第96話 鳥魔族編⑫ 罪の意識
俺達は悪い魔族に襲撃され、苦しめらている町人達を助けた。
・・・全く望まぬ形ではあったが。
もうこの町に用は無い。
ハル達を連れてさっさと旅に戻ろう・・・。
「あっ。ライトお兄ちゃん、みんな!!
無事で良かった・・・あれ?
どうしたの、元気ないよ。」
「・・・ハル。
いやな、ちょっと嫌な事が合ってさ。」
内心、かなり荒れている俺だが、罪も無いハル達に当たるような真似はしたくない。
けどやっぱり笑顔で接する事はできずにいた。
「・・・ライトの事はちょっとの間、そっとしといてやれ。
ハル、ハナ、サクラ。
用は済んだ。早くこの町から出るぞ。」
「「「は~い。」」」
エルムの呼びかけに応じ、ハル達が近寄ってくる。
さてと、早く旅に戻るとするか。
「・・・あの。
私達、これからどうすれば?」
ん。
あの女の子は確か、気まぐれに助けたカップルの片割れ。
「好きにして良いと思うぞ・・・。
もう鳥魔族達はいないんだ。」
「で、でも!!
またあいつらの仲間が襲って来たらと思うと・・・。」
・・・そうだな。
3人ほど逃げ帰って行ったから、この町で何があったかは遠くない内にバレるはず。
となると、報復目的であいつらの仲間がこの町に来る可能性も低くないと思う。
だがだからって、そこまで面倒見る気にはなれない。
だってさ。
「知るかよ。
・・・どうせあんたらもザック達と同じだ。
俺達を殺し合いに巻き込もうとしてるんだろ?
助けて、とか言いながらさ。
旅人なんか犠牲にしてやれ、捨て駒にしてやれって、思ってるんだろ?」
「えっ・・・?
ザックさん、あんた一体何を!!」
「けっ、単なるガキの癇癪だよ。
ちょっと戦わせたくらいで、あんなに怒りやがって。強い癖に!!
・・・結局全員、無事だっただろうが。」
やや気まずげながらも、俺達の事を毒づくザック。
ちょっと戦わせたくらいってなんだよ?
ユラがいなかったら全滅してたかもしれないんだぞ!!
それに・・・・・・いや、もう良い。
「・・・もう襲われないよう、せいぜい気を付けろよ。
じゃあな。」
「「ライトさん!!」」
カップル達の叫びを聞き流しながらも、俺は町を出ようとする。
けど何故かエルム達は町から出ようとしない。
「「・・・。」」
「どうした、皆。
なんで立ち止まってんだよ?」
訊ねてみるも、エルム達はただ無言で俺を見続けているだけ。
な、なんだよ・・・。
戸惑う俺に対し、アカリが寂しそうな表情で語り掛ける。
「ダメよ、ライト。そんな風に言ったら・・・。
彼らはザック達と違う。私達を殺し合いに巻き込んだりしていない。
だから、見捨てたりしないで・・・お願い。」
・・・ア、アカリ。
「うん、ライト。
誰かが酷い事をしたからって、無関係な人まで同じように扱うのはダメ。
・・・世の中、ロクでもない人達ばかりじゃない。」
ユラまで。
・・・。
「そうか、そうだよな。
すまなかった、カップル達。
別にあんたらは俺達を殺し合いに巻き込もうとなんて、しなかったからな。」
俺は不貞腐れるあまり、罪も無い奴らまで悪者にしかける所だった。
嫌な奴と出身地が同じってだけで、無暗に敵視するのは間違っている。
「ちょ、ちょっと待てよ!!
それじゃまるで、俺達の事は見捨てようが構わな・・・。」
「・・・やめろ!!
今、ここで反論したら、ライト達は俺達と一緒にあいつらまで見捨ててしまう。
俺達のしでかした事で、他の奴らにまで迷惑は掛けられない・・・。」
・・・ん。
ザックとその仲間達、何をこそこそ話してるんだ?
よく聞こえなかったが。
まっ、あいつらの事はもうどうでも良いか。
「ライトさん・・・。」
「俺達だって、旅の目的がある。
だからいつまでもあんたらを守ってやる余裕は無い。
・・・けど、鳥魔族の仲間から隠れられそうな場所には連れてってやるよ。」
********
「おお、皆様。よくぞこの村へ・・・はて?
