゃうような輩だったとしても、さ。

ガチで殺すなんて嫌だ、生理的に受け付けない!!

・・・と、考えるのが普通の人間だもの。



「・・・連続殺人鬼、か。

 俺達は姿形だけじゃない。

 心まで魔族になっていたようだ・・・。」



急に悟り出すグリフォン。

その物言いに内心、俺は戸惑いを感じた。

が。


「俺達はあんたらを殺す気なんてない。

 だがな。もしお前達が仕返しされたとしても、絶対に助けないからな!!

 ・・・いくらなんでも、勝手な理由で他人を苦しめすぎなんだよ。」


「ええ。

 だから死にたくなければ、早くこの町から出てって!!

 報復されても責任は取れないから・・・。」


俺達にとって鳥魔族やグリフォンは、理不尽に暴力を振るう通り魔のようなものだ。

だから当然、襲われたら反撃はするが、誰も仲間を殺されていない以上、命まで奪おうとは思えない。


けどあいつらに居場所や大切な人の命を奪われた連中はたくさんいる。

仮にそいつらが鳥魔族達を殺しに掛かったとしても、手は貸さないが、邪魔する気にもなれない。


「ボ、ボスぅ!!」


「・・・負けた俺達に選択肢など無い。

 命を取られないだけ、儲けものだと思おう。

 さぁ、帰るぞ。お前達。」


・・・よ、良かった。

思ったよりも、物分かりが良いようだ。

このグリフォン。


まっ、これでこの町にも平和が訪れ・・・。





「・・・何、逃そうとしてんだ?

 甘いんだよ、お前ら!!」





こ、この声は・・・ザック!?

なんでこんな所に?


ってか、血走った目で剣を構えられるとめっちゃ怖いんですけど!!

・・・ひょっとして、グリフォン達を逃がそうとした俺達にキレた!?

けどだからって、戦いに巻き込んでおきながら、用が済んだら殺しに掛かるとか酷すぎだろ。


既に疲れ切っている俺達にとっては、腰抜けのザックでさえ、大きな脅威となりうる!!



「死ねぇーーーーーーーーー!!!!」



剣を構えたまま、猛突進を行うザック。

咄嗟に身構える俺達。


そして・・・。





「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!」





ザックの剣が突き刺さり、町中に断末魔が響き渡った!!


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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