そちらの方々は一体。」
俺は町人達をとある村まで連れて行った。
この村はかつて、頂上国の残党に支配されており、かなり荒んでいた。
ハル達も奴らの奴隷として扱われ、辛い思いをさせられている。
が、今はそれなりに平和を取り戻しつつあった。
「え~と・・・こいつらの町、酷い王様の仲間にボロボロにされてな。
ロクに住める状態じゃないし、また襲われる可能性もある。
だからほとぼりが冷めるまで、あの大きな建物に住まわせてやって欲しいんだ。」
「おお、そうだったのですか。
・・・お互い、災難ですな・・・。」
「お願いします。
どうか我らをあなた達の村に住まわせてもらえないでしょうか?」
カップル達の町長らしき人物も、この村に住まわせてもらうよう、許しを請う。
ベクトルは違えど、悪者に苦しめられた者同士、村長は町人達に同情的な態度だ。
この様子ならおそらく、受け入れてもらえるだろう。
ちなみにザック達はここには来ていない。
なんか正義のために戦うんだとか言って、町人達に同行しなかった。
別に知ったこっちゃないが。
「ライトさん。皆様。
何から何まで本当にありがとうございました。
おかげで俺達、なんとかこの村で暮らしていけそうです。」
「そう・・・良かった。」
ユラが淡々としつつも、どこかほっとした様子で返事をする。
この町には一度、あのヤバい王達がやって来ているが、何故か村人達は見逃されている。
理由は不明だが、奴隷にされていた村人達に思うところがあったらしい。
それに幸い、ザック達以外の町人達は個々で見れば、鳥魔族からの印象は薄いはず。
絶対安全とまでは言い切れないが、ここにいればまた襲われる可能性はかなり低いだろう。
「じゃっ、これで本当にお別れだな。
生活に余裕ができてからで良いから、ちゃんと依頼料、払えよな?」
「はいっ、エルムさん。
いつか必ず・・・。」
これで町人達を助けるって依頼は達成したかな?
今度こそ用が済んだし、旅を続けようか。
「あ、あの・・・。
ライトさん。」
村から出ようとした俺に、カップルの女の子の方が話しかけてくる。
「ん?
どうしたんだ??」
「・・・勝手な話かもしれませんが、どうかザックさん達のこと。
許してもらえないでしょうか?」
!!!!
・・・。
「俺達はザック達に酷い目に合わされた。
でもだからって、仕返しや復讐なんかする気はないぞ?
ただこの先、何があってもあいつらの事は二度と助けない・・・それだけだ。」
「・・・それは仕方あるまい。
望まぬ殺し合いに巻き込むような奴らなど、ほとんど敵に近い。
敵の言いなりになどなっても、破滅するだけだからな。」
レイドは力比べは好きでも殺し合いは嫌う。
だからあいつもザック達に思うところがあるようだな。
・・・ザック達が口先だけの根性無しだから気に入らないだけ、かもしれんが。
「ですよね。そうですよね・・・。
ごめんなさい、変な事を言って。」
・・・。
「け、けど、これだけは言わせて下さい。
ザックさん達は嫌がるあなた達を無理やり殺し合いに巻き込みました。
自分勝手な理由でライトさん達を危険な目に合わせました!!
・・・だけど決して、あなた達に悪意を抱いていたわけではありません。
町のために犠牲にしようだとか、捨て駒として扱おうだとか、そんな風に考えていたわけではないのです。
ただ、ただ・・・。」
・・・。
なんでカップル達、そうまでザックを庇おうとすんだよ?
あいつ、あれでそんなに人望あるのか??
意味わからん。
「何もあんたらがそんなにムキにならなくっても、良いじゃないか?
どうせもうザックと関わる気はないんだ。
そんなに叫ばないでくれ・・・じゃあな。」
これ以上ザック達の話をすると、また心がかき乱されそうだったので、今度こそ村を後にした。
「・・・身を犠牲にしてでも頼みを聞け、なんて言えない。
でも、気持ちだけは理解して欲しいの。
弱き人達の願いを、どうしようもない悪意に苦しむ人々の想いを!!
あなたは本当は優しい少年なんだから・・・ライト。」
********
・・・はぁ。
なんとかトラブルが片付いたのは良いけど、まだ気分が優れないなぁ。
あのカップル達が変にザックの肩を持つからだ!!
「ライト。
まだ、怒ってるの?」
「ユラ・・・。
そりゃ怒りもするさ!!
あいつらのせいで俺達、全滅するかもしれなかったんだぞ!?」
ザック達のせいで俺達は鳥魔族達に殺され掛かったんだ。
怒りもするわ!!
「・・・いや、ライト。違うだろう。
お前は殺されそうになったから、本気で怒っているのではない。
俺達のおかげで魔族・・・いや、人を殺せたのだと。
そうザックに言われたから、腹を立てている。
そうなんだろう?」
!!!!
・・・レイドの奴。
普段はアホ丸出しの癖にこういう時だけ鋭いんだから。
「ああ、そうだよ・・・。
何か文句あるか!?」
「・・・。」
「・・・私もライトと同じ気持ちよ。
あの魔族達はどうしようもない連中だった。
でもだからって、私達のおかげで殺せただなんて。
そんな風に言われると辛いわ・・・。」
本当はわかっている。
あの鳥魔族達は始末に負えない悪党だ。
奴らに襲われたザック達は純粋な被害者だ。
だからザック達があの鳥魔族達を殺した事を否定する気は無い。
殺されても仕方の無いような事を、鳥魔族達はやらかしたのだから。
けどザック達にとってはクズ同然の化物だったとしても、だ。
俺達にとってあの鳥魔族は、例え悪党だったとしても人間なんだ。
だから俺達が手を貸したから殺せた・・・なんて言われたら、さ。
俺達が人殺しに加担したみたいじゃないか!!!!
「ライト、アカリ。お前らって妙な所で考え込むよなぁ。
別に気にしなくていーじゃん。言ってただろ、故郷の先輩も。
んな事で人を殺しただなんて、思わなくていーって!!」
・・・?
あっ!!
~~~~~~~~
「なあ、エリトさん。
この山賊を捕まえるお仕事だけどさぁ。
もし、捕まえた山賊が死刑になったらさ。
俺達も人殺しに協力した事になるの?」
「んーーー・・・。
ならないぞ。」
「えっ、そうなの?」
「あのな。そんな理屈がまかり通ったら、脱走した死刑囚を通報した奴だって人殺しだろ?
仮に捕まえた山賊が死刑になったとしても、山賊を殺したのは国や世界の意志であって、俺達じゃない。
・・・お前らが罪の意識を感じる必要なんて無いからな。」
~~~~~~~~
ってな事を話してたなぁ。
故郷の先輩。
かなり強引な理屈だし、正論大好きな人間が聞いたら、絶対に反発するだろうけど。
けどなんか妙にほっとしたのを覚えている。
「ライト、アカリ。
割り切るのも強さの一つだぞ!!
あの鳥魔族らはザック達が手を下さなければ、誰一人として死ななかった。
・・・だから、鳥魔族達を殺したのはザック達であって俺達ではない。
罪の意識なんて背負う必要はないのだ・・・。」
「レイド。
そうよね、そうだよね・・・。」
レイド、お前も変な所で小ずるい奴だよなぁ。
でもその小ずるさになぜか安心する。
レイドの言葉を聞き、ユラもほっとした表情を浮かべた。
「お話難しくて、よくわかんないけど。
ライトお兄ちゃん達、鳥人間さん追っ払っただけでしょ?」
「トドメを刺したのはあの怖い顔のおじさん達でしょ?」
「だったら、ライトお兄ちゃん達は誰も殺してないよ。
人殺しなんかじゃないよ!!」
かなりシンプルな解釈で俺達を擁護するハル達。
けどそれくらい単純に考えた方が良いのかもしれない。
「・・・皆、ありがとな。
俺、ちょっとザックに言われた事、気にしすぎたみたいだ。
だからもう自分が人殺しに加担したなんて、思わない事にするよ。」
正しい結論では無いのかもしれないが、エルム達と話をして少しすっきりした。
何から何まで自分のせいで・・・なんて、思わなくて良いよな。
ちょっぴり救われた俺は気持ちを切り替え、旅を続けるのであった。




